近年、野生動物が田畑に侵入し、農作物を荒らす被害が問題となっている。こうした中、サービスロボットメーカーのテムザック(京都市)が、新たな害獣対策ロボットを宮崎・延岡市内にある畑などの圃場(ほじょう)に設置し稼働させた。

イノシシなどの害獣対策ロボット「雷鳥3号」は、夜間に圃場に侵入した害獣を検知。圃場周辺でくみ上げた水を高圧にした上で対象物に向けて放水する。
害獣を自動で検知し放水するため、夜間の見回りや遠隔監視など人手をかけた対策を行う必要もなくなるという。また、農作物の被害を防止するだけでなく、昨今、大きな問題となっている野生のクマを追い払うことにも応用できる可能性もあるとのことだ。
開発のきっかけは同社がイノシシの被害を受けたことだ。テムザックでは今年の春から延岡市でロボットを活用した米粉用の稲作を進めていた。圃場で稲穂が順調に生育していたものの、直前でイノシシに食べられてしまったというのだ。そのため、害獣対策に効果が期待できるロボットを急遽開発することを決定し、約10日という短期間で「雷鳥3号」を完成させたという。

「雷鳥3号」は11月11日に設置したばかりのため、効果についてはまだまだ検証の段階だという。そしてこのロボットが、近年問題となっているクマの対策にも応用できるのであれば期待したいところだ。
では、雷鳥3号は今後、どう進化していくのか?開発で苦労したことと合わせて、テムザックの担当者に詳しく話を聞いてみた。
センサーで検知し追従して放水し続ける
――そもそも延岡市はどんな害獣が出没する地域なの?
延岡市内の我々の田んぼではイノシシが出没しましたが、他にどんな害獣がいるかについて詳細は不明です。
――クマが出没することもある?
弊社の田んぼではまだクマは出たことはありません。九州にはクマはいないと言われています。
――イノシシやクマは水に弱い?
水に弱いかどうかは不明ですが、センサーで動きを検知し、追従して放水し続けることで追い払います。
――間違って人に放水してしまうことはない?
現状のプロトタイプでは、夜間のみ対象としており、人が近づかない時間帯に動作するようにしています。今後は、AIで人や害獣を識別する機能を搭載する予定です。
将来的には小型化やAI搭載
――雷鳥3号ということは、1号と2号もあった?
「雷鳥1号」は雑草抑制ロボット(α型)と遠隔監視ロボット(β型)です。「雷鳥2号」は収穫ロボットで開発中の為、未発表です。

――開発する上で苦労した点は?
イノシシが田んぼに出てから開発を開始したため、開発期間が短いことが一番大変でした。10月頃から開発を開始し、実働でいうと10日にも満たないくらいで完成させました。
――今後、雷鳥3号を設置する場所は増えていく?
まずは実証を行い、効果を確認します。来年度にはもっと小型化して設置しやすくしたり、AIを搭載し、人・害獣を判別して放水、どんな害獣がきたかデータ収集する仕組みを追加し、改良を進めて、設置場所も増やしていきたいと考えています。
まだまだ実証段階とのことだが、今後は小型化やAIを搭載するなどして進化させるとのことだ。社会問題ともなっている害獣対策の解決に貢献してほしい。