授業で使うため1人1台のタブレット端末を配布する学校もある中、そんな“タブレット授業”に適した鉛筆が登場した。

それが三菱鉛筆株式会社が11月14日に発売した「uni タブレット授業えんぴつ」だ。ノートに書いた文字を撮影したり、スクリーンなどに投影したりするタブレット端末を使った授業が増加した子どもたちの学習をよりサポートできる鉛筆だという。

描線の比較(提供:三菱鉛筆)
描線の比較(提供:三菱鉛筆)
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鉛筆の芯は独自配合して新たに開発し、同じ2Bの硬度でも従来品より“濃くはっきり”とした文字を書くことができるという。

そのため、撮影した際に画像内に影があってもしっかりと視認ができ、大きな影が入りやすいタブレットでの撮影にも適している。

光沢の比較(機械による筆記) 提供:三菱鉛筆
光沢の比較(機械による筆記) 提供:三菱鉛筆

さらには従来の芯よりも描線の光沢が抑えられているという。そのため黒鉛筆の芯特有の反射を抑え、明るい照明の場所でもくっきりと見ることができるのだそう。

そして反射の少ない文字はノートの端の文字までしっかりと写すことができるとし、タブレットでのカメラ撮影に慣れていない子どもでも簡単に撮影することができるとのことだ。

消しゴムでの消去性の比較(提供:三菱鉛筆)
消しゴムでの消去性の比較(提供:三菱鉛筆)

また濃く書けるのにもかかわらず、消しゴムでの消え方は従来の鉛筆と同等となる。

ブルー、ラベンダー、キャメルを基調として取りそろえたカラーバリエーション(提供:三菱鉛筆)
ブルー、ラベンダー、キャメルを基調として取りそろえたカラーバリエーション(提供:三菱鉛筆)

硬度が2Bの6角鉛筆で、ブルー、ラベンダー、キャメルを基調としたグラデーションのデザインだ。価格は4本パック308円(税込)、1ダース924円 (税込)となる。

先生や子どもに何度もインタビュー

濃くて反射を抑えることからタブレット端末には適した鉛筆だというのは分かったが、そもそもなぜ“タブレット授業のため”の鉛筆を開発したのだろうか?

三菱鉛筆の商品開発部・えんぴつ担当の中村圭佑さんに話を聞いてみた。


ーーどんなきっかけでタブレット授業でも見やすい鉛筆を開発することに?

当社のマーケティング部門においては、小学生の学習環境を把握する目的で、近隣の小学校等にご協力いただくなどして、先生たちへお話を伺うようにしています。そのなかで、漢字の書き取りや調べ物学習をした宿題ノートを、タブレットで撮影して提出する方法を取っているというお話を伺うことがありました。こういった学習環境の変化について、さらに深掘りをしていくと、タブレットを用いて撮影、共有するという行為は授業中に「協働的な学び」として多く行われることが分かりました。

実際に「協働的な学び」を行っている授業にも立ち会わせて頂く機会なども頂き、タブレットで撮影してスクリーンに映し出した文字を見たときに「もっと見やすくなれば先生も子供達も嬉しいのでは?」と思ったことがきっかけとなり、開発に至りました。

「協働的な学び」を行う授業に立ち会ったことがきっかけで開発(提供:三菱鉛筆)
「協働的な学び」を行う授業に立ち会ったことがきっかけで開発(提供:三菱鉛筆)

ーー実際、「薄くて写真撮影が難しい」などの声は寄せられていた?

前述のとおり「もっと見やすい鉛筆があればよいのではないか」と考え、さらに調査を進めるなかで、先生方の声として、児童たちがノートに書いてタブレット撮影をした文字は、文字が薄かったり、撮影が不慣れであったり、撮影者の影が写り込んでしまったりといったいくつかの要因から、文字が見づらいという意見がありました。

また、児童たちにもヒアリングを行い、スクリーンに投影されたノートの文字が見えづらいと同様の不満の声がありました。

(左)従来の鉛筆、(右)「uni タブレット授業えんぴつ」によるノート筆記(提供:三菱鉛筆)
(左)従来の鉛筆、(右)「uni タブレット授業えんぴつ」によるノート筆記(提供:三菱鉛筆)

ーー開発で苦労した点は?

