自殺対策や孤独・孤立対策を行う団体が、孤独に苦しむ人に美術館やヨガなどの電子チケットを提供する「いばしょチケット」の実証実験を開始。孤独・孤立問題が新型コロナ禍で深刻化する中で、地域社会との結びつきを通じた取り組みが注目を集めている。

「いばしょチケット」の配布開始

自殺対策や孤独・孤立対策を行う団体が、孤独に悩む人に美術館などの電子チケットを配布する「いばしょチケット」という取り組みの実証実験を始めた。

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匿名でチャット相談窓口を提供する団体が新たに始めたのは、「いばしょチケット」という取り組みだ。

孤独や孤立に悩む人たちに、薬ではなく地域とのつながりや自然や芸術などに触れて孤独感を軽減する取り組みとして、美術館やプラネタリウム、ヨガなどを無料で体験できる電子チケットを配布する実証実験を始めた。

この団体がチャット相談窓口を始めた2020年からの相談件数は約85万件に上り、うち7割が29歳以下だという。

孤独対策として、「いばしょチケット」の配布が開始された。美術館や博物館の電子チケットを配布して、つながりの回復や孤独感の軽減を行う事業だ。

気になるチケット内容だが、対象の施設として銭湯や博物館・美術館であったり、ヨガをはじめとした体験を伴うものになっている。

配布方法は、チャットで相談した中でNPO側が必要と思った人に配布する形となる。チケットの配布は、12月からすでに開始していて、毎月、各施設7~25枚配布するという。

イギリスなどでは、すでに公的な医療・福祉の枠組みにて運用されている。

立石修・フジテレビ取材センター室長:
イギリスでは孤独対策が非常に進んでいる。2017年、世界で初めて孤独担当大臣というポストを新設した。孤独という問題が、心の病やアルコール依存症を引き起こすことで、医療費圧迫したり経済的損失を生み出した。そういう問題を解消しなければならないという観点から新設した。特に定年退職後の男性が深刻で、"男たちの小屋”という施設を作り、日曜大工をしたりスポーツをしたりして交流を広める、といったような政策が広がりをみせている。

コロナ禍で自殺者数が再び上昇傾向に

そもそも、孤独・孤立の問題は新型コロナウイルス禍で深刻になったとの見方がある。

厚生労働省によると、自殺者数は最も多かった2003年の3万4427人から、減少傾向にあったのだが、コロナ禍になって以降、再び上昇傾向になってしまった。

その中で、今回の「いばしょチケット」は地域社会とのつながりを持つことで、自発的な心の回復を高めるアプローチとなり、自殺防止への抜本的な対策の一つとして注目されている。
(「イット!」 12月18日放送より)

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