鹿児島県内各地でも2016年から活動が始まった「子ども食堂」。いま、地域やニーズに合わせて運営の形が変化している。多様化する鹿児島の子ども食堂。その“現在地”を取材した。

新型コロナで子ども食堂も変化

鹿児島市にある「ナポリ通りのこども食堂」。取材した日は学生や主婦などボランティア約15人が集まり、飲食店や企業から無償提供された食材を調理していた。

「ナポリ通りのこども食堂」スタッフの引地涼さん
「ナポリ通りのこども食堂」スタッフの引地涼さん
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「大人は300円お金を取っていて、子どもは無料なんですが、大人の発注が14で子どもは41なので…」と、準備の手を止めずに語ったのはスタッフの引地涼さん。今では手際も良くなったが、発足当時を「誰も100人規模の料理なんて作ったことないので、今と比べたら昔はごちゃごちゃだったと思います」と振り返る。

2016年当時の子ども食堂
2016年当時の子ども食堂

子ども食堂は当初、経済的に苦しかったり、一人で食事をする子どもたちを支援したりする目的を担っていたが、徐々に、誰もが来られる居場所として広がりをみせてきた。
しかし、変化を余儀なくされたのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。

人との接触が減り対面形式の運営が困難となった中、この子ども食堂が始めたのが弁当の配布だ。2023年6月以降、食堂で食べる対面形式も再開されたが、弁当の注文が多いとのことで、コロナが5類に移行されても続いている。
引地さんは「弁当のほうがよいという方が結構いる」とその理由を話す。

この日子どもたちには、弁当と一緒にお菓子や果物が配られていた。
「好きなお菓子を選んでいいよ、と言ったら『やった』って」子どもが喜ぶ様子を語る引地さん。テイクアウトの利用者ともコミュニケーションを深めようという工夫が込められている。

形を変えざるをえなかったコロナ禍だが、引地さんは子ども食堂の認知が広まった一面もあると話す。

ナポリ通りのこども食堂・引地涼さん:
コロナで宴会がなくなり、食材の廃棄(という問題)を支援に生かせないかと企業が調べて、子ども食堂にたどり着いて。ここだけでなく、いろんなところでシェアしながら使わせてもらっている。

鹿児島県内の現在の状況

NPO法人がまとめた鹿児島県内の子ども食堂の推移をみると、コロナ禍となった2020年以降も数は増え続け、現在、149カ所の子ども食堂が存在する。

調査を行ったNPO法人「たくして」。県内の子ども食堂を支援するため、食材の情報提供などを行っている。
取材した日も事務所に食材を求める運営者が訪れていた。その1人は「自分で買ったら自分の出費になるので、野菜とかすごく助かる」と語った。

コロナ禍を追い風に、県内でも存在感が増している子ども食堂だが、課題もある。かごしまこども食堂支援センターたくして・園田愛美理事長は「地域によっては子ども食堂が近くにないので、どんなものか見たことがないとか、広がりが若干遅いところもある」と指摘する。

子ども食堂が市内に1つしかない、枕崎市の子ども食堂「スマイルキッチン にんぎまんま」を訪ねた。「にんぎまんま」はおにぎりという意味。「まずおにぎり1つからどうぞ、みたいな感じで始めました」と話すのはスタッフの茅野寿満子さんだ。

同級生のつながりから始まったメンバーたち。和気あいあいとで食事の準備をする。
枕崎に子ども食堂が1カ所しかないため、車を使って市内全域で弁当を配るスタイルを取り入れている。「交通弱者のために色々な地区に出向き、出前をしましょう」という狙いだと茅野さんは語る。

この日はイルミネーションの点灯式に参加し、ぜんざいやスタッフ用のおにぎりを振る舞うことになった。コロナ禍で対面での食堂を再開できていない今、イベントを通じて地域との交流を深めたいと参加を決めた。

会場に到着したメンバーが、ぜんざいを温めながらイベント開始を待つ。そんな中、場内に「3、2、1、点灯!」のアナウンスが流れイベントが開始。ハート型の電飾に花火も加わり華やかなムードの中、ブースにはイベント開始直後から多くの人が訪れた。

「もちもちしてて、おいしかった!」と話す人。「めっちゃ心が温まりました!あはは!」と笑顔がこぼれる人。「枕崎はにんぎまんまですよね?前も出展されてて買ったことある」と話す人もいて市民の認知度の高さがうかがえた。

茅野さんは「「また頑張ってね」という言葉で疲れは吹っ飛ぶ。またいろんなことに挑戦していきたい」と、今後について話した。

子ども食堂 理想の形は?

それぞれのスタイルで運営を続ける子ども食堂。理想の形を聞いてみた。

ナポリ通りのこども食堂・引地涼さん:
「子ども食堂」と名乗ってはいるが、どちらかと言えば「地域コミュニティ食堂」というか、いろんな世代の人が同じ所でおしゃべりできるのが、子ども食堂のいいところ

スマイルキッチンにんぎまんま・茅野寿満子さん:
皆さんのよりどころというか、コミュニケーションの場にしてもらって。それが私たちの一番の狙いです

子どもだけでなく、地域交流の拠点でありたい。スタイルはそれぞれ異なるものの、関係者は時代に応じた子ども食堂のあり方を模索し続けている。

(鹿児島テレビ)

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