まず、タブレットを用いた授業は、近年普及してきた授業形式で、実際にどのように授業を実施しているのか、どのような課題があるのかといった点が分からず、多くの先生方やお子様方に何度もインタビューを行い、試作品を用いたモニター調査等を行いました。本質的に役に立つ鉛筆をお届けするにはという点を模索する過程は苦労しました。

また、本商品は同じ2Bの硬度でも従来品よりも濃くはっきりとした文字を書くことができることが特徴ですが、この性能を出すためには新たな独自の配合で芯をつくる必要があり、配合を変えつつ、従来品と同等レベルの書き味や消去性を実現することには苦労しました。

「uni タブレット授業えんぴつ」によるノート筆記(提供:三菱鉛筆)
「uni タブレット授業えんぴつ」によるノート筆記(提供:三菱鉛筆)

ーー特にこだわったのはどんな部分?

濃くはっきりとした描線が書けるように配合を調整する中で、従来の鉛筆と比較して、書き味や消しゴムでの消去性などバランスを取りながら開発を進めた点は、こだわったポイントです。

「uni タブレット授業えんぴつ」の芯先(提供:三菱鉛筆)
「uni タブレット授業えんぴつ」の芯先(提供:三菱鉛筆)

ーーその独自配合の芯は今までとは何が異なっているの?

光沢を抑えて黒くはっきりと見える材料を新規に配合しています。従来の鉛筆は黒鉛と粘土を使用してつくっていますが、黒鉛は薄片粒子のため、粒子が並ぶことで描線が反射しテカるという特徴を持っています。本製品は新規材料を配合することで、反射面が並びにくい描線を実現し、反射を抑えています。

筆圧が安定しない子どもの日常使いにもおすすめ

ーータブレット授業以外では、どんな場面で活用できる鉛筆なの?

濃くはっきりとした見やすい描線を書くことができることが商品特徴なので、タブレット授業に限らず、筆圧が安定しないお子様の日常使い用としてもおすすめです。

「濃くはっきり書けて文字が見やすい」新たな鉛筆(提供:三菱鉛筆)
「濃くはっきり書けて文字が見やすい」新たな鉛筆(提供:三菱鉛筆)

ーー現在の反響はどう?

調査などにご協力いただいた先生方からは、このような商品ができたことについては、有難いとお言葉を頂いています。

授業中にタブレットで撮影したノート画像をスクリーンで投影する際に、児童の書く文字が見づらい場合にはタブレット上で濃さを調整したり、児童に再度撮影し直すよう指示をしたりなどで授業がその度に中断しているそうです。また、児童が折角良いことを書いていても、クラス内でその意見が上手く伝わらないことをもったいないと感じている先生方も多く、きちんと伝わることで児童にとって自信につながるそうです。

そういった観点から、本商品を子供たちが使うことで、授業の進め方がスムーズになるだけでなく、子供たちの自信につながるのではないかというお声を頂きました。

そして、お客様からは「濃くはっきり書けて文字が見やすい」「撮影時の反射が少ない」といったお声を頂いております。また、児童に限られず、イラストレーターの方等からも「鉛筆で描いた作品を撮影することが多いので使ってみたい」といったお声を頂いております。


ーーその反響に対しては、どう思っている?

タブレット授業という新たな取組みに、先生方もお子様方もご苦労される場面も多いと伺っているので、この商品がそういった不便を解決する一助となれればうれしく思いますし、ひいては、そういったことを通じて、お子様方の自信ややる気につながる機会になればと願っております。

「uni タブレット授業えんぴつ」(提供:三菱鉛筆)
「uni タブレット授業えんぴつ」(提供:三菱鉛筆)

なお、購入者の反応を見ながらにはなるが、「『子供たちの学びを機能で支える鉛筆』として形状・硬度・カラー等も今後のバリエーション展開も検討していけたらと考えています」とも話していた。

新たな学習方法に合わせて誕生した鉛筆は、学習のやる気につながるかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。