“庶民の味方”といわれる卵の高値が続いている。全国平均の価格推移をみると、2024年春に一度下がったものの、またじわじわと上昇。消費者もさることながら、養鶏の現場からも生産コストの上昇に悲鳴が上がっている。

昨年の1.5倍の価格に

福井市のスーパー「アル・プラザ ベル」を取材すると、卵10個入りのパックが一番安いもので税込み268円で販売されていた。
  
買い物客の反応は―
「1割くらい高く感じる」
「ちょっと高い…困るけどないと寂しい気がするし
「卵は良く食べるので高くても買わないと…」

去年の1.5倍の値段に
去年の1.5倍の値段に
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この店での卵の価格は、昨年の1.5倍だという。店の担当者は今後も値下がりは考えにくいと話す。「活用頻度が高い商品なので店としても心苦しいが、価格が下がることは考えにくい状況。基本的には高止まり状態でなはいか」 

店は価格低下は見込めないと話す
店は価格低下は見込めないと話す

餌代の高騰や鳥インフルエンザで価格が高騰

長年、価格が安定していたことから“物価の優等生”といわれた卵。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに鶏の餌代が高騰し、2023年には一時、全国の平均価格は1パック300円を超えた。

卵の価格推移
卵の価格推移

その後、価格は一旦下がったものの、2024年秋から冬にかけて鳥インフルエンザが流行したことで再び上昇。2025年5月の価格は、10個入りパックで297円と、2024年の同じ時期に比べると50円も高く、300円に迫る勢いだ。

卵の価格推移
卵の価格推移

餌代アップ、猛暑に生産者も苦悩

しかし困っているのは、消費者だけではない。
  
生産者の声を聞くべく、あわら市にある養鶏農家・黒川産業を訪ねた。ここでは福井県がブランド化を進める「福地鶏」2000羽を飼育しているが、餌代の高騰で、飼育コストが大きく膨らんでいるという。「9年前に飼育を始めた時は(餌代は)1トンあたり3万円ぐらいだったが、今は餌の種類にもよるが1トンあたり7万円ぐらいと結構上がっている」と黒川さん。

平飼いされている福地鶏
平飼いされている福地鶏

加えて運送費や光熱費も上昇し、9年前に1個30円以下だった卵は、今や68円。価格転嫁はしているものの、経営としては厳しい状況が続いている。

価格転嫁しても厳しい経営
価格転嫁しても厳しい経営

冷却装置を付ける「余力ない」

さらに追い打ちをかけるのが猛暑。ニワトリは暑さに弱く、温度管理は卵の質に直結する。「しっかりとご飯食べている時はきれいな卵を生むけど、水しか飲まなかったりすると表面がざらついたり、つかむと割れてしまったりするような卵になる」という。

猛暑は卵の“質”にも影響
猛暑は卵の“質”にも影響

そのため鶏舎では、24時間換気扇を回している。「鶏舎の中で散水したりミストを出したりすると床面がドロドロになってしまう。そうすると菌が繁殖してしまうので、風だけにしている。もっと設備がしっかりしていれば、冷却装置を付けて冷たい空気を送ることもできるが、そこまでの余力がない」
    
物価高や猛暑は、養鶏農家の経営にも影響を及ぼしている。

扇風機を増やして猛暑に対応
扇風機を増やして猛暑に対応

長く“物価の優等生”と言われてきた卵。“当たり前に安く”という意識を、消費者も見直していく必要があるのかもしれない。

福井テレビ
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