北海道内でクマの出没が急増する中、牛66頭を襲い続けたOSO18が駆除された。
しかし駆除したハンターや自治体に対し「なぜ殺したのか」「クマがかわいそう」「他に方法があったのではないか」といった苦情が数十件も殺到した。
2021年度にはヒグマの捕獲頭数が初めて1000頭を超え、過去最多となる深刻な状況が続く一方で、人命を守るための駆除に苦情が相次いでいるのが現状だ。
ヒグマ有害捕獲への理解と協力を呼びかけ

北海道庁が9月26日、X(旧ツイッター)にヒグマ有害捕獲への理解を呼びかけた投稿。
「人や農業などの被害防止のため、やむを得ず捕獲する場合があります。この捕獲は、地域の安全に欠かせないものです。捕獲への非難は、その担い手確保の支障となりかねません」
表示回数は2000万回を超える大きな反響に。背景には、捕獲に対する批判があった。
北海道民の意見は

7月に札幌市南区で母グマが駆除されたケースでは、札幌市に対し約650件の意見が寄せられた。
その中には「悪いことをしていないのになぜ殺すのか」「子グマを殺すな」「子グマを保護してほしい」と行った苦情もあった。
一方、マチで北海道民に意見を聞くと次のような声が大勢を占めた。
「捕獲して自然に戻すことができれば一番良いが、なかなか難しい」
「人を襲うので怖い。駆除に対しての助力はある程度必要」
「人間の命の方が大事。駆除しないと大変なことになる。これからどんどん被害が続出する」
「危険なクマから守ってくれる人たち(ハンターなど)に対し苦情をぶつけるのは違うと思う」
札幌市は、クマの駆除に対する批判のほとんどが道外から寄せられたものとみている。
「OSO18駆除」ハンターへのクレーム殺到

相次ぐ批判の影響は、捕獲するハンターにまで及んでいた。
「これだけ牛の被害があるような場所を実際に訪れて、生活して、実態を見てくれと言いたい。我々も面白半分にクマを撃っているわけではない」(猟友会標茶支部 後藤勲支部長)
OSO18の駆除をめぐっては、ハンターや自治体に「なぜ殺したのか?」「かわいそう」と苦情の電話が数十件あった。
地元猟友会の後藤支部長は、批判にさらされるハンターへの影響を懸念している。
「クマを獲って批判されるのであれば、ハンターをやめると。鉄砲を持つ人が減ると、これからの将来どうなるのかと」(猟友会標茶支部 後藤勲支部長)
猟友会が抱える問題

ハンターのなり手不足は深刻化している。
道警によると、2023年9月末時点で、クマの目撃件数は3103件。
これは2022年を上回り、すでに過去最多を更新している。
出没が増える一方、生活や安全を守ってくれている猟友会は、ハンターの高齢化やなり手不足という問題を抱えている。
駆除までの3つのプロセス

実際に、クマが駆除されるまでにどのような経緯があるのだろうか。
行政は、出没したクマを駆除べき問題個体と判断するまでに、3つの段階を踏んでいた。
【駆除までの3段階】
1.人間を恐れず避けない
2.農作物への被害など人間生活に影響を及ぼす
3.人身(攻撃・つきまといなど)生活への影響
問題個体と判断され駆除が許可されても、ハンターへの発砲許可は、警察が人身への影響がない場所などを判断したうえで、法律に基づいて行われている。
クマがいるからハンターが出てすぐ撃っている、という単純な話ではない。
道外から批判が相次ぐ中、関係者は口をそろえて訴える。「駆除したいから駆除しているわけではない」
理解を求める声は届くのだろうか。