2016年の熊本地震で被災し復旧工事が続く熊本城では、修復のために間もなく解体される宇土櫓(うとやぐら)を覆う素屋根がほぼ完成し、中の様子が報道陣に公開された。

素屋根3階部 模型のような宇土櫓

宇土櫓は熊本地震で柱が割れたり建物が傾くなどしたため、解体した上で再建されることが決まっている。その解体、再建工事の際に建物を雨風から守る素屋根がほぼ完成し、11月29日に中の様子が報道陣に公開された。

この記事の画像(8枚)

素屋根3階の内部から見る宇土櫓は、まるで模型などの展示物のようだ。土壁の崩落や瓦のひび割れなど、遠くからでは分からない地震被害や経年劣化を見ることができる。

熊本地震で倒壊した続櫓との接続部分、宇土櫓の屋根の分が露出してしまっていた。素屋根は取り外した部材の保管スペースとしても使われる予定だ。

「桔梗」と「九曜」鬼瓦に混在する家紋

また素屋根4階では、櫓と同じ高さの手を伸ばせば届くほどの距離で見られるのも地震後は初めてだ。

城内の重要文化財建造物のうち、宇土櫓でしか見ることができない鬼瓦の部分を見てみると、加藤時代の家紋「桔梗(ききょう)」と細川時代の家紋「九曜(くよう)」が混在していた。このように1つの櫓に2つの家紋が混在しているのは、城内では宇土櫓だけという。

これは加藤時代に建てられ、細川時代に修理されたためとみられているが、その後も幾度となく修理がなされたことから、なぜここだけ同じ櫓に複数の家紋が残るのか詳しい理由は分かっていないということだ。

年明けから解体工事始まる

さらに素屋根5階部分に上がると、青銅製のシャチホコの表情まで見ることができた。

このシャチホコは、宇土櫓が昭和2年に解体・修復された際に載せられたもので12月に取り外される予定だ。

熊本城総合事務所 復旧整備課・岩佐康弘課長:
この宇土櫓を今から解体していく。解体というのは“物”を解体するだけではなく、“歴史そのもの”をひもといていく。そういった思いでこれから事業に取りかかっていきたいという思いでいっぱい

宇土櫓の本格的な解体工事は年明けから2年間かけて行われ、元の姿に戻るのは2032年度の予定だ。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。