秋の行楽シーズンに入り、登山やハイキングなど山に入る機会が増えている。例年、この時期にあわせて増加するのが「毒キノコ」による食中毒だ。野生の100種類ほどに毒があることが分かっていて、専門家は「安全と確認できたキノコ以外は食べてはいけない」と注意を呼び掛ける。

自然界でのキノコの役目「リサイクル」

生態系を大きく分類すると、生産者の「植物」、消費者となる「動物」、分解・還元者となるキノコなどの「菌類」に分かれる。キノコは枯れ木や落ち葉を分解し、土へと戻す自然界のリサイクルの役割を担う。

この記事の画像(10枚)

腐らせるタイプのキノコは落ちた枝や葉、そして弱った幹を分解するため、その上に発生する。一方、共生タイプのキノコは生きた木の根に寄生し、土から発生する。

専門家と散策 数々の毒キノコ発見!

福井・越前市にある八ツ杉森林学習センター。研究歴45年のキノコ専門家、笠原英夫さんと山を散策すると、次々と毒キノコが見つかった。

1つめは、「オオワライタケ」。神経毒で、食べると顔面神経痛みたいに顔がひきつり、ひきつったような表情が笑っているように見えることから、この和名がついたという。

「オオワライタケ」の近くには、小さなキノコが土から顔を出していた。

やはり、これにも毒があるという。

笠原英夫さん:
これは毒キノコの「テングタケ」。特徴は土の下につぼと呼ばれるふくらみがある。猛毒で細胞を壊死させる毒成分を含む

さらに歩みを進めると、真っ白なキノコが生えていた。ドクツルタケの仲間で細胞組織を破壊する毒を持つ猛毒のキノコだという。

全体の半数は毒成分の有無分からず

日本では約5000種類のキノコが存在しているといわれるが、味や香りなどがよく食用に分類されているのは100種類程度。一方、毒成分が確認されているものが約100種類ある。全体の半数については毒成分の有無が分かっていない。食中毒が発生する理由は、毒性のある、もしくは不明な野生のキノコを無自覚に食べることで発生している。

福井で発生するキノコによる食中毒の9割は「ツキヨタケ」によるものだ。特徴は木との付着部分を割くと現れる“暗褐色のシミ”。以前は標高800メートル付近のブナ林に生息していたが、20年ほど前から標高と樹種を変え、生息域を拡大しているという。

ツキヨタケの木との付着部分を割いた様子
ツキヨタケの木との付着部分を割いた様子

笠原英夫さん:
シイタケ、ヒラタケと間違って食べられるケースが多い。シイタケの原木からツキヨタケも出ていたことがある。シミがあるかないかをしっかり確認して食べるといい

食用キノコも食べ過ぎには注意!

散策を続けると、ついに食べられるキノコを見つけることができた。「ナラタケ」だ。

笠原さんはナラタケについて「おいしいキノコ」とする一方、「柄の部分が固いので消化不良をおこして下痢をする人がいる。だからあまりたくさん食べないようにした方がいいと言っている」と語る。

では、ここまで沢山のキノコを見てきたが、食べられるキノコか、そうでないかはどうやって見分けたらいいのだろうか?笠原さんに聞いてみると・・・

笠原英夫さん:
毒キノコを簡単に見分ける方法は今のところありません。覚えるしかない。覚えるには、よく知っている人と同行して教えてもらうことが一番の早道です。キノコの名前をしっかり覚えたものしか口に入れない、他人にあげない、これが基本

見つけたキノコを簡単に口にしないよう改めて注意が必要だ。

(福井テレビ)

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。