熊本・合志市の国立療養所菊池恵楓園で先日、4年ぶりに盆踊り大会が行われた。そして、園の隣にある合志楓の森中学校の生徒たちが作った竹あかりが納骨堂を照らし、亡くなった人たちを供養した。

“4年ぶり”の盆踊り大会…昭和30年頃にも

ここで暮らす人たちは、普段とは違うにぎわいをいつも心待ちにしていた。

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2018年8月、「菊池恵楓園納涼盆踊り大会」。園内で暮らす人たち、そして、近くに住む人たちが一緒になって、真夏の夜を大いに楽しんでいた。
この盆踊り大会は、恵楓園の夏の恒例行事で昭和30年頃の記録写真でも、大人と子どもが一緒になって踊る姿を見ることができる。

昭和30年頃の盆踊り大会の様子
昭和30年頃の盆踊り大会の様子

国によるハンセン病患者の強制隔離が進む中、人々は暮らしに彩りと活気を求めていた。

盆踊り大会は、新型コロナの影響で3年連続で中止されたが、9月29日に園の職員たちが主体となって再開した。

踊るのは「恵楓音頭」だ。かつて患者たちが作った盆踊りの歌で、亡くなった人への追悼の思いや、自分自身を励ます気持ちなどが込められている。

「いつも踊りよったもんな」 懐かしむ入所者

現在、園内で暮らすのは137人。2023年は8人が亡くなった。

国立療養所菊池恵楓園・倉富明美看護部長:
皆さんの笑顔というか、昔を思い出すような、すてきな顔をされてたのがよかったですし、一緒に踊ってくださる方もおられて、本当にしてよかったなと思いました。(外部の人に)恵楓園を知っていただく機会の一つにもなりますし、(園の)中にいる職員も、ハンセン病の歴史にふれて、実際に関わっているわけなので、今後も何らかの形で続けていければと思います

吉田安子さん:
楽しかったです。踊れてよかったです

小山田フジエさん:
よかったですよ、久しぶりに踊って。昔のことを思い出しました

ーー最初から最後まで手が動いてましたもんね

小山田フジエさん:
脚が上がったろうかと思うて

吉田安子さん:
いつも踊りよったもんな

納骨堂照らす中学生制作の竹あかり

国立療養所菊池恵楓園・境恵祐園長:
いつもは静かな恵楓園の夜なんですけれども、きょうはたくさん人が来ていただいて、少しにぎやかさがあって、とてもいい夜だと思います。新しい試みであるこの竹あかりのイベントが、皆さんの心に何か光を少し残していただくようなイベントになる、そして亡くなった方々の魂を思う、送る、そういう交流になればと思います

竹あかりに照らされた納骨堂
竹あかりに照らされた納骨堂

恵楓園の納骨堂が竹あかりで照らされた。この竹あかりは合志楓の森中学校の生徒たちが作ったものだ。

合志楓の森中学校は、2021年に開校したものの、新型コロナの影響で恵楓園の入所者と交流する機会がほとんどなかった。

学校の環境ボランティア委員会が園に対する初めてのボランティア活動として、園内の竹を使った竹あかりを提案。

「みずあかり」や「クリスマスマーケット熊本」などを企画している「ちかけん」監修のもと、昼休みや放課後に制作した。

菊池恵楓園は市民の憩いの場に…

合志楓の森中学校3年生・川上莉駈さん:
一生懸命みんなで彫った竹が、こんなにきれいに光ってうれしいです

合志楓の森中学校3年生・田上洸葵さん:
恵楓園が近くにあるので、私たちが将来大きくなっても、ハンセン病のことを正しく周りの人に伝えていけたらと思います

そして、恵楓園で亡くなった人たちを追悼する花火が上がった。園の近くに住む人たちが訪れ、花火を見つめていた。

追悼の花火を見つめる人たち
追悼の花火を見つめる人たち

地域に開かれ、市民の憩いの場となっている国立療養所菊池恵楓園。その歴史を改めて知り、未来へつなぐ、夏の終わりの1日だった。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
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