最高裁判所は2023年10月、戸籍の性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要だとする特例法の規定について「違憲」と判断した。この最高裁の判断について、性別変更のために性適合手術をした「性同一性障害」の熊本県内に住む男性に話を聞いた。

性別変更のきっかけはパートナー

熊本県内在住の自営業・優さん(仮名・39)は女性として生まれた。しかし、幼い頃から自らの性に違和感を持っていて、23歳だった2008年に「性同一性障害」と診断された。

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少しでも男性に近づくため、ホルモン治療を受けながら28歳の時に乳房を切除した。優さんが性別を変えたいと強く願ったのは、パートナーの遥さん(仮名)と出会ってからだ。

2004年に特例法が施行され、性同一性障害の人が特定の要件を満たした場合、家庭裁判所の審判で性別が変更できるようになった。その要件の一つにあるのが、「生殖腺がないこと、または機能を永続的に欠く状態であること」だ。
この要件について優さんは、当時(2018年)悩んでいた。

優さん(仮名):
胸オペ(乳房切除手術)は、美容整形の部類。子宮・卵巣は臓器だからどうこうというわけではないが、臓器って病気にならないと取らないからリスクは大きい。子宮・卵巣を取らなくても、今の日本で戸籍を変えられるのであれば、自分の場合はそこまで焦って取らないかもしれない

しかし、遥さんと結婚するために当時、性適合手術が可能だった石川県の病院で子宮と卵巣を摘出した。(この病院では現在、性適合手術は受け付けていない)

優さん(仮名):
男性になったとは思ってないが、女性ではなくなったなと思う

2019年4月に性別を変更し、その3カ月後に遥さんと結婚した。

違憲判決に「もっと前だったら…」

2023年10月に最高裁は、戸籍の性別を変更するには生殖機能をなくす手術が必要だとする特例法について「違憲」と判断した。この最高裁の判断について、優さんは次のように話す。

優さん(仮名):
考えたら自分も悩んでいたし、もっと前だったらよかったなと複雑になった。しかし、もう(適合手術が)済んでるので、それを嫌だとかそういう気持ちはない。ただ自分がどうだったかは考えた。戸籍が手術をしなくても変えられる条件だったら(すぐに)変えた。金銭面に余裕が出た時に考えて、最終的には取るだろうが、すぐ取るには至らなかったと思う

さらに、「自分のことを考えると複雑だが、周囲にいる性別変更を考えている人たちにとっては歓迎すべきことだ」と話した。

優さん(仮名):
やはり悩んでる人たちからしたら一日も早く変えたい。あとは金銭問題や身体の負担に関わってくる。誰でも生きやすい社会になれば…

岸田首相「適切に対応する」

岸田首相は、最高裁が「違憲」とした判断を受け、「厳粛に受け止める必要がある。様々な意見を踏まえ、与党とも十分に相談をしながら適切に対応する」と述べている。

熊本家庭裁判所によると、特例法が施行された2004年以降、熊本県内では101人の性別変更が認められているということだ。

優さんは、「結婚以外でも就職の面接や通院など社会生活で困るため、性別変更を望む人が多い」と話している。

(テレビ熊本)

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