新型コロナウイルスの影響で提言された「新しい生活様式」も、今やすっかり日常に溶け込み、ソーシャルディスタンスやマスク着用、手洗いはもはや当たり前となっている。

これに加えて近ごろは、飲食店やスーパー、コンビニなどの従業員や客をはじめ、デリバリーの配達員、電車やバスの乗客などでも「手袋」をしている人をよく見かけるようになった。

誰が触れたか分からない商品や釣銭、つり革など日常生活では直にさわるのをためらうものがあるのは確かだが、あの「手袋」は本当に感染予防として役立っているのだろうか?

ニュースで手袋をつけた医療関係者の姿を見ることから効果があるようにも思うのだが、一方で手袋をしていても、スーパーのレジなどで前の客も同じように対応しているのを見ると感染リスクは結局同じことのような気もする。

「新しい生活様式」では手袋に言及していないことから、やはりしなくてもいいのか? 日常生活の感染予防で手袋を使う効果はあるのか?

日本環境感染学会の専門家に話を聞いてみた。

感染対策としては不適切だと思います

――スーパーの店員や一般の人が「手袋」をしているのは感染対策になる?

感染対策としては不適切だと思います。

手袋をしていることによって、「自分の手は汚れない」という安心感があるのかもしれません。しかし、手袋にはピンホールという目に見えない小さな穴が一定の割合で開いています。このピンホールは、使用することによって多くなります。

また、長時間同じ手袋を使い続けると汚染がひどくなり、そのまま様々な物や場所を触ると「汚染を拡げる」というリスクを高めることになります。

よって、一般社会では感染対策として手袋を着用するより、適切なタイミングで手洗いや手指消毒を実施する方が有効だと思います。


――「手袋」ごと消毒するのは感染対策として有効?

「手袋のまま消毒すれば良い」と思われる方もおられると思いますが、手指消毒剤は手に擦り込むことによって効果があるものです。また、消毒剤によって手袋が劣化しやすく、破れたり穴が開いたりすることになります。


――一般の人と病院での「手袋」の使い方はどう違う?

医療者が病院で手袋を使用する場合は、患者間の交差感染を防ぐために、必ず患者ごとに交換します。また、目に見えて汚れた場合も、汚染を拡げないために交換します。

血液や排泄物などを扱った場合は、目に見える汚れがなくても、汚染している可能性があるため交換します。このように医療現場で手袋は患者ごとや処置ごとなど、こまめに交換して使用します。

また、「手袋をしているから手は汚れない」ではなく、手袋は手の汚れを少なくするために使っています。手袋にはピンホールも開いていますし、手袋を脱ぐときに汚れる可能性は高いので、正しい脱ぎ方を練習し、手が汚れないように脱ぎます。そして手袋を脱いだ後は必ず手洗いまたは手指消毒を行います。
 

「手袋」の正しい脱ぎ方とは?

出典:国立国際医療研究センター

国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染者と対応するときの感染対策を公開しており、そこで下記のような「手袋」の脱ぎ方を解説している。

1.手袋をした手で、反対の手袋の手首に近い縁の外側をつかむ
2.つかんだ手袋の内側が表になるよう、裏返しながら外す
3.手袋をした方の手で、脱いだ手袋を握る
4.手袋の縁の内側に、手袋を外した手の指を入れる
5.握っている手袋に覆いかぶせるよう、裏返しながら外す
6.手洗いまたは手指消毒をする

加えて、感染者の処置やケアをするときは、手袋を2重にし、適時交換することが紹介されている。

感染対策のためにはこの脱ぎ方をマスターしなければいけないようなのだが、一般の人がこの手順を守るのは難しいかもしれない。では何に気を付ければいいのだろうか?

「汚れるのが当たり前」という意識が大切

――「手袋」によってどんなリスクが高くなる?結局、感染予防には何に気を付ければいい?

手袋をしていても、汚れるのが手から手袋になるだけです。その都度手袋を交換することは不可能ですし、汚れた手袋で顔を触ったり、食事をすることは感染のリスクを高めることになります。

素手にウイルスや細菌が付いたとしても、皮膚から身体の中に入るわけではなく、鼻や口、目などの粘膜から身体の中に入ってきます。手を洗ったり消毒することで、感染は防ぐことができます。

手は様々な物や場所に触れるので、「汚れるのが当たり前」という意識を持ち、普段から汚れた手で顔、特に粘膜のある目や鼻や口を触らないことや、帰宅後には手洗いを行う事を習慣にすることが大切だと思います。
 

目に見えない小さな穴が手袋には開いており、手袋自体が消毒に不向きなことなどから、手袋の着用が感染予防としては適していないことが分かった。

やはり基本中の基本ではあるが、手指の消毒と手洗いが重要になる。もう一度「新しい生活様式」の内容を確認し、引き続き予防を心がけてほしい。
 

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