23歳の藤巻美月さん。
2023年4月、東京から北海道浦幌町にやってきた。

元々、北海道暮らしに憧れがあった藤巻さんが浦幌町と出会ったのは2年前。

きっかけは、北海道東部の魅力を伝えようとSNSで発信されていた「#道東discover」の投稿を見たこと。

運営元でガイドブックの制作などを手がけるドット道東に連絡したのがはじまりだった。

「本と出会える場所を」23歳女性の挑戦

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移住の荷物はスーツケース、一つだけ。

移住の先輩、工藤安理沙さんが駅まで迎えに来てくれた。

「色々な方のサポートがあったので安心して来ることができた」(藤巻さん)

移住者やUターンする若者が増加する浦幌町

帯広市と釧路市の間に位置する浦幌町。

人口4200人の小さなまちだが、近年、移住者やUターンする若者が増えている。

藤巻さんもドット道東の誘いで町で書店イベントを開き地域の人と交流するうちに、移住したいという気持ちが強くなったという。

「浦幌町の人は心の距離が近くてホッとする空気感があって、そこに惹かれた」(藤巻さん)

「知り合いや友達が増えれば住みたいとなった時に決断しやすくなる。そういう場をたくさん作りたいと思っている」(ドット道東 野澤 一盛 さん)

家族を説得し、移住の決断をした藤巻さん。
町内のゲストハウスで働きながら、ブックカフェを開く準備をすることにした。

ドット道東のメンバーで、ゲストハウスを経営している小松輝さんが町内で商業施設を作る計画をしていたときに藤巻さんと出会い、声をかけたのだ。

「(浦幌町には)外から来た人が街歩きをして店に行けるような場所が少ないと思っていた。ちょうど建物を買うタイミングで藤巻さんが浦幌町に来ていたので、声をかけた」(リペリエンス 小松輝 社長)

ブックカフェ開業までの道のり

ブックカフェとなる建物は、築50年の閉店した金物店。

小松さんの会社が建物を買い取り、改修のほとんどを自分たちで行う。

藤巻さんたちの力になりたいと町内外から多くの人が手伝いにきた。

「(書店を開くのが)夢だったと話を聞いて、ミッキーさん(藤巻さん)らしいお店ができるんだろうなと思った。早く行ってみたい」(改修の手伝いにきた大学生 藤田 奈央 さん)

10月、建物の改修が終わり、商品となる本が届いた。
新刊は全て藤巻さんが選書し、小説やエッセイ、短歌や詩集など200冊以上にのぼる。

「鳥の目のように視野が広がる時間を」

「売れ筋や人気本も大事だが、自分がいいなと思った本を並べている。この本(小野寺 史宜『ひと』)は北海道に移住する前に読んだ本。『何もかも諦めなくていい自分がやりたいようにしていいんだ』ということが書いてあって背中を押された本だった」(藤巻さん)

店舗の名前は「鳥の目のように視野が広がる時間を」という意味を込め「トリノメ商店」と名づけた。

「忙しい日常でもちょっと一息つける。そういう視点を持てるようなお店になったらと」(藤巻さん)

そしてオープン当日。
店を待ち望んでいた町民や藤巻さんを応援してきた人たちが続々と訪れた。
本をじっくりと選ぶ人、カフェで会話を楽しむ人。

想像以上の人出に、藤巻さんは大忙し。

「手が足りない。ありがたい。自分で選んで仕入れた本が売れておすすめした本を買ってくれた人もいて、幸福感でいっぱい」(藤巻さん)

「本が好きなのでゆっくり見たいという気持ち」(訪れた客)

「大人たちが憩いの場として開いてくれたのは、すごくいいなと思う」(訪れた客)

藤巻さんの挑戦は続く

「北海道で本に関わる仕事をしたい」その第一歩を踏み出した藤巻さん。
その様子は充実感に溢れていた。

「2年前に勇気を出してよかったなと感じている。自分で選んだ本が売れて、人に本が渡っていく仕事がしたいと改めて気づいた。本を取り扱って色々な人に提供できるお店にしたいと思っている」(藤巻さん)

藤巻さんの挑戦ははじまったばかり。
理想の店を目指して、浦幌町で歩み続けている。

北海道文化放送
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