時を経て相まみえた高校球児。かつて夏の甲子園の決勝で激闘を繰り広げた熊本工業と愛媛の松山商業。当時の選手たちが一堂に会し、勝負の分かれ目となった「奇跡のバックホーム」が再現された。
熱戦を繰り広げた選手たちが愛媛に集結
高校野球ファンの間でいまも語り継がれる伝説のプレーがある。

1996年、夏の甲子園・決勝。松山商業が熊本工業・悲願の初優勝を阻んだ「奇跡のバックホーム」だ。

2023年11月25日、当時熱戦を繰り広げた選手たちが愛媛・松山市の坊っちゃんスタジアムに集結した。

熊本工業OB・本多大介さん:
(ユニフォームは)当時のままです。何とか入りました。いや~、この辺(大胸筋)が 弱くなってこの辺(おなか周り)が強くなって…

熊本工業OB・星子崇さん:
(坊っちゃんスタジアムは)僕、初めてですよ。外観は何回も見てるんですけど中に入るのは初めて。熊本にもほしいですよね。こういう球場が
45歳になった球児たちが奮闘
実は両チームの対戦は今回が3回目。前回は2016年、熊本地震復興を願い藤崎台で親善試合が行われこのときは熊本工業が9対8で勝っている。

再会は実に7年ぶり、シートノックは松山商業の監督だった沢田勝彦さんの計らいで両チームが一緒に受けた。

駆け付けた松山商業OBのブラスバンドが鳴り響く中、当時18歳、現在は45歳となった球児たちがちょっと大きくなった身体で奮闘する。

かつての甲子園球児が全力を尽くした熱戦は逆転に次ぐ逆転の末、8対7で熊本工業が勝利。通算での対戦成績を2勝1敗とした。
当時よりやや浅いライトフライで…
松山商業の沢田元監督が「ライト矢野!」と声を上げると、セレモニーとして27年前と同じ場面が再現された。

守備固めで松山商業OB・矢野勝嗣さんがライトへ。

3塁ランナーには熊本工業OB・星子崇さんが向かう。
甲子園でも屈指の名場面を演出した2人が奇跡のバックホームに備える。

延長10回、ワンアウト満塁。熊工のバッターもあの日と同じ3番、本多大介さん。渾身のフルスイングで甲子園の決勝よりもやや浅いライトフライを打ち上げる。

ライト矢野さんから見事なストライク返球、タッチアウトとなったが、両者からは笑顔がこぼれた。
「またいつか」続く甲子園の友情
熊本工業OBの星子さんは「楽しかったですね」と振り返る。

熊本工業OB・星子崇さん:
でも やっぱりいい勝負になるんでしょうね。圧倒的に勝つかなと思ったんですよ。今回は。結局1点差でしょう。ヒット数じゃ負けてるし。こうなるんでしょうね、おもしろい。自分たちの原点じゃないかと思うんですけどね。

松山商業OB・矢野勝嗣さん:
あのプレーが無かったら僕はここに立ってないと思いますし、あのプレーができて熊工ナインとつながりが持てているのは今となっては感謝しかないですね。プレーするのはもう今回がギリギリかなという感じですけどいつかまた機会があれば試合をやりたいなと思いますね。

またいつか、そんな言葉を交わした二人。
高校野球がある限り甲子園で育まれた友情はこの先も続いていく。
(テレビ熊本)