ヒラメとカレイは見た目がよく似ている。「左ヒラメに右カレイ」、腹を下にして顔が左にくるのがヒラメ、右にくるのがカレイというのが古くからの魚の見分け方だ。しかし、「右向きなのにヒラメ」という、向きが逆のヒラメがまれに発見される。この珍品ヒラメ、味はどうなのか、価格は高くなるのか安くなるのか?専門家に聞いてみた。
右向きヒラメが2匹も!
11月、千葉県の太東漁港で「右向きヒラメ」が網にかかったとの投稿がフジテレビに寄せられた。投稿者は、この道20年以上の漁師さんだ。投稿された写真には、青色のかごの中に入った2匹の魚が入っている。おなかを下にして並べると、顔が右に来る。「左ヒラメに右カレイ」通りなら、この魚はカレイのはず。しかし、この魚、実は珍品の「右向きヒラメ」で、短期間に2匹水揚げされたという。
投稿した漁師さんによると、1匹目は体長およそ50センチ。最初は「右向きカレイ」とは分からず、「網からはがそうとしたら、いつもと逆なので頭だと思ったらエラの部分でつかめなかった。何だこれと思い、よく見たら右ヒラメでした」とのことだった。

もう1匹はその4日後に網にかかり、体長およそ35センチだった。この辺りで「右向きヒラメ」が網にかかったのは、これまで聞いたことがないとのことだった。
だが、ここで1つ疑問がわいてくる。右向きなのになぜヒラメと分かるのだろうか?そもそも「左ヒラメに右カレイ」という見分け方は正確な物なのだろうか?国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所の企画調整部門研究開発コーディネーターの清水大輔さんに話を聞いてみた。
顔の向き以外の「見極めポイント」が
――見分け方を最初に見つけた人は誰でそれはいつ頃?
これは分かりません。かなり昔から言われているようです。ただ「右向きヒラメ」の存在は昔から知られています。最近になって出てきた物ではありません。
――「顔の向き」以外に見極めるポイントは?
ヒラメの場合は、上にいる魚類を捕食するためカレイ類に比べて口が大きく,両顎の歯は鋭い犬歯状の歯で一列に並んでいます。眼は体に埋まったようについており、上を見ることが得意な付き方をしています。

カレイの場合は、多くは底にいる甲殻類などを捕食しており,口は下向きでは小さく,歯も少ないです。眼については底の餌を見るためか少し飛び出ています。
右向きヒラメは安くなる?
――正常魚と右向きヒラメでは味の違いはあるのか?
味についてはまったく変わりません。
――価格は?
価格については形態異常ですので,低下する可能性はあると思います。
――右向きが出現する確率は?
1000尾に1尾くらいの割合、つまり0.1%で出てきます。珍しいと言えると思います。
――右向きはどうやって産まれてくるのか?
異常が起こるのは受精卵の時で、原因は不明です。この異常は遺伝的影響もゼロではないですが,後天的な影響が大きいとされています。
右ヒラメは左右が逆転しているだけで機能的には正常魚と同じと考えています。
ただし、生殖は泳ぎながらオス、メスが重なって行うので,生殖肛が逆側についている魚と正常な魚との繁殖は難しく子孫を作るのは難しいと思います。
普通に出荷された右向きヒラメ
最初に紹介した2匹の「右向きヒラメ」はその後、近くの漁協組合に卸され、千葉県勝浦市にある水産会社が競り落としたという。水産会社に話を聞いたところ、「キロ単位で仕入れているから、右向きだからいくらかということはないよ」とのこと。普通の「左ヒラメ」と同じ扱いで売られたそうだ。
あなたの家の近くの鮮魚店でも、もしかしたら、珍しい右向きヒラメを見つけられるかもしれない。
【執筆:フジテレビ ネット取材部 藤川堅介】