大企業・製造業の景気判断の指数が3期連続で改善した。また、大企業・非製造業の指数も約32年ぶりの高水準となってる。

大企業だけでなく、中小企業もプラスになっていることも大きいが、賃上げには生産性向上と価格戦略の見直しが必要と指摘されている。

大企業・製造業でプラス12ポイント

日銀が発表した12月の短観では、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数は、大企業・製造業でプラス12となり、前回調査を3ポイント上回った。

前回調査を3ポイント上回った
前回調査を3ポイント上回った
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自動車の生産回復などが要因で、3期連続での改善となる。

また、大企業・非製造業の指数は、インバウンドで客足が戻ってきた宿泊や飲食サービス業が回復し、プラス30と約32年ぶりの高水準となった。

「Live News α」では、Alternative Work Lab 所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

賃上げ実現には“生産性の向上”を

堤礼実キャスター:
今回の日銀短観、どうご覧になりましたか。

Alternative Work Lab 所長 石倉秀明さん:
大企業だけではなく、中小企業もプラスになっているというのは大きい。日本企業の99.8%は中小企業ですし、働く人の約70%も中小企業で働いている。中小企業がしっかり利益を出したり、好景気を感じられるかというのは重要。

堤礼実キャスター:
となると、賃上げも期待したいところですよね。

Alternative Work Lab 所長 石倉秀明さん:
企業は好景気を感じている。ただ、企業にお金が落ちているが、その会社で働く個人にまでお金が落ちていかない。本来、経済学の理論で言えば、今の人手が足らない売り手市場では賃金が上がるはずだが、そうなっていない。とすると、企業の売上とは別に賃金が上がらない原因が構造的にあって、それを取り除かないといけないということ。今は「構造的低賃金」という状態にある。

堤礼実キャスター:
その「構造的低賃金」を打ち破って、賃上げを進めるにはどうしたらいいのでしょうか。

Alternative Work Lab 所長 石倉秀明さん:
賃上げを進めるには、2つのことが必要。1つは生産性を上げること。実は製造業は、ここ20~30年間で従事する人の数は3分の2くらいに減っているが、GDPに占める売り上げ比率などは下がっていない。つまり1.5倍ほど生産性が上がっている。
この理由で大きいのは「機械化、自動化」が進んでいること。この製造業でできたことを他の業種、特に人手が足らない、そして生産性が上がりにくいサービス業、飲食、宿泊業などでどれだけ進められるか。ここで安易にまた人を増やすことだけを考えて、一時しのぎをしないことが必要。

ターゲット絞った戦略が必須

堤礼実キャスター:
もう1つについては、いかがですか。

Alternative Work Lab 所長 石倉秀明さん:
価格を含めた経営戦略の見直しが必要。特にインバウンドが好調だった場合、日本人向けにサービス提供するか、海外からの観光客向けにサービス提供するかで、価格などは全然違うはず。どっちも取ろうとした結果、中途半端になり、日本人からしたら高い、観光客からしたら安すぎる状態にしないこと。
円安かつ、世界の中で相対的に日本のサービスの価格が安くなってきているからこそ、「いいものを安く」ではなく、いいものを高く、品質に見合った価値で提供する方向に産業全体として戦略転向できるかが重要。

堤礼実キャスター:
今回の短観の結果を受けて、良い面とそうでない面、その両方をしっかりと受け止めたうえで、世の中に良い循環をもたらすための、企業と賃金の在り方を考えていく必要がありそうです。
(「Live News α」12月13日放送分より)

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