金属労協は2024年の春闘で、製造業の組合が要求する基本給の引き上げを1万円以上とするなどの基本方針を決定した。実質賃金が18カ月連続でマイナスとなる中、現在の方式となってから過去最高となる要求額となる。政府には賃上げ税制の改善が求められている。

金属労協1万円以上引き上げ要求

自動車や電気メーカーなど、製造業の労働組合が加盟する金属労協は、2024年の春闘で基本給を引き上げるベースアップの要求を月額1万円以上とする方針を決定した。

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金属労協・金子晃浩議長:
全方位から、とにかく引き上げる努力をしていきたい。

金属労協は都内で協議委員会を開き、2024年の春闘について基本給を引き上げるベースアップで、月額1万円以上の賃上げを求めるなどの基本方針を決定した。

現在の方式となってから、過去最高となる要求額だ。実質賃金が18カ月連続でマイナスとなる中、2023年以上の賃上げをすることで労働者の生活を支えるとしている。

2024年の春闘をめぐっては、連合が定期昇給に相当する分を含め、5%以上の賃上げを要求する方針。経団連の十倉会長も「2023年以上の熱量で賃上げを訴える」としていて、賃上げへの機運が高まっている。

大胆な賃上げが企業の原資向上へ

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
「月1万円以上」のベースアップ要求、いかがですか。

経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
日本国内の二極化の解消のためにも、ぜひ実現してほしいと思います。今、大手メーカーとインバウンドの関連企業が過去最高の利益を上げています。一方で中小企業の経営は厳しく、国民の生活も物価高が進んでいるのに、賃金は伸び悩んでいます。
さらに、儲かっている上場企業の利益は、配当として外国人投資家に渡している状態です。今求められるものは、賃金上昇。お金が国内で循環することです。

堤礼実キャスター:
やはり物価高に負けない賃上げ。これが望まれているわけですよね。

経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
勇気を持って「賃上げ」に踏み切ったことで、むしろ企業の稼ぐ力が高まった事例が数多くあります。例えば、米国で600店舗手掛ける小売り企業が、人手不足の中で安売り競争だけでは顧客の満足度を満たせないところまで行き詰った結果、経営陣が出した答えが「従業員への投資」でした。
現場の効率化やITの導入など、できることは全てした上で平均賃金を30%以上引き上げました。すると働くモチベーションが上がり、優秀な人材が確保できたことなどで、売上高は40%以上の増加となりました。「賃上げ=投資」という考え方は、国境を越えて通用するものであり、大企業、中小企業の隔たりなく必要な考え方です。

賃上げが税制とのギャップ埋める

堤礼実キャスター:
賃上げを進めていく上で、国のアシストについてはいかがですか。

経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
全国を訪れ中小企業の経営者と話すと、賃上げができる状況ではないと、皆さん口をそろえておっしゃいます。政府は賃上げ税制を打ち出しています。しかし、中小企業の6割が赤字で、もともと法人税を納めていないため、減税の恩恵が得られません。
この解決策として、赤字の企業が賃上げを行い、翌年度以降に黒字に転換した場合、赤字で使えなかった減税相当分を繰り越せるようにすることが、今検討されています。たとえ赤字でも、将来の成長に向けて賃上げに踏み切れるよう、賃上げ税制自体を使いやすいものにするべきです。

堤礼実キャスター:
賃金が上がらないことによる働くモチベーションの低下や、海外への人材の流出は、社会全体にとって大きなマイナスとなります。こうした要求が形となり、日本の未来に繋がるといいですね。
(「Live News α」12月6日放送分より)

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