怒っていてもかわいい!そんな動物の姿がX(旧Twitter)に投稿され、話題となっている。

その動物が、北海道にある「釧路市動物園」で飼育しているエゾクロテンだ。ある日、飼育員が展示場の前室に入ったところ、エゾクロテンの「てんてん」くん(2009年に園内で保護したオス)が巣箱からひょっこり顔を出していたという。

※前室とは、展示場内を掃除するための道具などが置いてあり、扉の開け閉めの際の動物たちの逃走防止にもなる部屋のこと。

巣箱から顔をだすエゾクロテンのてんてんくん(提供:釧路市動物園)
巣箱から顔をだすエゾクロテンのてんてんくん(提供:釧路市動物園)
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てんてんくんは巣箱の四角い小窓から前足を添えて、ひょっこり顔を出している。つぶらな瞳でまっすぐに見つめてきていて、なんとも可愛らしい姿だ。

しかし、この写真を投稿した「釧路市動物園」の公式Xアカウント(@kushirozoo)によると、この時の機嫌は良くなかったというのだ。

エゾクロテンのてんてんがあざとかわいく顔をのぞかせていました。餌を持っていなかったので、これでも怒っています・・・。

餌がもらえなかったことから不機嫌だったというてんてんくんなのだが、怒っているとは思えないほど可愛らしい。

投稿でも「オコ顔なのにかわいいって最強」「可愛すぎて怒っているとは到底思えないお写真ですね」と、かわいさに感動した人が多く、2万6000のいいねが付く話題となっている(12月18日時点)。

興味はあるが…怖くてジッと見つめていた

しかし、どの様子から怒っているのが分かったのだろうか?餌を持っていた場合はどんな反応をするのか? 釧路市動物園のスタッフに話を聞いてみた。


ーー撮影時の状況を教えて。

給餌をした数時間後にも、餌の食いつきなどの状態確認のため展示場の前室に入ることがあります。状態確認のため裏口からこっそり見に行くと、警戒心が強いこともあり巣箱から既に顔が出ていました。

最初は顔を出したり引っ込めたり…(提供:釧路市動物園)
最初は顔を出したり引っ込めたり…(提供:釧路市動物園)

ーー顔を出していた、てんてんくんの様子は?

最初は眠たそうに、かつ、めんどくさそうに顔を出したり引っ込めたりしていましたが、スマホで撮影を続けると興味はあるものの怖くてジッと見つめていました。


ーーなぜ怒っていると分かったの?本気で怒っている?

「ヴヴヴ~ッ」とうなるように怒ります。掃除で中に入っている際も警戒して同じようにうなっているので、個人的にはただの警告として本気で怒っているようには見えませんが、彼自身は常に本気かもしれませんね。

怒っているてんてんくん(提供:釧路市動物園)
怒っているてんてんくん(提供:釧路市動物園)

ーーその様子を見てどう思った?

いつも警告としてうなっているため実際にどんな顔をしているのか分からなかったので、まじまじと見た時「これがあざといというやつなのかな~」と思いました。

来園者より飼育員に対して警戒心が強い

ーーエゾクロテンの生態を教えて。

イタチ科テン属クロテンの一亜種で、日本では北海道のみに生息します。大きさは雌雄差があり、オスで全長約50~80cm、体重約900~1800g、メスで全長約45~70cm、体重約700~1600gとメスがやや小ぶりです。雑食でげっ歯類や果実などを食べますが、ホンドテンに比べると肉食の傾向が強いと言われています。

エゾクロテンのてんてんくん(提供:釧路市動物園)
エゾクロテンのてんてんくん(提供:釧路市動物園)

地面に穴を掘って巣を作ったり、樹洞(木の空洞部分)を巣として使用します。飼育していても穴掘り行動はよく見られています。非展示個体(2010年に保護したオス、愛称ミッキー。バックヤードで飼育)に使い古した作業ズボンをあげると中に潜り込んで、ズボンの中を行ったり来たりして遊んでいます。

寒い冬を乗り越えるため、冬毛の密度は約1万5千本/平方cmとも言われていて、高級毛皮の材料として使われ、ロシアにはクロテンの毛皮用の飼育農場もあります(※日本国内では捕獲および飼育が禁じられています)。

遊ぶことが大好きで、アイヌ語では「カスペキラ」という名前で呼ばれ、意味は「しゃもじを持って逃げる」だそうです。昔から人家に入り込んで遊んでいる様子をアイヌの方々はよく観察されていたようです。

外を眺めている?(提供:釧路市動物園)
外を眺めている?(提供:釧路市動物園)

ーーてんてんくんは、どんな性格なの?

元々、野生個体のため警戒心が非常に強いのですが、お客様がケージ内に入って来ることがないことを理解しているので、お客様よりもケージ内に入る飼育員に対しての警戒心の方が強いです。

巣箱の中から外を眺めている(提供:釧路市動物園)
巣箱の中から外を眺めている(提供:釧路市動物園)

ーー普段はどんな様子を見かける?

遠目で観察すると、活発な時はかなり俊敏な動きをしてガラス越しに外の様子をみたり、穴を掘ったりして忙しそうにしています。ただ、飼育員に対して警戒心が強いので、こちらの存在に気付くと巣箱の中や裏側に逃げてしまいます。

飼育員を警戒している(提供:釧路市動物園)
飼育員を警戒している(提供:釧路市動物園)

ーーエサを持っていた場合はどんな反応をするの?

警戒心が強いのでエサを持っていても巣箱からすぐに出ることはありません。ちなみに、相当お腹が空いている日はうなり声が大きめです。飼育員が去ったのを確認してからエサを食べにきます。


ーー投稿にはたくさんのいいねが付くほどの反響があるが?

今回の反響を通じてエゾクロテンの魅力を広めることができて嬉しいです。エゾクロテンについてさらに知ってもらえたら幸いです。

なお、警告の「うなり声」を無視して近づいたり接触しようとしたりすると、鋭い爪や牙で「攻撃」という形で自分の身を守るだろうとのことだ。

「非常に警戒心が強いということは、それにかかるストレスも大きいことに繋がるので、無理に接触はしていません」とも話していた。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。