地域のコンビニが“子ども食堂”に?兵庫県宝塚市のコンビニで行われているプロジェクトを取材した。
“リボン”がつなぐ“善意”とは?
兵庫県宝塚市にあるローソンでは、店を訪れた子どもたちとスタッフの間でこんなやりとりが行われていた。

子ども「使っていい?」
店員「使っていいよ、今いっぱいあるからね」
子ども「無料でいいの?」
店員「いいよ、いいよ。値段に関係なく値引きシールが貼ってあるのは全部。お弁当とレジに持ってきてもらったら」

子どもたちが支払うのは、お金ではなく“リボン”だ。
これは、ローソンで2021年から行われている“フードリボンプロジェクト”。中学生以下なら誰でも店にあるリボンを使って、無料でお弁当と交換できる。
ローソン宝塚市役所前店 オーナー・森下忠明さん:
お客さまが1枚300円でリボンを買ってくださって、購入したリボンをホワイトボードに貼る。中学3年生までのお子さんはこのリボンを持って、値引きシールが貼ってあるお弁当とかサンドイッチを一緒にレジに持っていく。リボンを使えば、お弁当やサンドイッチは無料になるという仕組みです

この日、子どもたちが選んだのは、チャーハンの上に唐揚げが乗ったカップごはん。もらったお弁当を持って「ほんまにうれしい」と喜ぶ子どもたちの姿が見られた。

店内で調理したお弁当や総菜のうち値引きされているものが対象で、フードロスの削減にもつながっている。子どもも店もうれしいこのプロジェクトを支えているのは、地域の人たちの善意だ。
リボンの購入者(尼崎市の男性):
私たいそうな人間ちゃうから。やってあげたら気持ちええやろ
リボンの購入者(宝塚市の女性):
300円で何かできれば、それに越したことはないかなと

中には、一人で5枚のリボンを購入する方もいた。
リボンの購入者(宝塚市の男性):
大人がこういうことをしていって、食べた子どもがまた引き継いでくれたら、いい社会になってくるのかなと思ってやっています
「子ども1人でも入れるコンビニこそやらないと」
このようなフードリボンプロジェクトには、飲食店など約130店舗が子ども食堂として参加している。その中で参加しているコンビニは、森下さんが経営する2店舗だけだ。
ローソン宝塚市役所前店 オーナー・森下忠明さん:
1人で飲食店に行って「ご飯を食べさせてください」って店員さんに言えるかっていうと、これは言えないなって。コンビニだったら子ども1人でも入ってこられるんですよ。だからこれは、コンビニこそやらないといかんなって。絶対やろうと強く思って始めたんです

お弁当がいっぱい詰まった袋を手に持った、一人の女性がローソンから出てきた。
みきさん(仮名)19歳:
6人分もらいました。きょうだいが6人いて、全員分のご飯をいつも頂いています
19歳のみきさんは、6人きょうだいの長女だ。週5日、アルバイトをしながら、中学生から2歳までの5人のきょうだいの世話や家事をしている。
リボンで交換できるのは、中学生以下で、一人1食までというルールだが、店はみきさんが6食分交換することを特別に認めている。

みきさん(仮名)19歳:
めっちゃ助かってます。ほんまにありがたいです。やっぱりみんな(お弁当が)ある時の方が喜んでいたり、自分も帰ってすぐに食べるものがある状態なので、ある時はありがたいです。お店の人はめっちゃ優しいです。いつも疲れている時に(コンビニに)行くことが多いんですけど、けっこう元気もらえます
フードリボンプロジェクトを通して、森下さんのお店では月に200食ほどが子どもたちに届けられている。

ローソン宝塚市役所前店 オーナー・森下忠明さん:
本気で“ご飯を食べられない”という子がいるので。涙が出そうになるような子もいるんですけど、そういう子が笑顔になってくれたらうれしいなって思いますね
地域の人たちの善意が形になったフードリボン。子どもたちの「いただきます」を支えている。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月24日放送)