11月14日、長崎・南島原市の漁師の男性が見せてくれたのは大きく穴が空いた“漁の網”。

漁師歴約50年:
こんな感じで破られる。
魚がかかってるやつなんかをかんでる、頭から。

この記事の画像(15枚)

別の網には、人間がくぐれてしまうほどの大きな穴も。
この被害をもたらしたのは…イルカです。

「網を引っ張って魚を無理やり…」何十年も続く漁業被害

有明海周辺には、以前から野生のイルカが住みつき、現在は200から300頭近くいるといいます。
実は今、漁業関係者はこのイルカたちに頭を抱えているのです。

漁師歴約35年:
網にかかった魚を食べるもんだからさ、かみ切ったり、網を引っ張って魚を無理やり外すから、網がものすごく破れるんです。

南島原市で行われている漁の一つが「刺し網漁」。

刺し網漁でかかった魚をイルカが食べてしまい…
刺し網漁でかかった魚をイルカが食べてしまい…

海中に張った網に魚をからめて捕るのですが、かかった魚をイルカが食べてしまい、その際、網を食い破ってしまう事があるというのです。

網を食い破って穴が空いてしまう
網を食い破って穴が空いてしまう

穴が空くたびに、漁師たちが網を直すのですが…

漁師歴約35年:
網の被害はね・・・漁に出るよりも、網の修理の方が時間が倍以上かかる。

イルカによるこうした被害は、何十年も続いているといいます。
さらに10月には、市内の漁港で、イルカが関係するとみられるある異変が起きたといいます。

死骸で海面が真っ白…イワシ大量死も

島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:
自分たちの仕事の競りをしているのがそこになるんですけども、そこの階段の下くらいには、結構(イワシが)浮いてて。
10月18日にはもう見えるところ、この岸壁沿いは真っ白になってましたね。

その時に撮影された実際の映像には、海面がほとんど見えないほどに広がった、大量のイワシの死骸が。
その数は1万匹を超えているとみられ、あたりには腐敗臭も漂っていたといいます。

海面を覆いつくすイワシの死骸
海面を覆いつくすイワシの死骸

――今までもあった?
島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:

あれだけの量が死んでるというのは、初めてでした。

漁協関係者も今までみたことがないという現象。地元漁師たちは、これもイルカが原因なのではないかと考えているといいます。

島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:
イルカがハガツオを追いかけてて、そのハガツオがイワシを食べるんで、イワシが追いかけられて港に入ってきて。港の中で酸欠を起こして死んでしまったのかなっていうふうに思っています。
タイを釣るための餌の生きエビを置いていたのが全部死んでしまったり、被害が大きかったので。

相次ぐ、イルカが原因とみられる漁業被害。漁師たちは、イルカの数自体が体感的に増えてきていると話します。

漁師歴約50年:
20年くらい前から増えだしたのと違うかな。

島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:
やっぱり温暖化だったり、海水温の関係で餌がとれなくなって、魚がいなくなってしまえば、(イルカが生息の)範囲を広げたりっていうのはするでしょうし。それでこっちの方にも来たりとか。

数の増加とともに、相次いでいる漁業被害。対策をとらないのはなぜなのでしょうか?
取材の中で見えてきたのは、表だって声を上げられない「複雑な事情」でした。

イルカは「大きな観光コンテンツ」

船の上から野生のイルカを観察する「イルカウォッチング」。
家族連れや修学旅行生、高齢者の方まで、年間2万人近くが県外から訪れるといい、重要な観光資源となっています。

11月14日、取材をした際も20人近くの観光客が乗船。滅多に見られない野生のイルカに興奮していました。

イルカウォッチングを楽しむ観光客
イルカウォッチングを楽しむ観光客

観光客:
見られた見られた、見えましたよ!

――野生のイルカを見るのは初めて?
観光客:

はい、そうです。最高によかったですね。

南島原市も「大きな観光コンテンツ」としてイルカウォッチングを推しており、行政にとってもイルカは大切な存在。
だからこそ、駆除などの対策はとれないのだそうです。

そのことは漁業関係者も十分理解しているといいます。

島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:
イルカウォッチングは南島原にとって、すごくメインになる観光業だと思いますし。野生のイルカが見られるっていうのが、あまり他のところにはないので。すごく自分も素晴らしい観光業だと思います。
ただやっぱりイルカが漁業にとって、絶対的にプラスってわけではないですし。網を破いてしまったりとか、網にかかった魚を食べてしまったりっていうのは、少なからずあるので。

野生のイルカを巡る問題、解消への道はあるのでしょうか。

島原半島南部漁業協同組合・加津佐支所長 木村大地さん:
すごく田舎な町なんですけど、観光だったり食事だったりっていうのが、本当に自慢できるようなところではあるので、うまく共存じゃないですけど、受け入れていけたらいいなと思います。
(めざまし8 11月15日放送)