熊本地震で被災し、修復のためにまもなく解体される国の重要文化財・熊本城宇土櫓。
その内部が地震後初めて報道陣に公開された。テレビと新聞それぞれ1社が代表して撮影に入る形がとられ、テレビはTKUが撮影を担当、郡司琢哉キャスターが記者として中に入り、床や柱の傾きなど外からでは分からない被害の大きさを目の当たりにした。

熊本地震から7年半 初めての被災内部公開

加藤清正・忠広の時代に建築されたとされ、築造当時の姿をとどめる熊本城宇土櫓は、2016年の熊本地震で被災し、解体したうえで再建されることが決まっている。

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地震から7年半、10月17日に初めて建物の内部が代表取材という形で報道陣に公開された。宇土櫓が修理のためにすべて解体されるのは昭和2年(1927年)以来だ。

壁が落ちており、鉄骨の「ブレース」が見える

入るとまず目につくのが、いたる所の壁が落ちているという状況だ。それから昭和2年に全解体修理をした際に入れられた鉄骨のバッテン「ブレース」がたくさん見える。

この鉄骨のブレースが、倒壊を防いだ一因と考えられている。隣の部屋にも被害の大きさを感じさせるものがあった。

垂直を示すレーザーが大きくずれていることがわかる
垂直を示すレーザーが大きくずれていることがわかる

柱に垂直を示すレーザーをあてると、柱が左に傾いているため、レーザーがずれて照射されている。それだけ柱が倒れているということが分かる。

傾きは、柱だけでなく床もだ。ビー玉を床に置いてみると、勢いよくビー玉が転がる。それだけ床も傾いているということだ。床の傾きに、土壁の崩落、柱の傾きや割れなど、これらの被害が各階で見られた。

そしてカメラは最上階の5階へ

地震後はずっと扉を閉めているという最上階5階の扉。ここから外の素屋根の工事が見えるという。

熊本城総合事務所の田代純一さんによると、「南面の素屋根の外壁には壁ではなくネットを張ろうと思っている」といい、「南面と東面(天守閣方向)は、遠くからであれば宇土櫓の作業の様子を見ていただけるという工夫をしたい」と話す。

熊本城総合事務所・渡辺広樹さん:
これから長い間、宇土櫓は皆さんにお見せすることができないんですけど、また勇壮な宇土櫓の姿を蘇らせて、後世の皆様に伝えていくために丁寧に頑張ってまいりますので、温かく見守っていただければと思います

宇土櫓の本格的な解体工事は年明けから始まり、約10年間その姿が見られなくなる。

解体・設計で再建完了は2032年度予定

今後のスケジュールだが、現在は解体・組み立て工事の際部材を雨風から守る「素屋根」の内装・外装工事が行われていて、年明けから解体工事がスタートし、2年間かけて解体される。

このとき外した柱や梁などの部材は、素屋根の中で保管され使えるものに関しては再建の際に使用される。その後2年間で復旧の設計を、さらにその後の5年間で復旧工事を行い、再建完了は2032年度の予定だ。

実は宇土櫓の建てられたくわしい年代はわかっていないということで、約100年ぶりとなる全解体で過去の修理では見つからなかった創建に関わる痕跡などが確認されることも期待されている。

(テレビ熊本)

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