猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。全世界の感染者数が1,200万人を超え、東京の1日あたりの新規感染者も200人を超える日が続いているが、都や政府は過去の感染者数とは死者・重症者といった中身が異なると説明している。これをどうとらえるべきか。その先のワクチン開発への見通しはどうか。
今回の放送では、橋本厚労副大臣、森下大阪大学大学院臨床遺伝子治療学寄付講座教授らウイルス研究・ワクチン開発それぞれの専門家を迎え、ワクチン開発を中心に第2波に向けたあるべき対策について掘り下げた。

大阪大学チームはヒトへの治験開始

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長野美郷キャスター:
ワクチン開発の現状について。承認前の臨床試験(治験)には3つの段階があるが、国内ワクチン開発の進捗状況は。

橋本岳 厚生労働副大臣:
1〜2月の段階では「ワクチンなんていつできるのだろう」という話をしていたが、7月の現在では具体的な話になっておりありがたい。安全で有効なワクチンを期待したい。

反町理キャスター:
森下さんの携わるDNAワクチン治験状況について。低用量群と高用量群に分けて投与しているが、この違いは?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
DNAワクチンの投与量で効果が違う。低用量で効果が大きければ多くの方に投与できるが、効果が小さければ高用量にして様子を見る。また、2週間ではなく4週間間隔での投与についても見ていこうと。ひとまず第1ステージをクリアしたところ。

反町理キャスター:
動物実験をクリアし、人間に対しての治験に?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
もちろん。対象とする動物含めガイドラインが決まっている。日本のワクチンではネズミが対象だが、安全性を重視し追加でサルなどにも行っている

反町理キャスター:
動物に対しても低用量と高用量に分けて行う?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
行いましたが、打つ量がネズミと人とは異なってくるので、そのまま同様にとはいかない。

反町理キャスター:
抗体ができているか。ウイルスが入ってきたときにそれがバリアになるか。そして副作用が出ていないか。この3つをオールクリアしたという理解でよいか?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
詳細は論文にしなければならずここでオープンにはできないが、そのようなことを厚労省に届け出て、ヒトへの臨床試験をできる次の段階に進んでいる。諸外国の進み方と同じ。

動物実験では効果が見えにくい…

森下竜一 大阪大学大学院臨床遺伝子治療学 寄付講座教授

長野美郷キャスター:
例えば、後発的にタイムラグを経て出る副作用があるとしたら、どこまでの期間を見て治験完結といえるのでしょう。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
ワクチンで作った抗体が不十分ならばかえって悪化するかもしれないのだが、これは残念ながら、事前にはなかなかわからない。抗体ができるまでの安全性を見る治験と、1年などの期間にわたってみる治験がある。
副作用に関していうと、ワクチンごとに副作用も効果も違う。ワクチンだから皆同じ、ではない。今回も多種多様の開発が行われており、このワクチンに効果があるから、あるいは副作用があるから、次のワクチンにもあるというわけではない。ワクチンを一般の方にどう打っていくかをしっかり議論し、慎重に進めていきたい。

反町理キャスター:
ネズミの実験では、抗体ができて、感染したときに重症化しないという効果なのか。それとも平気でピンピンしているという効果なのか。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
難しいのはそこ。エボラ出血熱ならば、ネズミは死んでしまうからわかりやすい。しかし今回、ネズミにウイルスを感染させても変わらない。現状、ヒトで起こるような症状が出るモデルがない。厚労省も研究を支援しているが、効果のわかる動物モデルを作っていく必要がある。

橋本岳 厚生労働副大臣:
咳するネズミなど見たことがないですよね。人間全員に症状があるわけではないですし。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
サルに打っても症状が出ない。(ヒトの場合高齢者に症状が出やすいが)おじいさんの猿もなかなかいない。

反町理キャスター:
効果を見るにあたっても、人間の治験が勝負になっていくと。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
アメリカのFDA(食品医薬品局)もWHOも、世界中がその基準に沿って進めている。

反町理キャスター:
治験を受ける30人はどのように決める? 低用量群・高用量群どちらに入るかというのは。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
受けるのはボランティアの方当然安全な低用量からスタートし、高用量へ。ここではプラセボ(偽薬)を用いた治験を行い、本当に効いたかどうかを見る。また重要なポイントとして、全員にPCR検査と抗体検査を行った上で治験を行うので、できた抗体がDNAワクチンの効果であるとはっきりわかる。

武漢型ウイルスはもう収束、現状対応するのはヨーロッパ型の1種類

長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター

長野美郷キャスター:
ウイルスが変異しているという話もある。ワクチンは変異後のものにも対応できる?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
大きく変異すれば作り直しになる。ただ基本的には、遺伝情報があれば1か月で作り直せる。また、大きな変異は起こりにくい。今回も、武漢で流行したものとヨーロッパで流行したものの間で1か所の変異が見られるが、これは問題ない。

反町理キャスター:
ウイルスがいくつか変異したとき、武漢型とヨーロッパ型など全部に対応できる?

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
大きな変異が起こり3〜4種類の新型コロナウイルスが併存する、というシナリオが最悪。しかし現状の流行は実質、ヨーロッパ型の1種。ダイヤモンドプリンセス号で蔓延したウイルス(武漢型の亜種)は、日本にはもうない。完全収束した。副大臣が苦労されたが、あの封じ込めは大成功したんですよ。

橋本岳 厚生労働副大臣

橋本岳 厚生労働副大臣:
ありがとうございます。

反町理キャスター:
できたワクチンは、100%全員に効果があるのか。インフルエンザワクチンも3〜4割とも言われる。その数字については。

森下竜一 大阪大学大学院 寄付講座教授:
インフルエンザ並であればある程度対処できると考えられるため、目標は50%。ただ、抗体がなくても自分の体の中で抗体を作り出す能力を含め、トータルで見なければいけない。

ワクチン投与の優先順位を考える段階に

増田道明 獨協医科大学医学部教授

反町理キャスター:
感染後のための薬と、感染前のためのワクチンの開発のバランスについて。

増田道明 獨協医科大学医学部教授:
薬は理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」を使い、たんぱくの構造の結合シミュレーションを行っている。効果が期待できる薬の候補が数十種類あがってきている。今後治験のボランティアにご協力お願いし、というプロセス。ワクチンだけ・薬だけではなく、両輪を回す形で進めていくこと。

橋本岳 厚生労働副大臣:
ワクチンにはもちろん、効果と安全性を期待する。そして、できたときにどんな方から打っていくかを考え始める時期。医療従事者は打たないといけない。妊婦さんや既往症がある方を先に打つかというのは、社会的コンセンサスの問題。議論を始めていかなければ。

(BSフジLIVE「プライムニュース」7月9日放送)