ロサンゼルス・ドジャースで世界一を目指す大谷翔平選手。知られざる入団の舞台裏を取材すると、お蔵入りになっていた、今は亡きレジェンドからのビデオメッセージがあったことがわかった。

レジェンドからの「力強くて心を揺さぶられるメッセージ」

16日(日本時間17日)、またも大谷翔平選手が歴史を作った。

リーグで最も優れた打者に贈られる「ハンク・アーロン賞」を日本人として初めて受賞した。さらに、今シーズン活躍した選手が選ばれる「オールMLBチーム」に先発投手と指名打者の二刀流で選出された。複数のポジションでファーストチームに入るのは、史上初の快挙だ。

「ハンク・アーロン賞」日本人初受賞の快挙
「ハンク・アーロン賞」日本人初受賞の快挙
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野球専門メディア「フルカウント」MLB担当 小谷真弥記者:
もう本当に大谷選手以外、今後も出てこないと思うので。本当にとんでもない賞というか。ちょっと信じられない。本当に当たり前のことだと思っちゃいけないなと。

歴史を塗り替え続ける大谷選手。プロスポーツ史上最高額での契約となったドジャースへの移籍では、その舞台裏をめぐり新たな情報を入手した。

メジャーリーグを40年以上取材するスクープ記者、ボブ・ナイチンゲール氏はこう話す。

米「USAトゥデー」紙 ボブ・ナイチンゲール記者:
ドジャースがショウヘイと交渉した時に、NBAのコービー・ブライアントからのビデオメッセージを見せたんだよ。

米・バスケット界のレジェンド、コービー・ブライアントさんは、ドジャースと同じロサンゼルスが本拠地の強豪「レイカーズ」一筋で、ドジャースのファンだったという。

そんなロサンゼルスの英雄にドジャースが依頼し、映像を撮影したのは2017年。メジャー移籍を目指していた大谷選手との交渉の席で見せようとしていたものだった。しかし、エンゼルスへの入団が決まり、映像はお蔵入りになってしまった。さらに2020年、ブライアントさんは、ヘリの墜落事故で帰らぬ人となってしまった。

今回、6年の時を経て大谷選手が目にしたのは、今は亡き英雄から送られた秘蔵映像だった。

「ショウヘイ、ロサンゼルスほど勝利を味わうのに最高の街は世界のどこにもない。ドジャースほど勝利を味わうのに最高のチームは他にない」

ブライアントさんからの熱烈なメッセージを受け取った大谷選手は、現地メディアに対しこう話している。

「面談の中で最高の瞬間の1つでした。見た時は本当に驚きました。力強くて心を揺さぶられるメッセージでした」(米・スポーツ専門チャンネル「ESPN」)

「勝利」と「世界一」への強い思い

秘蔵映像を用意する本気度で、大谷選手の心を動かしたドジャース。

「勝つことっていうのが僕にとって今一番大事なことかなと思います」
「まず優勝することを目指しながら……」
一方の大谷選手が入団会見で何より本気度を示したのは「勝つこと」だった。

入団会見で「勝つことが今一番大事」だと語った大谷選手
入団会見で「勝つことが今一番大事」だと語った大谷選手

かねてより口にしてきた「勝利」と「世界一」へのこだわり。その本気度は、大谷選手の水面下での動きにも現れていた。

米「USAトゥデー」紙 ボブ・ナイチンゲール記者:
ショウヘイは契約金1015億円のうち約97%を後払いにしています。50%以上を後払いにする選手なんて聞いたことがなく、前例のない契約です。

今ある球団の資金を補強に使えるよう大谷選手が後払いを提案した、というのはすでに報じられているが、大谷選手の代理人、ネズ・バレロ氏から直接話を聞いたというナイチンゲール記者によると、そもそも大谷は「全額を後払いにするのはどうだろう」と提案したという。

たとえ全額を後払いにしても、今のチームを強くしたいという姿勢を見せたという大谷選手。結果、97%の後払いでまとまり、資金が手元に残ったドジャースは、今シーズン「レイズ」で10勝を挙げたタイラー・グラスノー投手を獲得した。

しかも、その交渉の際には…

米「USAトゥデー」紙 ボブ・ナイチンゲール記者:
ショウヘイがテレビ電話で「グラスノー投手が投げる時には僕がホームランを打つよ」と呼びかけたんです。

今シーズン、グラスノー投手との対戦ではノーヒットに抑えられた大谷選手。そのライバルに対し、大谷選手自身が異例のメッセージを贈ったという。

さらに、現在争奪戦となっている日本の若きエース・山本由伸投手とドジャースとの交渉では、面談の場に大谷選手も同席。投手陣補強のため、自ら説得したとみられている。

本気で世界一を狙うツートップの意思に共鳴

さらに、ナイチンゲール記者は、今回の契約の中にも、世界一への本気度がうかがえる“異例の条件”があると語る。

米「USAトゥデー」紙 ボブ・ナイチンゲール記者:
突然、状況が変わって新しいボスが気に入らなかったら大金を受け取った上で、契約を破棄できるんです。そんな条件を入れた選手は初めてでしょう。

左:マーク・ウォルター筆頭オーナー 右:アンドリュー・フリードマン編成本部長
左:マーク・ウォルター筆頭オーナー 右:アンドリュー・フリードマン編成本部長

現在チーム作りを担っているのが、マーク・ウォルター筆頭オーナーと、アンドリュー・フリードマン編成本部長。2人について大谷選手は、入団会見でこう語っている。

「オーナーのマーク・ウォルターさんも含めて、この10年間、彼らは全く成功だとは思っていないということはおっしゃっていたので、それだけ勝ちたいという意思がみんな強いんだなというのが心に残ったかなと思います」

過去11年で10度も地区優勝をしている強豪ドジャース。だがその間、ワールドシリーズで優勝したのは1度だけだ。大谷選手は、現状に満足せず、本気で世界一を狙うツートップの意思に共鳴したという。

実は入団会見後、大谷選手のSNSのアイコンがウォルター筆頭オーナーと、フリードマン編成本部長との写真になっていた。これも決意の表れなのか。

野球専門メディア「フルカウント」MLB担当 小谷真弥記者:
チームとしての考え方っていうのはすごく大事だと思うので、フロントの方もチームとして、一緒に戦っていくことの意思表明だったと。

来季は“守備”の可能性も?

世界一へのチーム作りの一方、大谷選手自身は来季、どんなプレーを見せてくれるのか。実は今、新たな可能性が浮上している。

大谷選手は2023年9月に肘を手術。来シーズンを見据え、今検討されているというプレースタイルが…

野球専門メディア「フルカウント」MLB担当 小谷真弥記者:
当然、肘のリハビリっていうのが第一だと思うんですけど、もしそこで回復して外野を守れるのであれば守ると。そしたら、チームとしても幅が広がると思いますし、他の選手も休めることができると思うので。

「まず優勝することを目指しながら、そのところで欠かせなかったと言われる存在にまずはやっぱりなりたいですし、そういう期待を込めた契約だと思うので、全力で頑張っていきたいなと思います」

入団会見でこう話していた大谷選手。「世界一」のために、2024年は野手として守備につく姿も見ることができるのだろうか。
(「Mr.サンデー」12月17日放送より)

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