毎年、社会情勢や世相を反映した象徴的な食べ物が選ばれる「今年の一皿」が12月4日発表された。2023年の「今年の一皿」に選ばれたのは「ご馳走おにぎり」だった。

行列必至!おにぎり専門店増加

「今年の一皿」は、食に関する情報の調査会社「ぐるなび総研」が毎年発表しているもの。

2023年を象徴する一皿として、「ご馳走おにぎり」 「米粉グルメ」「ホタテ」「陸上養殖魚」の4つがノミネートされたが、「ご馳走おにぎり」が「今年の一皿」に選ばれた。

左からエビアボカド、シャケいくら、卵黄チャーシュー
左からエビアボカド、シャケいくら、卵黄チャーシュー
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「ご馳走おにぎり」は、外から見えるほど多い具材が特徴だ。見た目の華やかさからSNSを中心に話題となり、おにぎり専門店の開業が相次いだ。「黄身の醤油漬け」や「フォアグラ」など専門店ならではの特別な具材が登場。多くの具材から選べる楽しみや、握りたてのおにぎりを味わうスタイルがヒットし、行列店も多く誕生した。

小麦価格高騰も背景に

おにぎり専門店の出店が相次いでいる背景について、ぐるなび総研は「小麦の価格が高騰し物価高が続く中で、コメの価格は比較的安定していることや、コロナ禍を経て多くの人がテイクアウトに慣れ、一定の需要がある」などと分析している。

小麦価格高騰でおにぎりに注目が
小麦価格高騰でおにぎりに注目が

また、必要な調理器具やスペースが少ないため初期費用が抑えられる他、専門的な技術を比較的必要としないため、初心者でも参入しやすい事、梅干しや昆布など日持ちする食材が多く、所品ロスが出にくい事などを人気の理由としてあげている。

コメの消費減少も中食・外食消費割合増加

ぐるなび総研によると、コメの1人当たりの年間消費量は昭和37年度の118キロをピークに減少傾向となっていて、2022年度には50.9キロまで減少している。

日本人の米の消費量は減少している イメージ
日本人の米の消費量は減少している イメージ

一方で、昭和60年度には「中食・外食」で消費するお米の割合は15.2%だったが、2020年度には30.8%まで上がっている。つまり、外食やコンビニなどの中食でお米を消費するケースが増えており、おにぎり専門店が流行する下地が出来ていたと言えそうだ。

日本の食文化「おにぎり」が世界へ

ぐるなび総研によると、石川県で発見された「もち米を蒸して固めて焼かれたおにぎり状のチマキの炭化米塊」は今から約2000年前、紀元1世紀頃のものだという。

長く日本人の食を支えてきた「おにぎり」は、近年海外でも人気になっている。農水省のデータによると、2023年1月から6月のコメの輸出は前年比29%増えた。

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なかでもアメリカへの輸出が倍増していて、カナダに至っては4倍だ。2013年にアメリカ、17 年にフランスに進出した「おむすび権米衛」はコロナ禍で需要が急増し、現在も連日行列ができるという。売上規模はオープン時と比較して約5倍に成長している。

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円安で日本産の米の価格が手頃になっている上、おにぎりの基本的な原料は「コメ、のり、塩」であり、具材の選択肢も多いので、宗教上の理由で食べ物に制限がある人や、動物性の食材を食べない菜食主義者にも受け入れられやすいのだろう。

過去10年の「今年の一皿」は以下の通り

2022年 冷凍グルメ
2021年 アルコールテイスト飲料
2020年 テイクアウトグルメ
2019年 タピオカ
2018年 鯖
2017年 鶏むね肉料理
2016年 パクチー料理
2015年 おにぎらず
2014年 ジビエ料理

渡邊康弘
渡邊康弘

FNNプライムオンライン編集長
1977年山形県生まれ。東京大学法学部卒業後、2000年フジテレビ入社。「とくダネ!」ディレクター等を経て、2006年報道局社会部記者。 警視庁・厚労省・宮内庁・司法・国交省を担当し、2017年よりソウル支局長。2021年10月から経済部記者として経産省・内閣府・デスクを担当。2023年7月からFNNプライムオンライン編集長。肩肘張らずに日常のギモンに優しく答え、誰かと共有したくなるオモシロ情報も転がっている。そんなニュースサイトを目指します。