水濡れや凍った物にも文字が書ける“研究現場向け”の筆記具が登場し、SNSでは一般の人々からも注目を集めている。

(出典:コクヨ)
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それがコクヨ株式会社が11月15日に発売した「リサーチラボペン」で、研究所の悩みに対応したマーカーペンだという。

企業や大学などの理系の研究所では、実験に使う容器に手書きで情報を書き込むことが多々あるが、これまでは次のような問題があったそうだ。

「アルコールなどの薬品により、容器に書いた文字が消えてしまう」
「マイクロチューブのフタなど、狭いスペースにも情報を書き込みたい」
「結露した面や凍結した面に文字を書き込みたいが、滲んでしまう」

アルコール耐性があり速乾性に優れたインクを採用

そこで「リサーチラボペン」はアルコール耐性があり、水と混ざりにくく速乾性に優れたインクを採用。ペン先を細くして小さな文字も書き込みしやすく工夫し、結露した容器や凍結した容器にも筆記が可能になったという。

(出典:コクヨ)
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なお、一般的なプラスチックやガラス、金属にも書くことができるが、大量の水がついているところや水中の筆記は不可能。

また、光沢の“ありなし”など表面状態によっては筆記性能が変わるため注意してほしいとしている。

(出典:コクヨ)
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「リサーチラボペン」は約0.6mmの細字が書ける「黒」と「赤」の2種類で、価格は1本360円(税抜)。

ペン本体が銀色なのは、研究現場で使われている黒や白い天板のテーブルの上で視認しやすいからとのことだ。ちなみに公式サイトでは使用上の注意として、「かすれたり、インク色が薄くなったりする」ことを理由に、赤い太字で「縦置きでの保管は厳禁」としている。

公式サイトの注意書き(出典:コクヨ)
公式サイトの注意書き(出典:コクヨ)

またX(旧ツイッター)ではこのペンについて「研究者でなくとも欲しくなる」など、様々な人の意見が投稿されている。

・使う予定はないんだけどなんか欲しい
・学生時代に欲しかった
・汗かいたペットボトルのラベルにもまったく問題なく書けました
・水族館(特に獣医さん)も注目してます
・魚河岸とか漁業関連でも重宝されそうかも?

実はコクヨではこれまで「紙の変色原因となる酸を抑えたテープのり」や「研究記録用ノート」など研究現場で役立つ様々な文具を発売している。今回の「リサーチラボペン」もその一つにラインアップされている。

これら研究者向け商品はどんな物がヒットしているのだろうか? ペンを開発することになったきっかけは?コクヨの担当者に聞いた。

アルコールで文字が消える事が課題だった

――これまで研究の場ではどんなペンが使われていたの?

一般的な油性ペンを使用されているケースが多いです。そのため、アルコールで文字が消える事などが課題でした。

例えば、細胞を培養するシーンでは、空気中や手につく細菌やカビが培養フラスコの中に入らないように何度も何度もエタノールで消毒します。その際、一般的な油性ペンですと筆記内容が消えるなどのトラブルが発生してしまうため、油性ペンで書いた上からテープを貼るなど手間をかけたりされていました。

リサーチラボペンで、テープを貼る手間が省けるなど、少しでもお役に立てる事が出来たら幸いでございます。


――なぜ、研究者向けのペンを開発することになった?

文具の販売は学生やオフィス向けが中心ではございますが、残念ながら少子化やペーパーレス化により文具市場全体は減少しております。また、文具業界でも 高付加価値品と低価格品の「二極化」が進んでおり、コクヨが得意とする機能と品質に優れた商品をどこに届けるのか、ターゲティングが課題になっていました。

そこで、文具を利用する現場をマーケティングし、成長性と高付加価値品が求められる市場として「研究所での文具使用シーン」に着目しました。既に発売している研究所向けのノートやラベルの売上が良いという点も着目要因でした。

実際に様々な研究現場にお伺いする中、文具を工夫して使うシーンを沢山拝見しました。その一つが、油性ペンで書いた文字の上にテープを貼るシーンでした。アルコールで文字が消えるという明確なニーズがある事が見え、ペンの開発に至りました。

合わせて、研究者をスモールマスと捉え、既に発売しているコクヨの文具を研究者の使用シーン視点で、PR内容を変え提案する取り組みもスタートしております。

(出典:コクヨ)
(出典:コクヨ)

――研究現場向け文具でのヒットアイテムを教えて。

最大のヒット商品は「リサーチラボノート(※編集部注:研究記録用ノート)」になります。実験データやアイデアを随時記録するノートで、研究成果を知的財産権として保護する際の重要な証拠資料にもなります。

2005年に発売以降、長く研究者の方にご愛用頂いておりまして、昨年も10万冊/年以上を販売しております。

また、非常にニッチではございますが、研究備品であるマイクロチューブに貼り付けるラベルも、研究者の方から御礼を頂くなど、好評を頂いている商品でございます。

ラボ向けに開発された特殊ラベル(出典:コクヨ)
ラボ向けに開発された特殊ラベル(出典:コクヨ)

――なぜ「リサーチラボペン」は縦置き保管が厳禁なの?

色材に顔料を用いており、「沈降」という顔料が重量で下側に集まる現象が起こります。このため縦置き保管されると、ペン先が上向きの場合はペン先部に顔料が少なくなって、インクが薄くなります。

また、ペン先が下向きの場合は、ペン先部に顔料が多くなってインクが濃くなり、長期間の保管の場合は顔料が詰まり書けなくなることがあります。このため店頭でも横向きでの保管をお願いしております。

日常用途もOK「屋外での作業にも適しております」

――「リサーチラボペン」は日常で使ってもいいの?

日常用途にも使用可能です。本商品は水濡れ面への筆記ができ、色材に顔料を用いており、色褪せ、耐候性にも優れている為、屋外での作業にも適しております。


――「リサーチラボペン」は一般的な店でも購入できる?

研究者向けという事もあり、一般的な店舗への展開を予定出来ていなかったのですが、X(旧twitter)での大きな反響を受けまして、今後販売拡大を検討させて頂く予定でございます。現在は、Amazonやヨドバシ.comにて販売しております。

(出典:コクヨ)
(出典:コクヨ)

研究の役に立つだけでなく、ちょっといいペンを手に入れたい欲求は多くの人にあるのではないだろうか。水濡れに強いこのペンなら暮らしの身近なところでも役立ちそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。