災害現場で行方不明者を捜索する「災害救助犬」。においの“かぎ分け”によって被災者を見つけ出す能力がある。実は、日本で災害救助犬を持つ公的機関は自衛隊のみ。訓練と育成は民間が担っているのが実情だ。
災害救助犬を育成する人たち
大雨や地震などの災害発生時に、行方不明者を捜索する“災害救助犬”。レスキュー協会を通じて自治体からの要請を受けるなどし、救助犬が現場に出動する。この活動を主に担っているのは、消防など公的機関でなく民間の人たちだ。
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救助犬の育成や運用に取り組む佐賀・神埼市の井本浩之さんは、妻の美智子さんとゴールデンレトリバーのルキア、ラブラドールレトリバーのボーナ、シェパードのサーシャの3頭を育て共に暮らしている。
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井本さんは大学教授、美智子さんは小学校の教諭として平日は仕事をし、週に1回ほど犬たちと訓練に励む。
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井本浩之さん:
今(犬が)ここで止まった。これは理由がある。人間を待っている。そこから先は危険だから行ってはいけないと人間を待っている
井本さんは2023年5月、災害救助犬の育成や運用などに取り組む任意団体「サーチ&レスキュードッグ九州」を結成。現在9頭が活動している。7月に唐津市浜玉町で起きた土砂崩れの現場にも仲間と共にいち早く出動し、行方不明者の捜索にあたった。
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井本さんが訓練を始めたのは25年前。「一緒にキャンプに行けるような犬を育てよう」と思ったことがきっかけだ。飼いやすい犬を目指すうちに「何か人の役に立てれば」と考え、災害救助犬の育成に取り組むようになった。
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最も厳しい審査とされる国際救助犬連盟の資格試験を受け合格したのは、九州では井本さんの犬3頭のみだ。
“とどまっているにおい”に反応
訓練の時間。3頭はしっぽを振って大喜び。たくさん褒められる楽しい時間と認識している。
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警察犬が犯人など“特定のにおい”をたどるのに対し、災害救助犬は“特定のにおい”がない中で不特定多数の行方不明者を探す。
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井本浩之さん:
犬たちは“とどまっているにおい”と“漂っているにおい”、この2つのにおいの違いがわかる。“とどまっているにおい”に反応するように訓練を重ねているので、例えばがれきの中にうずくまっている人がいれば、そのにおいを感知して知らせてくれるというのが救助犬の特徴
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この日、団体のメンバーは大町町にある日本レスキュー協会の佐賀県支部「モアワン」に集まった。訓練には犬を操作するハンドラーだけでなく隠れる人、アドバイスをする人など複数の参加者が必要なため、佐賀や福岡を中心に集まりメンバーで協力して行う。
“やんちゃな犬”にこそ秘めたる力が
まずは基礎から。人を見つけたら吠える練習だ。
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少しずつ板を下ろして姿を見えなくすることで、最終的にはにおいだけで閉じ込められた人を見つけられるようにする。
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次は広域捜索。山や草原で行方不明になった人を探す訓練で、とどまっているにおいを嗅ぎ分け隠れている人を探す。
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また、がれきの中に埋まったり閉じ込められたりした人を探す訓練も。時には、がれきのある訓練施設を求めて関西まで出向くこともある。
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被災現場は大きな音や白煙など普段聞いたり見たりすることがない特異な状況。それでも過敏に反応せず集中力を保つことが求められる。さらに、においから情報を得て自分で考えて捜索する力も必要だという。
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井本浩之さん:
やんちゃで家庭で飼うのが難しいといわれる犬の方が、実は秘めたる力を持っていて、正しい訓練をすれば救助犬や警察犬になれる可能性が非常に高いと思う
タフさや学びが必要なのは犬だけではない。
井本浩之さん:
現場に出たときに何が必要かというと、(犬を操作する)ハンドラーが犬の反応を見分けて犬がいま何を考えているのか、そういう犬の反応をしっかり読み取ることができるという勉強をしなければならない
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犬とコミュニケーションをとれるようになることはもちろん、二次災害にならないよう安全に関する知識や道具の備え、体力づくりなど、犬を操作するハンドラーも習得しなければならないことはたくさんある。
民間では救助犬の運用に限界
一方で、活動には課題も。日本で救助犬を持つ公的機関は自衛隊のみ。通常の仕事と両立している民間のハンドラーは、資金面、安全面など運用に限界を感じている。
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井本さんは今後、公的機関を含め多くの人にこれまで培ってきたことを伝えていきたいと話す。
井本浩之さん:
継続するためには仲間をつくって仲間が育てていくのと同時に、20数年していて一定のノウハウはあるので、それを公的な機関の人たちにも伝えていく。私たちが動けるのもそんなに長くないので、やはり誰かに伝えていくのが希望です
(サガテレビ)