鳥取市内の高校で英語を教える教諭が、イギリスの国際教育機関が優れた教育者をたたえる「グローバルティーチャー賞」で世界トップ50に選ばれた。“教育界のノーベル賞”とも呼ばれるこの賞に、2023年、日本から選ばれたのはただ1人。世界に認められた授業を取材した。

“世界トップ50”に選ばれた松田裕史教諭

鳥取市の県立鳥取西高校、1年生の教室では英語の授業中。教壇に立つのが、“世界トップ50”に選ばれた松田裕史教諭。現在46歳で、教員になって18年目というベテラン教員だ。

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“教育界のノーベル賞”とも呼ばれる「グローバルティーチャー賞」で、日本からただ1人、「トップ50」に選出された。この賞は、イギリスの国際教育機関・バーキー財団が2015年に設立、世界各国の優れた教育者や教育活動に対し、贈られている。

2023年は、世界130カ国から7,000人の応募があり、この中で、松田教諭は上位50人の「ファイナリスト」に選ばれた。日本の教育者では7人目という快挙だ。

独自の英語の授業法「ディープ・アクティブ・イングリッシュ」

松田教諭が評価されたのは、新たに開発した英語の授業法「ディープ・アクティブ・イングリッシュ」だ。

鳥取西高校・松田裕史英語科教諭:
教材に関しては、レッスンのトピックに合った英字新聞やウェブから探すこともあります

世界に認められた授業法「ディープ・アクティブ・イングリッシュ」の教材は、教科書に限らない。教科書で取り上げられた話題に合わせて、英字新聞やウェブサイトの記事を生徒に示し、関連するテーマについて英語で考えさせることで、英語力を高めることを目指している。

授業では、英語で考えることを通じて生徒が新たな価値観に気づき、世界の見方を広げることに重点を置いている。

これまでの授業では、企業のCM動画も使われた。英語で考え、理解し、表現するために、さまざまなものが教材として活用されている。

鳥取西高校・松田裕史教諭:
新たな価値観を見つけ出したり、世界観を広げたり、新しい自分と出会えたりということをゴールとして授業を作っているというのがポイントかなと思います

世界が認めた松田教諭の授業を、教室で体験した。

鳥取西高校・松田裕史英語科教諭:
What is your first impression?
(この写真を見て第一印象は何を感じましたか?)

杉谷紡生記者:
So cool!
(とてもすばらしい!)

この日の授業のテーマは「世界の祭り」。生徒同士がペアになり、教科書に載っている祭りの写真を見て、感じたことや考えたことを英語で話し合った。

そして今度は、松田教諭が“Let’s talk about festival in Tottori.” (鳥取の祭りについて話してみよう)と呼びかけた。ホワイトボードに投影されたのは「しゃんしゃん祭り」など鳥取県内の祭りの写真。これを見ながら、生徒たちが英語で話し合った。身近な祭りがテーマだけに、生徒たちの会話もより活発になった。

45分間の授業のうち、半分以上が生徒たちのディスカッションに充てられ、授業を体験した杉谷紡生記者も、「生徒が発言している時間が長く、あっという間」に感じた。

英語が苦手な生徒からも好意的な声が

松田教諭の授業を、生徒たちはどのように感じているのか聞いてみると、「リーディングのスキルだけでなく、普通の授業では身につかない力がつくというのが魅力でとても好き」、「中学の時は英語が苦手だったが、松田先生の授業を受けてから、成績が伸びて英語が好きになった」など、好意的な声が多かった。

実際に、この授業法を実践してから、英語力の検定では「読む・書く・聞く・話す」4つの技能のすべてで多くの生徒の成績が向上したほか、英語の授業に対する関心も高くなったという。

また、中には松田教諭の授業で取り上げられたテーマについて考えたことが、進路を決めるきっかけになった卒業生もいたそうだ。松田教諭も「予想外の質問が返ってきたりするのを楽しみながら、授業をするのがおもしろい。生徒の英語力が予想以上に伸びたときにはやりがいを感じる」と、独自の授業法に手ごたえを感じている。

世界トップ50を“通過点”に、松田教諭は、英語力だけでなく考える力も伸ばす授業で、これからも生徒たちを新たな世界に導いていく。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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