「悪質ホストクラブの問題、これは警察庁としても、極めて深刻な問題であるというふうに認識をしています」

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28日、東京・歌舞伎町で取材陣に対してそう語ったのは、日本の警察組織のトップである、露木康浩警察庁長官です。

警察庁 露木康浩 警察庁長官:
女性に借金を負わせて、売春をさせて、資金を得させるという非常に卑劣な営業手法、悪質ホストクラブの営業手法に対しては、徹底的にあらゆる法令を駆使して、取り締まりをする。

この日、露木長官が歌舞伎町を訪れた理由は、ホストクラブの視察。

さらに、「立ちんぼ」と呼ばれる売春相手を探す女性たちが立っている、大久保公園周辺にも足を延ばし、その目で実態を確かめていました。

警察庁の長官が歌舞伎町を視察するのは、2005年以来、実に18年ぶりです。

警察庁 露木康浩 警察庁長官:
我々が「匿名・流動型犯罪グループ」と呼んでいますけれども、そういう新たな犯罪グループが跳梁跋扈しつつある。この悪質ホストクラブの背景にもそういった犯罪組織の関与があるのではないかというふうに考えております。

歌舞伎町を視察する露木長官(画像中央)
歌舞伎町を視察する露木長官(画像中央)

露木長官が語ったのは、「匿名・流動型犯罪グループ」略して“トクリュウ”の存在

「トクリュウ」とは、SNSを通じて「闇バイト」を募集し、特殊詐欺や強盗を繰り返す犯罪グループのこと。警察は、「悪質ホストクラブ」問題の背後にもこの「トクリュウ」の存在があるとの見方を強めているのです。

「悪質ホスト問題」の裏で、暗躍する“トクリュウ”とは、一体どのような存在なのか。その実態は?
「めざまし8」は、歌舞伎町のホストクラブ関係者を取材、「トクリュウ」と悪質ホストクラブの関係が見えてきました。

歌舞伎町のホストクラブ関係者が語る“トクリュウ”の実態

警察庁が警戒する “トクリュウ”は、どのような形で悪質ホストクラブに関わっているのでしょうか?

歌舞伎町のホストクラブ関係者は、自身は“トクリュウ”などの反社会勢力などとは付き合いがないとした上で、その存在をこう話します。

歌舞伎町のホストクラブ関係者:
“売り掛け”の回収だったりとかを、「やらせてください」って言って、店舗に回ってるようなところは何個かありますね。普通に来て、「回収成功報酬のいくら俺らもらっていくから」、半グレなのかどうかを店舗側もほぼ知らないで、「じゃあお願いします」って言ってやっているようなところはあるのは、聞いたことあるというか、実際ありますね。

店によっては、成功報酬と引き換えに、トクリュウに売掛金の回収を依頼している店があるといいます。

歌舞伎町のホストクラブ関係者:
僕のところにも5社ぐらい来て、こういうことできるから、やっぱり法律に強いだったり、何かあってきても、別にこっち問題ないよとかっていうとこもあって。
まあちょっと怪しいところはいっぱいあるんで、うちは使わなかったんですけど。

店やホストに代わって、売掛金の回収を持ちかけ、売掛金が払えない女性に対しては、風俗のスカウトマンなどと連携し、風俗店を紹介する役割も担っているとみられています。

さらに、風俗店の経営などにもトクリュウが関与している可能性も。

――何歳くらいの人が多い?
歌舞伎町のホストクラブ関係者:

若い人はあんまりいないですよね。一例で、僕が「カフェで話しませんか?」って言われた方は、法律に詳しそうな方でしたね。反社っていう感じはしなかったです、僕が話した方は。

――「売り掛けの回収に困ってたら助けますよ」というような?
そうですね。債券回収をこちらに任せてくれたら、成功報酬でだいたい折半って言われて。半分持っていくから、半分返ってこないよりいいでしょ、みたいなことを言っていましたね。

――成功報酬半分なんですか?
半分でしたね。半分が基本なんじゃないですかね。ほとんど聞いたところ、半分ですね。

売り掛けの回収と引き換えに要求されるのは、高額の報酬。店だけではなく、売掛金を回収できないホストたちが個人で依頼している可能性もあるといいます。

歌舞伎町のホストクラブ関係者:
そういうところにお金が流れているって、逆にホストを食い物にして、半グレの人が寄ってきているっていうのが事実だと思います。
(ホストが)狙われているというか、そういう子たちが、お金を稼ぐために、そういうところかに何かしらつながりを見つけて、やっているのかもしれないと思いますね。

暴力団とのつながりも?

犯罪ジャーナリストの石原行雄氏は、トクリュウが行っているとされる、売掛金の回収や、風俗業へのあっせんについて「違法性がある」と話します。

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏

――売掛金を回収するという行為に違法性は?
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:

違法性はあります。基本的にはアウトになっています。(風俗業へのあっせんも)厳密に言いますと、職業安定法の有害労働へのあっせんと言うことで、違法行為となっています。スカウト行為、キャッチ行為であっせんするというのは、今は職業安定法でアウトです。

――半グレとトクリュウは違うのですか?
弱冠微妙に違います。例えば半グレというのは、例えば幼なじみですとか、幼なじみを元にした暴走族のグループですとか、比較的縛りがしっかりしている。ヤクザはもっと、暴力団はしっかりとした組織がありますけども、半グレはそれよりも弱いんですけど。
匿名・流動型犯罪グループとは、それよりもさらにゆるいつながりです。元暴力団員ですとか、元暴走族ですとかが、組織ではなく“個別”に犯罪に関与していくということで、逆に実態解明が難しくなっていると。

――組織犯罪防止法で取り締まるのは難しい?
そうですね、実態解明をするときに、暴力団であれば、例えばこの組は構成員が何人いて、どこに所属していてということが分かりますけども、そこからまずやらなくてはいけない。

――ホストとトクリュウの関係は、どちらから持ちかけられるのでしょうか?
売掛金を回収するよと、トクリュウの方から持ちかけるケースもありますけども、私が聞き及んでいるのは他に2つありまして、トクリュウの手下がホストを送り込むというケースですとか、あるいはホストクラブの経営にトクリュウが関与しているケースもあるんじゃないかと。

さらに石原氏は、トクリュウに流れた金が、別の犯罪の資金源になっているケースもあると指摘。その上には、暴力団の存在がある可能性もあると言います。

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:
やはり悪辣な営業ですね。例えばそれこそ20そこそこの女の子に、担保もないのに、500万600万円の売り掛けをつけるような。そういう事をやっていれば、上にけつもちが必要だということで、上納金を渡して、暴力団のバックアップを受けているというケースがあるんじゃないかと。

――今後どのように対策すれば良いのでしょうか?
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:

やはり、大本になっていると思われる暴力団、黒幕の存在ですね。そこを解明して、上をとにかくたたくということ。そうすると、下から上がっていった資金や知識、ノウハウがまた下におりて犯罪が広まっているところを、その広がりを抑えられるという可能性は高まっていくと思います。

――取り締まりが厳しくなるとより巧妙になる可能性は?
そうですね。ただやはり、確実に追い詰められているからこそ、暴力団はこのような手法を考えているという可能性はありますから、さらに追い詰めていくということが必要だと思います。
(めざまし8 11月28日放送)