25歳の宝塚劇団員が転落死した問題で、14日宝塚歌劇団は会見を実施。

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会見の中で、宝塚歌劇団の木場健之理事長は、「報告書には故人に対するいじめやハラスメントは認められなかった」と発表しました。

遺族側が主張する「長時間労働」については認めたものの、劇団や上級生のパワハラやいじめが死につながったという主張とは反する調査結果に、亡くなった女性遺族側の弁護士は会見で、「落胆と同時に、許せないという気持ちを持っています」と遺族の気持ちを代弁しました。

食い違う遺族側と歌劇団側の主張。亡くなった劇団員と上級生らとの間に、何があったのか。「めざまし8」は、かつて宝塚音楽学校に通っていた女性を取材、厳しい上下関係の実情が見えてきました。

先輩は“絶対”「厳しくするのが当たり前」

宝塚歌劇団の会見の中で、度々口にされた「伝統の継承」「伝統の中で守っていくべきもの」という言葉。

歌劇団内部の上下関係はどのようなものなのか。かつて宝塚音楽校に通っていた、内部事情にも詳しいという女性に話を聞くと…。

宝塚音楽学校出身の女性:
上下関係っていうのも(宝塚音楽)学校からの“伝統”って感じなので。厳しくするのが当たり前みたいな。それが伝統だったので、それが普通だったかなという感じです。

入学するとまず、1学年上の上級生から、“独自のルール”を徹底的に教え込まれるといいます。

宝塚音楽学校出身の女性:
本当に先輩が「カラスは白」って言ったら、白って思っちゃうくらい。結構、洗脳じゃないですけど。例えば挨拶を1人の先輩にしなかったら、次の日、朝からコンコンコンってして呼び出されて「何で挨拶しなかったの?」とか。
あとは廊下を走ったり、階段とか一段飛ばしで上がっているのを先輩に見られてしまったら、すぐ(先輩が)1年生の部屋の所に来て「何かやったよね?」みたいに言われて、それに対して謝るとか。それは基本、1学年の連帯責任なので、その子がミスしたことは全員で共有する。誰でもがその子のミスをみんなで言えるようにするとかっていうのはありました。

――ある種、先輩は神格化されている?
宝塚音楽学校出身の女性:

そうですね。絶対、絶対の人って感じで。

連帯責任のため「同期生に迷惑をかけたくない」という思いから、先輩の言うことには、絶対的に服従する雰囲気が作られていくといいます。
さらに、女性が通っていた当時は、「1年生は笑ってはいけない」というルールも。

宝塚音楽学校出身の女性:
普通に先輩が面白いこと言っていて、でも1年目の子たちって笑っちゃダメなんですよ。なので笑っちゃって、次の日に呼び出されて、4~5人くらいに呼び出されてとかはあった。2年目からはいいんですけど、1年目は笑っちゃダメなんで。(理由は)わかんないです。いまだにわからないです。
(当時は)演技につながっているのかなとか思っていました。面白い演技されても、笑っちゃダメな時は、笑っちゃダメとか。悲しくても泣いちゃダメとか、そういう訓練なのかなと思ったんですけど。

――いま考えてどう思いますか?
宝塚音楽学校出身の女性:

おかしいですよね、笑っちゃダメなのは。本当に笑ったら怒られちゃうんで。「何で笑ったの?」みたいな。入学式の前に指導していただくのが何日間かあるんですけど、4日間くらい。その時に言われますね、先輩に。

「外部漏らし厳禁」

徹底した上下関係の他にも、学校内で起きたこと、それがいい事であれ、悪い事であれ、外部に漏らす事は、強く禁じられていました。

宝塚音楽学校出身の女性:
基本は(内部のことは)何も言っちゃダメっていうのがルールなので。例えば学校のことがどこかに漏れていたとか。どこかから聞いたっていう話が来たら「誰だ?」ってなって。「何でこれが外部に漏れてるの?」っていう話になって。
朝、お掃除から始まるんですけど、お掃除前とか、お昼休みとか、授業終わって夜とかに先輩から呼び出されたりということがあるんですけど、その時に「犯人は誰だ?」とか。
それがすごいダメなことっていう教育をされるから、(外部漏らしは)ダメってなります。

外部に漏らした人がわからない場合は、連帯責任として、学年の代表者が先輩の所に
謝罪にいくことになったといいます。

会見の中でも、この「外部漏らし」があるため、劇団員たちが調査チームに正直に話していないのではないか?という質問もありましたが、歌劇団側はこれを否定しました。

この点について、宝塚音楽学校に通っていた女性は…。

――皆さん、本音で話せている部分はあるのかないのか?
宝塚音楽学校出身の女性:

(本音で話せて)ないと思います。外部に出しちゃダメっていうのがすごくあるので。「外部漏らし」じゃないですけど、中であったことは絶対言っちゃダメって。いいことも、悪いこともあまり言わないようにしているので。だから(本音で話せているかは)どうなんだろうって思います、ニュースとかを見ていても。

「異常なまでの縦の関係」指導といじめの境界線とは?

