「マンボウ大丈夫ですか?」
水槽の底で横になるマンボウの姿に、心配した来館者からたびたび質問があるのだそう。その声に東京・池袋にある「サンシャイン水族館」の公式X(旧Twitter)アカウント(@Sunshine_Aqua)が動画と共に回答している。
底で寝転がるのが“エサ待ちスタイル”
投稿された約1分の動画を見ると、水槽の底で横になる1匹のマンボウが映っている。

しりビレと背ビレ、そして胸ビレをパタパタと動かしているが、起き上がる様子はなく、一見すると体調が悪いのかと心配になる姿だ。
この様子に、スタッフが水槽前で給餌解説を行なっていると、来館者からほぼ毎日「マンボウは調子がわるいのですか?」と声を掛けられるのだそう。
そんな声に対する水族館からの回答は…
実は、横に寝転がってエサ待ちしているだけなんです・・・。

投稿された動画の続きには、その証拠として、スタッフが忍び足で水槽の上まで行き、マンボウがいる水槽をのぞき込む様子が収められている。

スタッフがのぞくと、水槽の底で端にいたマンボウがゆっくりと真ん中に移動していく。そして、スーッと流れるような動きで体勢を整え、水面に向かってくるではないか。

マンボウは水面まで上がると顔だけを出し、口から水をピュッピュッと吐き出して何かアピールをしている。さっきまで心配していた姿がウソかのように、元気いっぱいな様子なのだ。

このマンボウのエサ待ちスタイルには、「なんか、息絶えそうに見えて怖いよ」「この状態は正常なんだ。結構のんびりしてるんだなー」「可愛いんだか怖いんだか笑」との声が続々と寄せられている。投稿は5万8000のいいね付く話題となっている(10月19日時点)。
エサを心待ちに…視覚でスタッフを感知
スタッフがのぞくと素早くやってきたマンボウだったが、どのようにしてスタッフを感知したのだろうか?また、いつ頃からこのスタイルでエサ待ちするようになったのだろうか?
サンシャイン水族館の飼育スタッフ(マンボウ担当)・上市光之さんに教えてもらった。
ーー投稿された動画のマンボウについて教えて。
名前はありません。性別不明、全長78cm、体長67cm 、魚体重29.2kg(2023年5月27日搬入時のデータなのでこれより大きくなってはいます)。
性格ではないですが、調子が良いときは舵鰭(かじびれ・後ろのヒレ)あたりにかけて斑点(まだら)模様が出現しています(諸説あります)。一方で、あまり調子がよろしくない時は全体的に白っぽい色になっていることがあります。

ーーどれくらいの頻度で、水槽の底で横になっているの?
基本的に毎日です。ヒレをパタパタさせないときもあれば、横になったままパタパタしたりとどちらもありますが、この個体は少しヒレを動かしていることが多いです。
ーー本当にエサ待ちをしている?
自然界と違って、水槽ではエサの時間が3回/日と決まっています。自然界では、いつエサと巡り合えるかもわからないので水族館での暮らしとは大きく異なります。
それもあり、決まった時間にエサがもらえるのを心待ちにしているのもあるかと思います。エサを探す労力は水槽では必要がない状態なので、エサを待っていると考えられます。

ーーなぜ水槽の底で寝っ転がるスタイルなの?
給餌に来たスタッフに気が付きやすいように…かもしれません。もしくは、この個体が横になるのが好きなのかもしれません。マンボウに本心を聞いてみたわけではないので、あくまで予想です。
ーーそもそも、どうやってスタッフが来たことを理解している?
目はいいと思います(よく見えています。ただ、人間のように色がフルカラーで見えているわけではないと考えています)。音も聞き取ってはいますが、一番の要素は視覚だと思います。

ーー寝っ転がってエサを待つ様子、スタッフが来るとすぐにやってくる様子への感想は?
(寝っ転がる様子については)来館者の方に心配をかけすぎないように…の思いでいます…!
そして、水上にやってくる姿に対しては、「安堵」です。本当に調子が悪いこともあったりするかもしれないので「安堵」です。
「最初は心配していましたが…」
ーーいつ頃から、こんな風にエサ待ちをするようになったの?
搬入して1~2カ月くらいかと。2023年の7月ころからでしょうか。最初は心配していましたが…。本当に具合が悪ければ1日3食勢いよく食べるとは思いにくいです。
人間と同じで、どこか調子が優れない人がいたとすると、ご飯が来た瞬間に自力ですぐに起き上がって食べにくるかというと、そうでないのと同じだと思います。

ーーエサ待ち以外でも寝っ転がるの?
自然界では、日光浴をするときに表水面で横になることがあります。水族館ではあまりやりませんが…!エサ待ちor調子が悪いのどちらかな気がします。

ーー投稿が話題となっているが受け止めを教えて。
必ずしもすべてのマンボウが当館のような行動をとるわけではないと思いますので、自然界のマンボウはそうじゃないということはご理解いただければと思います。また、都市伝説が多いマンボウですので解釈の違いなどがでてこないかは心配しています。
「マンボウ大丈夫ですか?」
— サンシャイン水族館 (@Sunshine_Aqua) October 7, 2023
最近 #マンボウ が水槽の底で横になっていることが多く、お客様からよく質問をいただきます。
実は、横に寝転がってエサ待ちしているだけなんです・・・。
その証拠に忍び足で水槽上まで行って水槽をのぞくと・・・。
その後の様子は動画をご覧ください。… pic.twitter.com/sB2MJ8nLW0
なお、サンシャイン水族館では、1階「マンボウとの出会い」水槽内で投稿動画のマンボウ1匹を飼育している。マンボウにはエビやイカをミンチ状にした団子を1日3回与え、週に1・2回ほど潜水清掃中にダイバーが水中で与えることもあるという。

同館では水槽底で横になっていることも多いそうなので、寝っ転がっているのを見かけても、心配せずに温かく見守ってほしい。