エサを食べずに“手”で持ってスイスイ…イカのユニークな姿をとらえた動画が、X(旧Twitter)に投稿されている。

(撮影:@ikas9uidcalamar)
(撮影:@ikas9uidcalamar)
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もらった魚持ったまま泳いでるところ

投稿したのは、イカに関する様々な情報を発信している、仂サンチーム(@ikas9uidcalamar)さん。動画は東京・池袋のサンシャイン水族館で撮影したものだそうで、水槽の中をスイスイと泳ぐコウイカの姿が映っている。

このコウイカ、よく見ると触腕(注:イカが獲物を捕らえる際に使用する、左右一対の腕)を使ってエサのキビナゴを掴み、そのまま泳ぎ回っているのだ。

“顔”の前にエサをかかげているようにも見える(撮影:@ikas9uidcalamar)
“顔”の前にエサをかかげているようにも見える(撮影:@ikas9uidcalamar)

触腕でキビナゴを挟み、体の真ん中で持っている姿は、もらったエサを大事に抱えているようにも見える。動画を見たXユーザーからは「お弁当持ってウキウキ」「イカがこんなに可愛いとは思わなかった」などのコメントが寄せられ、4万2000件を超える「いいね」がついている(12月25日現在)。

投稿者は、このイカが魚をつかむところから食べ始めるところまでを撮影していたそうで、「少なくとも5分程度は魚をつかんだままでいた」とのことだ。

当時、水槽には別のイカがもう1匹いて、同じようにエサを与えられていたという。その間も動画のイカは「魚を持ったまま泳いだり着底したりしていた」とのことで、最終的には「水槽の比較的手前で魚を食べていた」という。

エサを持ったまま「迷っていた」理由は…

投稿者は「魚をもらってからしばらく食べず、腕の先で持ったまま泳ぎ回ってるのが、もらった魚を見せびらかして回ってるみたいでかわいかった」とコメント。また「落ち着いて餌を食べられる場所を探しているようにも見えた」とも話していたが、一体なぜこんな行動をしていたの?サンシャイン水族館の飼育担当者にお話を聞いてみた。


――このイカはどんな生き物?

「コウイカ」の名前のように、背中に甲を持つイカです。「スミイカ」とも呼ばれ、墨袋が発達しており、釣り上げた際に大量にスミを吐きます。

魚を持ったまま水槽の端までスイ~(撮影:@ikas9uidcalamar)
魚を持ったまま水槽の端までスイ~(撮影:@ikas9uidcalamar)

――エサを食べずに手に持ったまま泳ぎまわる…この行動の理由は?

基本受け取った後はすぐに食べるのですが、産卵をしているタイミングにエサを渡してしまったので、エサを食べるか、産卵するのか迷ってしまったみたいです。エサを取り合うこともありますが、基本はエサを持ったまま泳ぐことはしません。


――では、これは珍しい行動だった?

珍しい(かなりイレギュラーな)行動です。

(撮影:@ikas9uidcalamar)
(撮影:@ikas9uidcalamar)

――こんな動きをする生き物は他にもいる?

他の生物に奪われるリスクもあるため、基本的に持ったまま長時間移動する生き物はいません。口に入りきらないようなエサを飲み込むのに手間取りくわえたまま移動することはあるかもしれませんが、かなりイレギュラーな例です。


――注目されたコウイカの行動は、今も水族館で見られるの?

コウイカに限らず、イカは産卵後に寿命を迎えます。動画のコウイカも産卵し天寿を全ういたしました。現在、コウイカの展示はしておりません。


――不思議な行動が注目されたイカ。水族館ではどんな風に観察するといい?

エサを触腕を使って一瞬で捕らえて食べる行動や、イカの種類によっても異なる繁殖行動なども見られることがありますので、ぜひゆっくり観察してみてください。

イカは産卵期を終えると死んでしまう生態ということで、「エサを持ったまま泳ぐ」姿は、産卵期という限られた期間、かつ産卵中にエサを渡したという、偶然が重なったタイミングで見られた、珍しい行動だったようだ。

動物の行動にはまだまだ不思議がいっぱいだが、じっくり観察していれば、こんな偶然の瞬間に出会えるかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。