2022年12月、出会い系サイトで知り合った50代の男性から、不倫関係の示談金名目で現金をだまし取った罪などに問われている夫婦の裁判が、仙台地裁で始まり、2人は起訴内容を認めた。いわゆる美人局行為を行っていた2人。一方、この事件は「ある殺人事件」をきっかけに浮かび上がったものだった。

事件発覚の発端は殺人事件
詐欺などの罪に問われている、いずれも柴田町の無職・村上保彰被告(31)と、市瀬恵美被告(49)。2人は2022年12月、後述する「ある殺人事件」に関する罪で起訴されている4人と共謀し、出会い系サイトを通じて知り合った50代の男性から、不倫関係の示談金名目で現金30万円をだましとったとされている。また、別の60代の男性から同様の行為で現金をだまし取ろうともしていた。
いわゆる「美人局行為」を繰り返していた2人。
一方でこの事件は、ある殺人事件の捜査の中で浮かび上がったものだった。
その事件というのが、2023年4月、宮城県柴田町で起きた殺人事件だ。会社員・村上隆一さん(当時54)が、自宅玄関先で血を流し倒れているのが見つかったのだ。

この事件を巡り、逮捕・起訴されたのは4人。いずれも、村上さんに近い人物ばかりだった。殺人の罪に問われているのは次男・直哉被告(25)と、長男・保彰被告の妻の敦子被告(47)。さらに、凶器である包丁を埋めるなどした証拠隠滅の罪で起訴されたのが、敦子被告の元夫の松野新太被告(49)と、松野被告の妻のみき子被告(44)だった。

保彰被告は殺害された村上さんの長男で敦子被告の夫で、市瀬被告は敦子被告の姉。殺人事件で逮捕された4人と、保彰被告と市瀬被告は共謀して犯行に及んでいた。
明らかになった「美人局」実態
12月8日に開かれた初公判で裁判官から起訴状について問われると、「間違いありません」と起訴内容を認めた保彰被告と市瀬被告。
冒頭陳述では悪質な美人局行為の実態が明らかになった。

元々敦子被告に借金があった新太被告は、妻のみき子被告とともに2011年ごろから借金を返済していた。しかし収入が少なく、いわゆる売春をして稼いだ金を敦子被告への借金の返済に充てるようになっていた。

経緯は明らかになっていないが、その後、市瀬被告が妹である敦子被告とともに、出会い系サイトを通じてみき子被告の売春相手を探すようになったという。遅くとも2018年には、いわゆる美人局行為は行われていたとみられている。
与えられた明確な役割
美人局行為をするにあたり、被害者と接触するのはみき子被告。その後、2人がホテルなどから出てきたところで、夫である新太被告が被害者に詰め寄り、市瀬被告が新太被告を被害者から引き離す。
その後、保彰被告と敦子被告が被害者に示談金名目で現金を要求し、直哉被告がその様子を撮影していた。市瀬被告は売春行為の一部始終を写真や動画に収める、証拠取りの役割を担うこともあったという。6人が明確な役割を持ち、犯行を繰り返していた。

この日は論告まで行われ、検察側は「2人の美人局行為での役割は重要で不可欠」などとして保彰被告に懲役2年、市瀬被告に懲役1年6カ月を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めて即日結審した。
「いびつ」な家族関係と明確な役割
この美人局行為発覚の発端となった殺人事件では、事件直前まで村上さんの自宅で、村上さんと保彰被告、直哉被告、敦子被告の4人でマージャンをしていて、直後に、直哉被告が実行役として、村上さんを刺身包丁で刺して殺害。敦子被告は主導的立場だったとみられている。

また、新太被告とみき子被告はこの犯行に使用された刺身包丁などを焼却して、土の中に埋めたなどとされている。これについても敦子被告と直哉被告が依頼したとみられていて、2人は証拠隠滅教唆の罪でも起訴されている。

いびつな家族・人間関係の中で起きた殺人事件と「美人局」詐欺。それぞれに明確な役割が与えられ、綿密な計画のもとに犯行に及んでいると言える。中心には常に敦子被告がいるように見えるが、果たして真相は…。裁判の行方に注目が集まっている。
(仙台放送)