11月30日で立憲民主党の泉健太代表は就任3年目を迎える。この1年、岸田政権の支持率が低迷しているにもかかわらず、野党第一党の立憲に風は吹かなかった。

では3年目の泉・立憲にどんな戦略があるのか聞いた。

「5年で政権交代」発言の真意は?

――まず先日発言された「5年で政権交代」について党内から批判の声もあります。あらためて発言の真意を教えてください。

立憲民主党・泉健太代表
勘違いも含めて様々な声もありますが、基本的に私が言っていることはずっと変わっていません。いま我が党は衆議院で95議席なので、150議席に伸ばすのは相当大変なことです。ただ政権交代を1日も早く目指すのは当たり前のことですし、次の選挙で我々が150議席以上に躍進すれば他の野党の議席も増え、与党が過半数割れになるのはあり得ます。現時点では候補者が170人弱の状況なので、とにかく候補者を探すことに全力を尽くしているところです。

泉氏「政権交代を1日も早く目指すのは当たり前」
泉氏「政権交代を1日も早く目指すのは当たり前」
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――日本の政治のジェンダーギャップをどう見ていますか。

立憲民主党・泉健太代表
まず立憲民主党として1人でも多くの女性候補者を擁立したいし、女性議員を誕生させたいですね。今年4月の統一地方選挙では女性議員を60人増やすことができました。私が党の代表になってからジェンダー平等を最大の重点課題として取り上げ、執行部の半分を女性に、そして参議院選挙の公認候補者も51%を女性にしました。当選者の比率でも53%でしたので、大きな一歩だったと思っています。

政治のジェンダーギャップを無くす

――女性候補者の当選比率を増やすために、どのような施策を行ってきましたか?

立憲民主党・泉健太代表
単に候補者数を増やしたということではありません。党にジェンダー平等推進本部を置いて、女性候補者へのメンター制度や支援交付金の上乗せ、ベビーシッターの整備など物心両面の支援制度をつくり、女性候補者の不安の軽減に取り組んできました。

超党派による「クオータ制を実現するための勉強会」は2021年に始まった
超党派による「クオータ制を実現するための勉強会」は2021年に始まった

――クオータ制の導入については賛成ですか?

立憲民主党・泉健太代表
全党的なクオータ制の導入にはもちろん賛成するし、立憲民主党として独自のクオータ制が実現をできればと党内調整を進めています。議会で取り上げられる課題や体力勝負の選挙スタイルなど、政界は男性中心なのが現状で、女性が選挙に出られる環境を作っていかないといけません。

困窮するシングル家庭や若者は給付で支える

――岸田政権の「異次元の少子化対策」についてどう見ていますか?

立憲民主党・泉健太代表
まず国が投じる予算が圧倒的に少なく、政策は小出しです。岸田総理にとっては異次元でラストチャンスなのかもしれませんが、実際に子育てをしている世代、若い世代からすれば「そんなことを言われても困る」「とにかく安心させてほしい」のが本音じゃないかと思います。

「『とにかく安心させてほしい』が子育て世代の本音」
「『とにかく安心させてほしい』が子育て世代の本音」

――特にいま大きな社会問題となっている困窮するシングル家庭や若者たちに対して、どのような施策をお考えですか?

立憲民主党・泉健太代表
我が党は教育の不安を解消するために、教育の無償化や奨学金を給付型に変えます。若い世代に対しては家賃補助も行います。所得の低い人たちには給付で生活を支える。また人への投資として、教育の無償化とともに社会人のリスキリングが大事なので、子どもを育てながら新しい資格を取れるだけの生活費の支援は特にやっていかないといけないと思っています。

30万人の不登校児に学ぶ環境と居場所を

――いま不登校の児童生徒が30万人となっていますが、この問題の本質と原因をどうお考えですか?また、問題解消のために教育行政は何をするべきだと思いますか?

