国が2022年10月からスタートした「産後パパ育休制度」は、子どもが生まれてから8週間以内に最大4週間、育休を取得することができる制度だ。こうした中、愛媛県は2023年度から新たな子育て支援のプロジェクトを打ち出した。男性の育休取得率をアップするために、いま愛媛でできることとは?

男性の仕事と育児の両立を後押し

10月16日に愛媛・松山市内で、県内の民間企業の経営者や人事担当者などが県主催のセミナーに参加していた。講師が、管理職の意識改革など、男性の育休の必要性を説明していた。

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父親支援活動NPO法人の男性講師:
男性も家庭で活躍するっていうのがこれからの時代のトレンド。パパが家のことをちゃんとやれば、ママの顔は変わっていくわけ

県が2023年度からスタートさせた、男性の仕事と家事・育児の両立を後押しする、「えひめスクラムプロジェクト」。

専門の講師などによる男性の働き方改革をテーマにした企業向け研修会をはじめ、父親たちが家事や育児のスキルを学ぶワークショップなども定期的に実施している。

1歳・4歳の子どもの父親:
みんな同じことで悩んでたりするっていうので、安心できたなと思いました

国が行った調査では、夫が休日に家事や育児を担当する時間が増えるにつれ、第2子以降の出生率が大幅に増加する傾向がみられたそうだ。

しかし愛媛の現状は、6歳未満の子どもがいる世帯で女性の1日の家事・育児の時間が7時間25分なのに対して、男性は約5分の1の1時間29分。

また、大手ハウスメーカーが育休の取得日数や家事・育児に参加した時間、参加したことによる幸福感などを指標に、「男性の家事・育児力」を数値化した都道府県ランキングでも愛媛は40位だった。
一方、ランキングの1位は高知県。高知県が官民協働で取り組んでいる効果などと分析されている。男性の家事・育児への参加は今後の愛媛の少子化を左右する重要な課題だ。

10月15日に県立とべ動物園に子どもと来園しているお父さんに、男性の育休について意見を聞いた。

1歳のお父さん:
会社の人が足りてないっていうのもありますし、他の周りの人も、今まで取ってないっていうのもあって、なかなか取りにくい雰囲気はありますね

水産業を営む4児のお父さん:
公務員の方とかはちゃんと(育休を)取ってやってるのかなって感じ。うちみたいに田舎でやってるような感じのところでは取るような流れになっていない

育休を「もう一回やりたい」

男性の育休取得を後押ししようと活動している人が県内にいる。松前町で育児教室や講演会など父親支援活動のNPO法人を運営する伊藤悟志さん、40歳。

家の壁には子どもの写真や、家族の写真がずらり。

伊藤悟志さん:
育休中の写真ですね。4人で記念に撮りました。懐かしいし、もう一回戻れるなら、もう一回(育休を)やりたいですね

県内の民間企業で機械オペレーターをしている伊藤さんは、今から10年前、長女が産まれたときに2カ月間の育休を取得。2人目の長男が産まれたときには1年間育休を取った。

男性が(育休を)取ってよかったと思う点を聞いてみると…。

伊藤悟志さん:
男性が必要とされるのっていうのは、産後うつになりやすい時期に、妻のサポートができたというところ。妻が一人で育休を取ると、子育てと家事がついてくるんですよ。そもそも家事を完璧になんて無理だよねって。それが外部から言われたんじゃなくて、自分で感じたというのが強かった

夫婦がお互いを思いやり一緒に子育てする時間を増やせば、子どもたちにも自然と「愛着」と「信頼関係」が生まれると、伊藤さんは話す。

妻・珠里さん:
男性も女性も関係なく、親っていう基準は一緒なので、外で働いている仕事は休んでるかもしれないですけど、家で何してるの?って言われたら、“育児と家事”という仕事をしてるじゃないですか。「育児就業」って感じです

目指すは“取って当たり前”の社会の実現

厚生労働省の2023年7月の調査によると、2022年度、全国の男性の育休取得率は、2021年度よりも3.16ポイント高い17.13%と大幅に増加し、過去最高となった。年々増加傾向だが、政府が目指す2025年度に50%の目標にはまだまだ及ばない。

こういう取り組みに、男性が積極的に参加するのは非常に大切になってくると伊藤さんは話す。

伊藤悟志さん:
積極的に参加する、そして、もう一歩先にいくと、それをするのが“当たり前”。上司が「なんで休んでないの?」っていう社会よくないですか

2022年4月の法律改正で家族の妊娠を申し出た労働者に対し、企業は育休制度の内容などを知らせ、育休を取得する意向を確認することが義務化された。

県のセミナーの男性参加者も「働きやすさとかっていうことを考えたら、従業員からしても、(男性の)育休を取れた方がいいんじゃないかな。育休まではいけてないんですけど、有休を使いやすくする取り組みはしてるところですね」と話した。

伊藤悟志さん:
もちろん、仕事は大事なんです。その人しかできない仕事もありますよね。ただ“組織”としてはその人がいないと(仕事が)回らないというのはかなりのリスクなんですよね。上司たちが、子育てをマイナスだって捉えるんじゃなくて、社会人として、人間として、成長できる機会を、「なぜ(育休を)取ってないの?」というくらいの社会を望んでいます

(テレビ愛媛)

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