世界一の座り大国・日本と言われている中で“座りっぱなし”によって潜むリスクについて、それを防ぐための正しい座り方について、大阪公立大学医学部附属病院の洲鎌亮(すがま・りょう)医師に詳しく聞いた。
座る時間が長いことによるリスク
座っている時間が長いという日本人だが、それによるリスクなどを見ていきたい。
厚生労働省が健康維持のために必要な運動量の目安を発表した。成人は1日60分以上のウォーキングと週2~3回のトレーニングを行うのが望ましいとしている。
しかし、日本人の成人が平日に座っている時間は平均1日7時間もあるということだ。 厚生労働省・WHO(世界保健機関)によると、この“座りすぎ”でがんや脳卒中、糖尿病、脳卒中、うつ、肥満などのリスクが高くなることが分かっている。
アメリカのテキサス大の研究では、以下のような研究結果もでている。 座り時間の30分を置き換えると…。
・ウォーキングなどの軽度の運動を行うことで、がんによる死亡率は8%低下。
・サイクリングなどの中等度の運動を行うことで、がんによる死亡率は31%低下。
座り時間が長いとこういったリスクが高まるのだ。

大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
まず、人の筋肉の全体の7割が下半身に集中しております。このため動かなければ、純粋にエネルギーの消費が落ちて生活習慣病などにつながり、このようなリスクが高まるというふうに言われています。
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
また、自律神経は体を動かすことによって調整されるんですけども、その自律神経の機能が正しく機能しなくなると、ストレスがたまり、うつにつながったりするといわれています。もちろん動くことによって血流が良くなりますので、動かないことで脳血流が落ちることによって、認知能力が下がるともいわれています。
座り時間の30分を置き換えるだけで、これだけリスクが減るというのは驚きだ。
ポイントは「30分に1回立つ、正しく座る」

座り過ぎは注意が必要なのは分かったのだが、とはいえ座らないといけないという人もいる。そういう人は、どうすればいいのだろうか。
座り過ぎのリスクを軽減するためのポイントは2つある。
1. 30分に1回立つ。ポイントは一瞬立つだけでもOK。
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
立ち上がるという行動で筋肉が収縮します。それによってエネルギー消費が誘導されますので、座りっぱなしによるマイナスを是正してくれるということです。
2. 正しく座る。ポイントは骨盤を立たせる
正しい座り方を解説

1. 骨盤を立てて座る
座骨結節という、骨の出っ張りを指で触りながらイスに座り、骨の出っ張りが指の真上に乗っている状態が骨盤が立っている状態。そのまま指を抜くと、骨盤を立てたまま状態で座れている状態だ。
2. さらに正しい座り方
Point1:お尻90度、ひざ90度
横から見た時にお尻とひざが90度になっているように、机やイスの高さを調整するとよい。
Point2:かかとは床にべたつけ
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
この体制を継続するのは大変なので、大事なのは気づいたらやるということです。ずっとやり続ける必要はなく、少しずつの積み重ねが非常に大事ですので気付いたらやってみてください。
背もたれは使わない方がいいのだろうか?
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
背もたれを使うのは全然問題ありません。使う時は、一番深く腰かけていただいて、肩に力が入ってしまっているので、力を抜いてください。この状態が一番良いです。
骨盤も力を抜いて大丈夫です。背もたれを使う時は深く腰かけるといいです。肩はリラックス、あごを軽く引く、これでよろしくお願いします。
簡単!座りながらストレッチ

骨盤を立たせて、正しい姿勢を保つには、下半身ストレッチが大事になる。座ったまま行えるストレッチを紹介する。
【ストレッチ1】
・イスに浅く腰かけて、足首を反対側の足のひざの上にかけ、上半身を前に倒す
この時、かけている側のお尻が伸びているのを感じてください。
【ストレッチ2】
・足を伸ばして、つま先をもつ
このストレッチは太ももの裏が伸びるのを感じてください。
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
届く範囲で結構です。ひざを曲げないと届かない方は、曲げていただいて全然かまいません。
・上半身を中心とした肩周り、肩甲骨ストレッチ
【ストレッチ3】
・腕をまっすぐ前に伸ばして、小指を上にして、そのままゆっくりと腕を上に上げて、耳まであげ、そのまま後ろにゆっくり回す
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
肩甲骨が動くことが意識できると思います。ゆっくり、できるだけ大きく後ろまでやることがコツです。
これまでの正しい骨盤の立たせ方を覚えたところで、腰痛・肩こり予防にもなる。座りながら下半身上半身の簡単ストレッチで病気のリスクを減らせるということだ。
生活の中で今より積み重ねて運動を

厚労省は運動の目安も示している。成人は1日1時間以上、歩数にすると8,000歩以上が目安としているが、気持ち的にも、体力的にもちょっとしんどいなと感じる人もいるかもしれない。
そこで階段を意識して上り下りで使ってみたり、掃除機のかける頻度を増やしたり、風呂掃除をちょっと力を入れてゴシゴシ頑張ってみる、このような生活の中で今より積み重ねて運動することでも効果が得られるそうだ。
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
なかなか1時間歩くのは難しいと思います。生活の中で歩行に運動の強度が近いものをやっていただくとよいです。厚労省が出しているのは、歩行は強度3です。階段は4、掃除機は3.3、 風呂掃除なら3.5です。例えば掃除機を10分やれば、歩行の10分よりもちょっと大目の運動強度。そういう形で積み重ねになりますので、ぜひそれをやられることをお勧めします。
普段の生活の中で階段とエスカレーターがあるような場面では、積極的に階段を使うといった心がけができると健康のためにはいいということだ。
座りっぱなしに貧乏ゆすりが効果あり?

視聴者からLINEで「イスに座るのと正座では、どちらがリスクが高い?」との質問が。
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
まず答えとしては一緒です。リスクは一緒なんですが、星座というのは骨盤を立てる作業としては、非常に優れた座り方になりますので、まず正座で骨盤を立てるという意識を一度、持っていただくのはいいことだと思います。ただ膝が悪い方には正座はちょっと難しくなりますので、自分でできることをやっていただくというのが大事になります。
ーー座りっぱなしに貧乏ゆすりがいい、というのは本当ですか?
大阪公立大学医学部附属病院 洲鎌亮医師:
筋肉を収縮させるという意味では意味があるので、ただずっと座っているよりはいいです。実はわたくしは大学病院で股関節を専門にやっているのですけども、股関節が悪い方に貧乏ゆすりをする、これが効果があるということが論文にもいわれています。
リスクに対しての予防にもなるかなと思います。もちろんTPOがあると思いますので、それに合わせるようしてください。
無理をせず、できる範囲で正しい座り方、いつもより少しだけ家事を頑張るなど意識してみてやってみてほしい。
(関西テレビ「newsランナー」2023年12月6日放送)