今年度内にもアメリカ西海岸に営業拠点を設置する方針を明らかにしたラピダス。最先端の2ナノプロセスの半導体の国産化を目指している。早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授は、ラピダスの挑戦について、技術的なハードルは高いが、日本の半導体産業復活の最後のチャンスかもしれないとの見解を示している。

ラピダスが米国拠点を計画

次世代半導体の国産化を目指すラピダスは、今年度内にもアメリカの西海岸に営業拠点を設置する方針を明らかにした。

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国内大手8社が出資して設立されたラピダスは、2027年をめどに、次世代半導体の国産化を目指している。

アメリカ・サンフランシスコで、13日に行われた西村経産相と日米のAI=人工知能や半導体などの企業のトップらとの会談の中で、ラピダスの小池社長は、今年度内にもアメリカの西海岸に営業拠点を設置する方針を強調した。

西海岸のシリコンバレーには、グーグルやアップルなどの巨大IT企業が本社を構えていて、ラピダスは、ここに営業拠点を設けることで次世代半導体の需要を取り込み、事業拡大につなげたい考えだ。

未知数だからこその米国拠点

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
日の丸半導体企業による、アメリカ市場を攻略するための拠点づくり。長内さんは、どうご覧になりますか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ラピダスが作ろうとしている2ナノプロセスの半導体は、AIなどに用いられる最先端の半導体になります。

そのためAIやIoTなど、先端半導体の需要の多いアメリカに営業拠点を置くのは適切な判断だといえます。

堤 礼実 キャスター:
そもそもラピダスは、どんな半導体を作ろうとしているのでしょうか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
半導体のプロセスサイズという言葉がありますが、これは半導体基板に回路を描くときの線の幅のことです。2ナノプロセスとは回路の線の幅が2ナノメートルということを示します。

この数字が小さいほど高度な計算ができ、さらには消費電力も抑えられる最先端の半導体ということができます。

最新のiPhoneのチップセットが3ナノですので、それよりも高性能な半導体をラピダスはつくろうとしているわけです。

堤 礼実 キャスター:
超えなければならない技術的なハードルは、なかなか高いようですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
一番の課題は、日本ではどこの半導体メーカーも、10ナノ以下のプロセスを生産したことがないということです。全く実績がない中で、最先端プロセスへの挑戦となるため、技術的にも未知数といえそうです。

さらに半導体は装置産業ですので、大量に作って、大量に販売しないと利益が出ません。これをクリアする必要もあります。

その意味でも、大きな市場であるアメリカに営業拠点をおくことは、理にかなっているといえます。

最先端への挑戦は苦難の選択

堤 礼実 キャスター:
今回の挑戦を通して、日本の半導体産業の復活を期待したいですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
日本の半導体産業は1986年の日米半導体協定以降、没落の一途をたどってきました。今回の最先端への挑戦は、復活への「ラストチャンス」かもしれません。

現在の半導体ビジネスで負けている日本が、次の技術で勝とうと、未知の分野に挑戦する。これは苦難の選択かもしれません。    

それでも日本の半導体産業をリードしてもらうために、是非とも頑張ってもらいたいですね。

堤 礼実 キャスター:
よりニーズがある場所に拠点を置くことで、さまざまな面で効率化が図れるわけですから、期待したいですね。
(「Live News α」11月14日日放送分より)

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