5年ぶりに墓参りに訪れた男性に、まさかの出来事が。45年前に亡くなった母のお墓がないという。事務所や霊園に問い合わせても不明。消えた墓は盗まれたのか、間違えて撤去されたのか…。男性は「せめて母の遺骨だけでも戻ってきてほしい」と話す。

墓がない…撤去作業の記録もなし

福岡市内に住む緒方秀文さんは、この数カ月、45年前に亡くなった母・治子さんが眠る「お墓」を巡って、心休まらない日が続いている。

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緒方秀文さん:
我が家のお墓がそこにない、母の遺骨もないというのを目の当たりにしたその瞬間は、まさに青天のへきれきというか信じられない。ぼう然とした気持ちになりましたね

「墓がない」とは一体どういうことなのか…。緒方さんが福岡市近郊にある霊園の1区画を案内してくれた。

「ここですね」と緒方さんの目線の先にある小さな更地には本来、家の名前が彫られた墓石が立っているはずだった。しかし、コロナ禍が落ち着いた2023年8月、緒方さんが5年ぶりに墓参りに訪れたところ、30年ほど前に建てた墓がこの場所からなくなっていたという。

緒方秀文さん:
はじめは「(場所を)間違えたかな」と思いましたが、どう見てもここに間違いないと分かった時に、本当に妻と2人で驚きました

現地の事務所に問い合わせたが、帳簿などを調べた職員によると何も分からないということだった。数日後、霊園を管理する法人本部からは「撤去作業をした記録は帳簿上ない」などと回答されたという。

お墓の盗難は考えにくい

墓が盗まれたという可能性はあるのか。これまで数多くの墓の建立や墓じまいを手がけてきた、福岡市内にある老舗の石材店に聞いてみると「盗難は考えにくい」と話す。

「山野石材」営業 広報・中野誉久課長:
私が知り得る限り、「いつの間にかお墓がなくなっている」っていうことは、まずありえない

緒方さんの墓と同様の型で、墓石全体の重さは約1.5トン。運ぶにはクレーンなどの重機が必要不可欠だ。また墓石の特性上、売値がつくものではないという。

「山野石材」営業 広報・中野誉久課長:
(使用している)石はすごく高級なんですけど、「何々家」とかお名前が彫ってあったりするので、それを削り直して新しくするというのもまずできないと考えていい。書類の手続きですとか、その利用者への連絡というのは必ずありますので、考えられるとすれば他の区画と間違えて撤去してしまったという可能性はありますね

緒方秀文さん:
悲しいですね…。ここにあった母の遺骨がどこにあるか…。私や妻、姉もここに入ることはできない

骨つぼも行方不明 深まる謎

失われた墓に眠っていたのは、45年前に亡くなった緒方さんの母親・治子さんだ。緒方さんは、女手ひとつで育ててくれた治子さんのために65万円ほどかけて墓を建てたという。

緒方秀文さん:
(母が亡くなった)当時、私は若く、収入も低かったので、結果としては墓を建てるまでにずいぶん時間が、十数年時間を要したのですが、やっとそこにたどり着いた

しかし、いま手元に残っているのは、墓地の区画が記された永代使用の許可書だけだ。警察に被害届を提出したが、現状では墓に入っていた骨つぼの行方も分かっておらず、緒方さんは「せめて母の遺骨だけでも戻ってきてほしい」と話す。

緒方秀文さん:
永代使用権、そしてきちんと払っている使用料、この状況でそういう目に合うというのは、到底納得できるものではない。母の遺骨がどこにあるのか。そればかりですね、思うことは

墓や遺骨の取り扱いは法律で細かく決められているため、石材店は「墓がない」だけでなく「遺骨もない」という状況は聞いたことがないと首をかしげる。

「山野石材」営業 広報・中野誉久課長:
例えば(撤去した墓が)無縁墓の場合だったとしても、張り紙をしたり官報に乗せたり、そういうことをしないといけませんので、一定期間はその骨つぼを預かっているケースがほとんどです。間違えたとしても、骨つぼは残っているはずですけどね

緒方さんは、1日も早く母が戻る日を願っている。

(テレビ西日本)

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