自民党の最大派閥が政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑に揺れている。座長を務める塩谷立  衆議院議員は12月10日、地元・浜松市で取材に応じたが、「確認」「精査」といった言葉を繰り返し、何とも歯切れが悪い。

疑念を深めた安倍派トップの一言

自民党の最大派閥・清和政策研究会(通称・安倍派)をめぐっては、派閥の政治資金パーティーで個々に課された“ノルマ”以上にパーティー券を販売した議員に対して、“キックバック”があったとされている。

清和政策研究会の例会(12月8日)
清和政策研究会の例会(12月8日)
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疑念が深まった背景にはある人物が関係している。安倍派の塩谷立 座長だ。

現在73歳の塩谷座長は当選10回の大ベテランで、これまでに内閣官房副長官や文部科学大臣、そして党の総務会長や選挙対策委員長などを歴任。安倍晋三 元首相の銃撃事件を受けて派閥の会長代理に就き、2023年8月からは座長として事実上のトップに立っていることから、全国的にもその名が知られるようになった。

全国的にも名前が知られるようになった塩谷座長(2021年撮影)
全国的にも名前が知られるようになった塩谷座長(2021年撮影)

その塩谷座長は11月30日、派閥の政治資金パーティーのノルマについて「ノルマというか割り当てというか、そういうことで(所属議員の)皆さんにしっかりとパーティー券を販売してもらうということはあります」と認めた上で、キックバックに関しても「そういう話はあったと思います」と答えた。

さらに、後段の回答について再度確認されても「そういう話があったことはあったと思います」と重ねて述べた。

ところが、その発言がすぐさま報じられると事の大きさに気付いたのか、半日も経たないうちに「事実確認しておらず撤回したい」と前言を翻した。

突如取材に応じるも歯切れ悪く

こうした中、12月10日昼過ぎに塩谷座長の地元事務所から「取材に応じる」と報道各社に連絡が入った。

午後2時。報道陣の前に姿を現した塩谷座長は開口一番「国民の皆様に大変な政治不信を招いたことを、まずもって心からお詫び申し上げる次第でございます」と陳謝したものの「いま現在、捜査が進んでいると聞いておりますが、いずれにしましても具体的な事実関係をしっかり把握する中で今後適切に対応して参りたいと思っております。いま申し上げられることは以上でございます」と詳細な言及を避けた。

地元で取材に応じた塩谷座長(12月10日)
地元で取材に応じた塩谷座長(12月10日)

この問題を巡っては、自身もキックバックを受けながら政治資金収支報告書に収入として記載していなかった疑惑も浮上している塩谷座長。ただ、この点についても「現在、事実確認をしております」「現在、精査中ですので、いまそれぞれの捜査が進んでいる中で、まだ具体的なことを申し上げる段階ではないと思っております」「まだ申し上げられません。精査している最中でございます」などと繰り返すだけだった。

しかし、“精査”が終われば調査結果を自ら公表する意思があるかと言えばそこも曖昧で「全体の状況をしっかり把握しながら、個々に明らかにすることが適切かどうか。これは(派閥)全体の問題でありますから、そういうことも含めて今後検討して参りたいと思っております」としている。

座長の交代や議員辞職を否定

また、自らの責任の取り方を問われると「いま捜査中と言われる中で、具体的な事実関係をしっかり把握して判断して参りたいと思います」と話したが、現時点で派閥の運営を別の議員に委ねる考えはないことを明らかにし、議員辞職についても明確に否定した。

とはいえ、辞職は即座に否定できるのに、これだけの時間を要しながら騒動を拡大させた“張本人”が疑惑を否定できない理由はどこにあるのか?

塩谷座長の座右の銘は「雲外に蒼天あり」。

大辞泉によれば、雲外蒼天とは「今ある苦難も、やがて去って良いことがあるだろう」というたとえであるが、有権者が納得のいく説明責任を果たさなければ決して“青空”など臨めないだろう。

もう一人の安倍派も“精査”繰り返す

一方、静岡県内にはもう一人、安倍派に所属する国会議員がいる。衆議院議員の宮澤博行 防衛副大臣だ。

宮澤副大臣も10日、自身の私設秘書が交通事故を起こして逮捕されたことを受け取材に応じる中で裏金疑惑に関わる質問にも答え、「いま精査中でございます。かなりの事務量を要すると担当者から聞きました。そんなに長くかかるわけではないと推測しておりますけれども、いま事務所におけるパーティー券の在り方についてはさかのぼって精査しているところであります」とした上で「そもそもきついノルマでしたので、達成することで非常に苦労しておりました。ただ、だからと言って『まったくございません』と言ってしまって、仮に1枚、2枚でも超えた年があったら、それはよろしいことではありません」と述べた。

清和政策研究会に所属する宮澤防衛副大臣(12月10日)
清和政策研究会に所属する宮澤防衛副大臣(12月10日)

しかしながら、この発言や認識にも疑問が残る。ノルマ以上にパーティー券を売ることが問題なのではなく、仮にキックバックがあったとしても政治資金収支報告書に記載するなどの適切な処理をしていなかったことが問題なのであり、宮澤副大臣は問題の本質を理解しているのだろうか。

一連の疑惑は広がりを見せるばかりだ。

(テレビ静岡)

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