立憲民主党・泉健太代表
まず私は不登校自体を問題だと思っていません。これは日本で自由を尊重できる社会基盤が整ってきていることだと思うし、より多様性が尊重される社会になってきたことの証明だと思います。しかし30万人の子どもたちに学ぶ仕組みや居場所がまだ整っていないのは問題であって、必ずしも学校に戻すという考え方を取るのではなく、地域や家庭で育っていく環境をより整備していくべきです。

――最近私が取材している中で、小学生が公立の小学校からオルタナティブスクールや一条校でないインターナショナルスクールに移ろうとして、その生徒は行政から「小学校を除籍処分にする」と言われたそうです。

立憲民主党・泉健太代表

チルドレンファーストでなければならないので、小学校に籍を置いたまま他でいろいろ学べることがいいと思います。

日本版DBS・在留特別許可・ライドシェア…

――日本版DBSについてのスタンスを教えてください。

立憲民主党・泉健太代表
子どもに対する性犯罪はあってはならないので、早期に実現すべきだと思っています。いま論点になっているのは、習い事、学習塾のような民間の業種をどこまでカバーするのか。また、いかなる犯罪においても前科が一定期間で消える中で、その人物を子どもに関する職業から永久に追放できるかどうか。これには、たとえばブラックリストをつくる一方で、安全な人物のホワイトリストを作るという考え方もあります。

――今年入管法が改正されましたが、あらためて移民難民問題、特に日本で生まれ育ち在留資格のない子どもたちについてどのようにお考えですか?

立憲民主党・泉健太代表
子どもの在留特別許可は当然の措置であって選別をするべきではないと思います。どんな理由であれ、この日本で生まれ育っている子どもたちもたくさんいる中で、その親が強制退去になったからといって、日本語を話し日本人の友達が大勢いて日本を愛している子どもが一方的に日本から追放されるのはあまりに理不尽です。日本で暮らす様々な国の由来の方々も日本社会に貢献できるという考え方で対処するべきだと思いますね。

ライドシェア導入について超党派の勉強会が立ち上がった
ライドシェア導入について超党派の勉強会が立ち上がった

――最近ライドシェア導入について超党派の勉強会が立ち上がり、立憲民主党では荒井優議員が事務局を務めるなどしていますが、党としてどのようなスタンスですか?

立憲民主党・泉健太代表
「より便利に、しかし安全に」が考え方です。車両や運転手の質が悪ければ事故や犯罪につながるので、ライドシェアの仕組みをいかに安全に構築していくか。この勉強会も100%自由なライドシェアを目指してはいないと思います。事故や犯罪の責任を大きな規模の事業者が負うようにすることも必要でしょうし、一部地域で始まっている事実上のライドシェアについては、柔軟に考えていいと思います。

共通認識は「自民党政権を変えること」

――最後に、次の選挙での議席増に向けてどのような戦略を描いていますか?

立憲民主党・泉健太代表
立憲民主党の仲間は政権交代を目指して、自民党ではないもう1つの極を作るのに取り組んでいます。野党第一党という立場で、各地域で勝利のために努力をしているわけですから、戦い方を一律に縛るつもりはありません。例えば、連合の推薦や支援を受けようと思えば、連合からは「一線を越えれば推薦を出さない」と明示されているので、我々としては党内に周知をして、その範囲で各議員が判断をしていくと思います。

――ほかの野党、共産党や国民民主党との連携は?

立憲民主党・泉健太代表
いまどこかの党と連立政権を組むという話は、少なくとも党としてしてはいません。まずは立憲民主党の地力を高めないといけない。その中で野党各党と様々な協議をしながら、野党議席の最大化を図るということです。「明確に何かを取り組んでいる党は?」と言われたら、それは唯一国民民主党です。前回の選挙で様々な調整をしましたし、それは現在もいきています。共産党は「立憲民主党と政権に入る」とは言っていないと思います。いまの共通認識としては、「国民のために自民党政権を変えなければならない」までですね。その共通の思いの中で、それぞれの政党がどう行動するかが問われている段階です。

「まずは立民の地力を高めないといけない」
「まずは立民の地力を高めないといけない」

一本化ではなく選挙区ごとに情勢判断

――共産党との選挙区の候補者一本化に向けた調整は進めますか?

立憲民主党・泉健太代表
今のところ党として他党の候補者を応援できる状況は生まれていません。我が党が仮に全選挙区に候補者を立てられない場合、他党が候補者をたてるかもしれない。一本化ではなく一人が立っていることを各党が受け止め、「ここには野党候補がいる」と各党が抑制的に考える選挙区は存在しています。各選挙区の情勢を見ながらどう判断するか。そのまま野党同士が突っ込んだら誰も得しない、政治も変わらないと、各党がいかに思うかですね。

――ありがとうございました。

(聞き手:フジテレビ解説委員 鈴木款)

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。