日本全国でコンビニよりも数が多いと言われているのが、神社だ。それほど身近な存在でも、実際にどんな仕事を行っているのか知らない人も多いのでは。神職の仕事ぶりを覗いてみた。
神の社を守る仕事
厚見行正さん(40)は石川県金沢市の観光名所、兼六園に隣接する金澤神社の神職を務めている。この日は2023年10月1日。毎月1日に行われる「おついたち参り」のため、朝4時半に出勤した。
おついたち参りは日本各地の神社に伝わる風習だ。金澤神社ではおついたち参りに合わせてご神体をご開帳する。「直接神様を見るためというよりは、神様により近いところでお力を分けていただく、という意味を込めて御開帳しているそうです」と厚見さんは説明する。
この記事の画像(7枚)午前9時にご祈祷の受付が始まると、多くの参拝客が集まった。御開帳するのは「白蛇龍神」。
金澤神社と言えば「天神さん」こと菅原道真公を祭っていることで地元では有名だが、2柱以上の神を合わせて祭る「相殿」として、金運や災難除けの神様である白蛇竜神「白蛇さん」も祭っているのだ。
「天神さん」と「白蛇さん」
拝殿の中を見上げると、迫力ある天井画が目に飛び込んでくる。
「白蛇の姿をした竜の神様なんですけど、どちらかというと竜に近い絵です。災難除けの神様ということで、悪いものを寄せ付けないようにものすごく怖い顔をしています」と厚見さんが話す通り、鋭い眼光に牙を剥き出した白蛇さんは、いかにも厄除けにご利益がありそうだ。
天井画は約10年前に、日本画家の山田俊一さんから奉納されたものだ。
金澤神社は加賀藩との縁も深い。
「元々は前田家にとっての神棚のようなプライベートな神社だったんですね。なので一般の方はお参りができなかった神社でした」
プライベート神社にしては立派だが、流石は百万石を誇った加賀藩前田家といったところだろうか。
神職と巫女さんのお昼ごはん
神職が行う一番の仕事はご祈祷だ。この日の厚見さんは朝から休むことなく祈祷を続けた。
午後1時、ようやく昼食の時間だ。
「忙しい日は宅配のお弁当です。巫女さんも神主も同じようなお弁当を食べています。きょうは巫女さんが選んでくれたすき焼き弁当です」
厚見さんは代々神職を務める家系の長男として金沢に生まれた。大学進学で地元を離れたが、卒業後は家業を継ぐことはなく、神奈川県の高校教師となり英語を教えていた。
「一人旅が昔から好きだったので、最初に入る国と出る国だけを決めておいて、あとはその途中でどこに行くかは全く決めずに旅行するのがすごく好きで」
家業を継ごうと決心したのは、8年前の2015年。32歳の時だった。
「当時の自分にとっては神社で働くって、あまり魅力的には見えなかったんですけど、ずっと海外の世界ばかり見ていて、いざ外の世界で生活をしてみたら、今までいた自分の環境こそが世界の中ですごく稀で、守っていかなければいけない存在だなって気が付いた。逆に外に出て日本を見ることができて視点が変わったというか、神社にいつか戻ろうかなというのは思いました」
金澤神社の宮司を務める父の正充さんが、安江八幡宮の宮司も兼ねていることから、厚見さんもそれに習い安江八幡宮でも神職として働いている。神の社を掛け持ちしている重責だ。
老若男女が集まる拠り所に
午後4時。神社が閉まった後も厚見さんの仕事は続く。
「秋祭りに来ていただいた人たちへのお礼参りというか、神様へのお供え物を届けに行ってきます」
この日は、30軒の氏子を回りました。
「やっぱり実際に歩いて回ることは、自分の氏子さんたちと顔を合わせてお話しできる機会なので、良い機会だなと思いながら配っています」
安江八幡宮では26代目となる厚見さん。神社を子どもから大人まで多くの人たちが集える場所にしたいと考えている。
「昔、神社というのは近所の子どもたちが遊びに来たりとか、大人たちが井戸端会議をしたりとか、地域の人たちの拠り所だったんですよね。私が目指す神社もやっぱり地域の人が集まってくれる神社です。しかもそれにプラスして今は、海外からも多くの方が日本に来ているので、地元だけじゃなくて海外の人たちにも日本の文化に触れる場所の一つとして来ていただいて、そこでローカルな人たちと交流してもらえるハブみたいな場所にしていきたいと思っています」
(石川テレビ)