――自分が先輩になった時は、後輩にどうする?
宝塚音楽学校出身の女性:

全く同じことを、したくなくてもしなきゃダメ。怒りたくなくても怒らなきゃダメ。いくら仲いい子が下に入ってきても、その子を怒らなきゃダメとかっていうのはありました。

遺族側の弁護士は会見の中で、これを“異常なまでの縦の関係”と表現しました。
宝塚音楽学校に通っていた女性は、受け止め方によって、「パワハラ」か「指導」かの見方が変わってくるのではないかと話します。

宝塚音楽学校出身の女性:
指導の一部。そのまま(学年が)上にいったら、そう思っちゃうのかなと思います。何をされても「指導」と思っちゃうのかなと。
同期生だったらいじめって言えるけど、上級生だったら絶対言えないです、“いじめ”とは。基本は指導としてやって下さっているんですけど、上級生が本当にこの子いじめたいと思って、ドサクサに紛れていじめていたとしても、気づかないと思います。指導だと思って…。

下級生は上級生から何をされても「指導」として受け入れる土壌ができているため、仮にいじめ行為があったとしても気づかないというのです。

――先生たちは「指導」のことを知っている?
宝塚音楽学校出身の女性:

もちろん知ってます。めちゃめちゃ叫ぶんで先輩たちが。叫んで怒るから、もちろん知っているんですけど、それは伝統だから何もおかしいことではない。何も言わない。
そのバトルが繰り広げられている隣が職員室なんですけど、何も言わないです。全部聞こえていると思いますけど。

会見の中で歌劇団側は、「いじめやパワハラを目撃したことはない」と主張しましたが、女性によると、学内では先輩たちが下級生を叫びながら怒っていても、先生たちは伝統的な「指導」だとして、何ら気に留めていなかったといいます。

宝塚音楽学校出身の女性:
暴力とかではないですけど言葉のいじめとか。例えばその子がつけている香水の匂いとかがちょっと匂ってきた時に、「くっさ!」って言ったりとか、聞こえるように。そしたらその人のメンタルもどんどん傷ついてくると思うんで、学校にいけなくなったり、授業に出られなくなるとかにつながってしまうんだろうなって。

話してくれた女性自身も、上級生からの指導が嫌で、学校に通うのが嫌だった時期があるといいます。

学校へ行きたくないと思うこともあったと話す女性
学校へ行きたくないと思うこともあったと話す女性

宝塚音楽学校出身の女性:
指導だと思っていても、「もう行きたくない」と思うこととかも結構あったので。私も学校いた時に、毎日それを思っていたので。
でも、私が休んだ時にすごい同期生が怒られちゃって、上級生から。「何で休んでるの?あの子?」って。「今から来てって連絡して」とか言われて、じゃんじゃん(自分に)電話かかってたりとかしていたので同期生から。迷惑かけちゃうっていうのがあるから休めなかったですね。

今回の問題を受けて…

一方で、宝塚音楽学校をやめてからは、厳しい指導に感謝する場面も多々あったといいます。

宝塚音楽学校出身の女性:
あの伝統がなくなればいいのにと思うことはすごくあるんですけど。あれがあったから宝塚を出てから、やっぱり褒められることが多いというか、あんな厳しい世界がなかったから。
挨拶を絶対することや、上級生を立てることとか、上級生の言うことをちゃんと着実にやるとかというのが、身に染みつくので。
あれを経験して良かったってすごく思います。ただ、その子の受け取り方次第かなと思うし、先輩も言い過ぎの人も中にはいるから、それはどうなんだろうとは。亡くなった子がどれくらいだったのかは、わからないですけど。

――今回の問題を受けて、今、思うことは?
宝塚音楽学校出身の女性:

このニュースが(真相は)どっちかわからないというのもあるから。本当にいじめだったかもしれないし、指導としてやっていたのかもしれないというのがわからないから。
だからそれが、もったいないかなって。そういうイメージを持たれてしまったのが。
これだけ頑張っている子たちがいるのに。本当にちゃんと頑張っている子たちも、いじめとかしないでコツコツ努力して頑張っている子もいるのに、みんながそう思われちゃう。
「宝塚=いじめる子」とか。いまだに私もやめてからも言われるので。
「いじめたの?」とか「いじめられたの?」とか、もう100%聞かれるので、宝塚にいましたって言ったら。それくらい「宝塚=いじめ」っていうイメージが世間にもたれているんだっていうのが、すごく嫌だなって。いい子もいっぱいいるし、頑張っている子もいっぱいいるから、それがすごく嫌だなとは思いますね。
(めざまし8 11月15日放送)