イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスせん滅まで攻撃を続行することを強調した。
ガザ地区の一番南、多数の難民キャンプもあるラファでの攻撃を激化させている。
また、10月から4月までは雨期に入るため、多くの難民キャンプが冠水し、衛生状態は急速に悪化している。
避難先ラファで容赦ない攻撃
イスラエルのネタニヤフ首相は、国際的な圧力があっても、イスラム組織ハマスをせん滅するまで攻撃を続ける意向を強調した。

ネタニヤフ首相は13日、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦について、「国際的な圧力を前にしても、われわれを止めるものはない」と述べ、ハマスせん滅の方針をあらためて強調した。
ガザへの攻撃をめぐっては、多くの市民が犠牲となっていて、国際社会からの批判が強まっている。

イスラエルの後ろ盾となっているアメリカのバイデン大統領が12日、「国際社会の支持を失い始めている」と苦言を呈したほか、国連総会も「人道目的の即時停戦」を求める決議を採択していた。
一方、ハマスの最高指導者ハニヤ氏は、国連総会の決議を歓迎し、「侵略を止めることにつながるアイデアについて、議論することに前向きである」と述べ、イスラエルをけん制している。

ここからは、フジレテレビ取材センター室長・立石修がお伝えする。
ネタニヤフ首相は、ハマス壊滅まで攻撃を続ける意向を強調した。
イスラエル軍は戦闘再開以降、南部の主要都市ハンユニスで攻撃を行っており、市民にはさらに南に避難するよう指示を出していた。
しかし、一番南で多数の難民キャンプもあるラファでの攻撃を激化させている。

その攻撃直後の様子を撮影した、衝撃的な映像が入ってきた。そこには多くの女性や子どもが逃げ惑う様子が映し出されていた。
空爆直後のラファ市内の様子を撮影した映像では、攻撃は一般市民が住む狭い住宅密集地で行われたようで、大勢の市民が細い路地を逃げ惑っている様子が映っていた。
女性たちは、子どもを抱き抱えて、取り乱しながら噴煙が舞う中を逃げていく。
人が行き交う路地では、はぐれていた子どもを見つけた男性が子どもを抱きしめ、安心したのか、その場に座り込んでしまっていた。
別の映像では、泣いている女の子を気遣い、横にいる子が撮影しないように求めている様子が映っている。赤い服を着た小さな女の子は、激しく泣き出し、カメラに何かを訴えかけている。
そして、母と息子だろうか、2人が抱き合っているが、母親とみられる女性は何かを訴えている。「ニカブ」と呼ばれる布で顔を覆っているため、全体の表情は見えないが、泣いているのがわかる。

イスラエルは、市街地にもハマスがいるとして攻撃を続けているが、戦闘員とみられるような武器を持った人間は少なくともこの映像には映されておらず、子どもや女性がイスラエルによる攻撃に大勢巻き込まれている様子がわかる。
このラファは、人道支援物資が運び込まれる拠点。ここでも容赦ない攻撃が行われている。また、ガザ地区の避難者が恐れているのはイスラエルによる攻撃だけではなかった。
難民キャンプが冠水
東地中海に面するガザ地区は、5月から9月は温暖で乾燥した天気だが、10月から4月までは雨期に入る。そのため、家を追われた避難者たちに容赦ない雨が降り注いでいる。

ガザ地区北部にあるジャバリヤ難民キャンプ周辺の映像では、大雨で道路に水があふれ、救急車が立ち往生した様子が映され、中に閉じ込められ負傷した女性を救急隊員が救出している。
下水や排水は攻撃により機能していないとみられ、街が汚水で水浸しになっている。

さらに、同じ難民キャンプで市民が13日撮影したものでは、ひざまで水につかった男性が子どもの遺体を抱えて歩いている。
映像には、この男性の声か撮影者の声かわからないが、「アラー、おお神よ」という音声も聞こえる。
市民の証言だと、13日の大雨と強風でジャバリヤ難民キャンプは完全に水没したという。

ほかの難民キャンプでも、大雨でテントの中が水浸しになっていて、衛生状態が急速に悪化している。WHO(世界保健機関)は、難民キャンプで感染症に加えて、下痢、シラミのほか、ダニによる疥癬(かいせん)などの皮膚病が急速に広まっているとしている。
こうした状況を受け、アメリカ国内でも変化が起きている。アメリカの政界では、イスラエルの利益を重視するユダヤ系団体の声が強いこともあり、イスラエルを支持している。
しかし、ガザで多くの犠牲者が出る中、アメリカ市民からの批判の声はさらに高まりつつある。

13日、ロサンゼルスで行われたイスラエルへの抗議デモでは、高速道路でデモ参加者が道路封鎖を行い渋滞が起きていた。警察は、抗議活動参加者75人の身柄を拘束した。
ほかにも、ワシントンDCのホワイトハウス前でも抗議活動が行われている。
CNNは、アメリカの情報機関筋の話として、イスラエルが空爆の際に、市民の犠牲を減らすことのできる精密誘導兵器でなく、無差別爆撃につながりかねない無誘導の爆弾が40%〜45%近く使われていたと報じている。
そして、こういったイスラエルの攻撃のあり方をめぐって、「アメリカとイスラエルの間に亀裂が深まりつつある」と報じている。
(「イット!」 12月14日放送より)