高円宮妃久子さまは12月6日、都内で行われた「AED推進フォーラム2023」に出席されました。「AED」は今心臓から血液を送り出すことができなくなった心臓に電気ショックを与えることで正常な働きに戻すため使われる医療機器です。久子さまは、AEDに対して、深いお考えをお持ちだと私は感じています。

高円宮様の死

2002年11月、久子さまの夫君・高円宮憲仁さまは運動中に倒れ、病院に運ばれましたが、蘇生がかなわず逝去されました。死因は心室細動による心不全です。

47歳の若さで亡くなられた高円宮様
47歳の若さで亡くなられた高円宮様
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このことがきっかけとなり、AEDの必要性が広まり、さらには一般の人たちでも使えるような動きに加速がかかっていったのです。

今回のフォーラムを主催する「日本AED財団」は2016年に設立され、2017年4月に久子さまは名誉総裁に就任されました。

AED推進フォーラム2023
AED推進フォーラム2023

2017年11月17日、第2回のフォーラムに名誉総裁として初めて出席した久子さまは、このように述べられています。

久子さま(2017年のおことば):
今日11月・・・ちょうど宮様が亡くなられたのが2002年の11月21日ですので、ちょうどこの月から15年前になります。AEDの普及は、今も確認させていただいたのですが、日本では2004年から活発になったということで、その時に間に合わなかったのは残念ではあるけれども、宮様が発信されたメッセージが何かしらの形でAEDの普及につながったのではないかという気持ちもございます。

命を救う教育

久子さまは、2023年のフォーラムの開会式で、出席した約250人に向けてこう述べられました。

久子さま:
誰かが倒れて、自分は医者ではない、その時に一番確実に連れてこられる医者に近いものがAEDなんです。AEDはとても賢いです。AEDを使うことによって、AED自体が発動するべきかどうかを判断します。こちらは医者を呼んでくるのと同じ気持ちで、AEDを連れてくればいいんです。そこに専門家がいたら、専門家が使えばいいんです、AEDを。とりあえずは、取りに行きましょう。誰も使える人が周りにいなければ使ってみましょう。医者と同じでAEDが判断してくれます。それによって命が救えるか、命が救えないか、また救った命が本当にそのあ社会復帰ができるかが決まっていきます。

今回のフォーラムには、AEDが使えず、娘さんや息子さんを亡くしたご家族、AEDにより蘇生し、今では社会復帰している方などが壇上に上がり、当時の状況を話してくれました。

亡くなられた方はいずれも高校生で、2002年と、2004年4月に亡くなられています。
AEDが普及する前のことでした。

会場に展示されたAED
会場に展示されたAED

こうした子ども達の命を救うため、2023年のフォーラムでは「学校の役割」がサブテーマとなり、「ASUKAモデルを活かす」「新しい救命教育」の2つについて説明がありました。

「ASUKAモデル」とは、2011年に、当時小学6年生だった桐田明日香さんが、駅伝の課外練習中に倒れて亡くなったことをきっかけにつくられたものです。

明日香さんはけいれんや呼吸があったことから、心停止と思われず、蘇生処置やAEDも使用されなかったということです。

こうしたことから市の教育委員会とご遺族が協力し、学校の体育活動などの時の事故を防ぐための手立てをまとめた対応テキストとして作ったのが「ASUKAモデル」です。   

また救命教育のためのアイテムとして「救命コーチングアプリ LIV(リブ)」の紹介もありました。

これは、生徒や児童が、心臓マッサージのやり方やAEDの使い方を体験しながら学べるもので、アプリがすべて説明してくれるので、先生の負担も減らせるとのことでした。

久子さまは客席から熱心に説明を聞かれていた
久子さまは客席から熱心に説明を聞かれていた

客席から説明を聞いていた久子さまも、パソコンを使いアプリを体験されていました。

久子さまは若い人への救命教育について、次のように述べられています。

久子さま:
これから先、学生たちが果たす役割も多いですし、子どもたちに小さい頃からAEDの大切さ自分のこととしてとらえて、人の命を救うようにしっかりと教育した児童が大きくなっていくにつれて、社会はどんどんAEDを使いましょう。

外国人の命も救う

さらに、外国からの旅行者や留学生が国内に増えていることもあり、久子さまが名誉総裁を務める日本学生協会基金から理事長と学生2人に参加してもらったことを明かされました。

久子さま:
日本語だけでAEDを説明していくというのが難しいですし、ご家族の方がその近くにおられるときに、興奮してとても心配な方に声をかけていくというのもとても大事でしょうから、日本学生協会基金は、高円宮杯全国中学校英語弁論大会を主催しておりますが、その英語を話せる学生たちに、その英語のために集まっている中学生にAEDについて話す機会を持ってもらおうと思ってつれて参りました。

今後も増える外国人にどのように対応していくか考えていく必要があるとの考えも示されました。

40回目の結婚記念日

以前関係者から聞いた話ですが、久子さまは日本AED財団の名誉総裁に就任するに当たり、財団に対して、AEDの数を増やすことだけでなく、その先のAEDへの理解の広がりを考えていくことについてお話しをされたと言います。

今回は、学校でどのように対応するか、若い人たちへ命を救う教育をどう進めるのか、一歩先に進んだ「普及」のためのフォーラムになった気がします。

ご自分と同じような、つらく悲しい思いをされる方が少しでもいなくなるように、と久子さまは、憲仁さまから繋がれたメッセージを伝え続けられるのでしょう。

高円宮憲仁さまと久子さま 1984年
高円宮憲仁さまと久子さま 1984年

この日、12月6日は、奇しくも高円宮ご夫妻の40回目の結婚記念日でした。

【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】

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橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。