「鮭」の字の「圭」を分解すると十一十一になることから、11月11日は「鮭の日」。秋鮭が市場に並ぶシーズンの今、SNSではある“鮭グッズ”が話題になっている。

銀色に輝くウロコに包まれた胴体に細かい筋の入ったヒレ。かぎ針のようなカーブを描いた鼻先。口の中には歯も生えている。また、小さい鮭には迷彩のような模様がある。

そしてお腹にはファスナー。実はこれ、フィギュアでもおかしくないほどリアルな“鮭ポーチ”なのだ。

中にはもちろん文房具などを入れることができ、しっかりポーチとして活用できる。ただ、お腹のファスナーを開けて出す様子は、まるで鮭のお腹からイクラを取り出しているかのようなシュールな光景となりそうだ。
このポーチを見たX(旧Twitter)ユーザーからは、「めちゃくちゃリアルですね」「いくら詰めたい」「おいくら?って言いながらここから赤い財布出したい」などとコメントしている。
「鮭に見えないものは売れません」
この鮭ポーチを監修・販売しているのは、北海道にある鮭と淡水魚をテーマにした水族館「サケのふるさと 千歳水族館」だ。

種類はメタリックな「銀毛(ぎんけ)」と、迷彩のような模様の「ブナ毛(け)」の2種。サイズはそれぞれに、40cmの大(税込1760円)と28cmの小(同1200円)がある。
ポーチに込めたこだわりやどのような使い方があるのだろうか?同館の菊池基弘館長に聞いてみた。
――なぜ鮭のポーチを作ったの?
当館では売店が出来た当初は鮭のグッズを扱っておらず、お客様から鮭グッズはないんですか?とよく問い合わせをいただいていました。それで、鮭のグッズを増やしていこうと考えていたところ、グッズ制作会社さんから「鮭のポーチを作ってみませんか?」と提案いただいたんです。
その会社では以前にも鮭型のポーチを他社で作られた経験があったのですが、「うちの水族館でやるならば、鮭に見えないものは売れません。それでも付き合ってくれるのであればやりましょう」という条件に同意いただいたので作り始めました。2019年の春頃に作り始めて、2020年1月に販売を開始しました。
ポーチはオスをモデルに制作
――どんなところにこだわったの?
まず、フォルムですね。例えば、横から見た時の“鼻曲がり”のカーブ具合や、背中の盛り上がり、ヒレの位置などです。実はこの鮭ポーチはオスなんです。メスはもっと丸っこくてツルッとしたフォルムなので、オスのほうが鮭の力強さやカッコよさを表現できるのではと考え、オスにしました。

そして、一番こだわったのは「ブナ毛」の色です。「ブナ毛」は産卵のために川に帰ってきた成熟した鮭のことで、この時期にだけ出る独特の模様があるのです。それを再現するために、千歳川の「ブナ毛」の写真を何枚も送って、それをもとに何度もカラーリングを修正してもらいました。
――では「銀毛」はどんな状態の鮭なの?
「銀毛」は海にいる時の未成熟の鮭のことで、ウロコが銀色をしています。私たちが普段食べている鮭は沿岸の定置網で獲るため、銀毛に近いものです。
本来、「銀毛」と「ブナ毛」は顔つきや体つきが違うのですが、実は鮭ポーチはどちらも「ブナ毛」の形です。本当は「銀毛」独自の形も作りたかったのですが、制作会社さんに「さすがにもう一つ型は起こせない」と言われてしまったので、今度は私たちが折れて「ブナ毛」の形で「銀毛」のカラーリングにしました。もちろん銀毛の色にはこだわっています。
でも、蓋を開けてみたら「銀毛」のほうが圧倒的に売れているので、何とも言えない気持ちになりました(笑)。
マヨネーズケースにした人も!?
――使い方のアイデアを教えて。
以前行った鮭ポーチの使い方アイデアコンテストでは、ペンやスマホや鍵入れとして使っている方のほかに、ルアーケースにしている方もいらっしゃいました。中でも衝撃的だったのはマヨネーズケースですね。腹を絞るとマヨネーズが白子のようにピューッと出るという…オスならではのアイデアですね(笑)。
また、当館で鮭ポーチを買って、そのまま肩に背負って機内に持ち込む方もいると聞きました。相当目立っているみたいですよ。
――SNSで反響があったことについてどう思っている?
発売したのは2020年の1月なので、「なぜ今になって?」と不思議に思いつつ、話題になるのはありがたいと思います。海の鮭と川の鮭は色や形が違うことなど、この機会に普段召し上がる鮭の生態や種類に思いをめぐらせていただければうれしいですね。
――最後に、千歳水族館の見どころを教えて。
当館では、鮭の仲間をはじめ約100種類の淡水に棲むいきものをご覧いただけます。なかでも一番の特長は、「水中観察ゾーン」です。このゾーンでは、当館のすぐ横を流れる千歳川の水中に面した窓から自然のままの魚たちを見ることができます。秋には千歳川を遡上する鮭の群れや、冬には鮭の産卵を見ることもできます。空港からも近いので、ぜひ立ち寄ってみてください。

リアルな鮭ポーチは水族館のこだわりが詰まった学びにもなるグッズだった。12~1月は鮭の産卵シーズンだという。千歳水族館の「水中観察ゾーン」からも、「ブナ毛」の模様になった鮭が産卵する様子を見ることができるかもしれない。
(画像提供:サケのふるさと 千歳水族館)