無資格で麻酔を使わず犬に帝王切開をしたなどとして動物愛護法違反(殺傷・虐待)などの罪に問われている長野県松本市の元犬販売業者の代表に対する6回目の公判が9月22日、地裁松本支部で開かれた。証人として出廷した獣医師は「無麻酔の帝王切開はありえない行為」といった趣旨の証言をした。第1回公判から傍聴を続けている動物愛護団体の理事長・杉本彩さんは「非道で残虐な虐待、可能な限り厳しい求刑をしてほしい」と訴えた。

獣医師の証人尋問

起訴状によると、百瀬耕二被告(62)は獣医師の資格を持たないのに2021年8月、松本市の自宅(当時)でフレンチブルドッグ4匹とパグ1匹を麻酔せずに帝王切開し傷つけたなどとされている。

9月22日の公判では、長野県警の依頼で当時、犬の衰弱の様子を鑑定した獣医師の証人尋問が行われた。

検察側の質問に獣医師は「帝王切開は子宮から胎児を取り出す非常に体に負担の大きい手術で強い痛みを伴います。薬剤を獣医師が注意深く扱う行為です」と証言。

施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
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「傷口は粗雑で膿が出ていた」

これまでの公判で弁護側が主張してきた鎮痛剤のドミトールの使用について問われると―。

「あくまで『鎮静薬』で、意識を喪失させる効果は全くなく手術の痛みを取り除くことはできません」と述べた。

法廷では検察側が被告が帝王切開したとされる5匹のフレンチブルドッグやパグの写真がモニターに映された。

獣医師は「非常に傷口は粗雑で膿が出ていたり感染が確認された」と答えた。

施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません
施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません

「無麻酔で帝王切開することはない」

このほか獣医師は「使われた鎮痛剤・ドミトール単独での手術は、痛みを伴い不適切であり動物虐待にあたる」という意見書を松本警察署に提出したと明らかにした。

弁護人からの質問に移り、無麻酔の帝王切開の有無を問われると「やったことはありません。当たり前です」と回答。

手術で「四肢をケージに固定しても犬は痛みを感じるか」と聞かれると、「極めて強い痛みを感じるため、暴れたり吠えたり抵抗するような動作が現れると思う」と証言した。

施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません

杉本彩さん「非道で残虐な虐待」

被告を刑事告発し、第1回公判から傍聴を続けている動物環境・福祉協会Evaの杉本彩理事長は公判後、取材に応じ、「被告が本当に愚かで残虐な虐待をしていたんだと法獣医学の専門家が証言してくれたと思います。考えただけで怒りが湧き起こってきました。本当に残虐な行為。写真を見ると5匹の犬がどんな痛みを感じてたか、恐怖を感じてたかリアルに伝わってくる。この手術がいかに非道なものであったか改めて強く感じました。可能な限り厳しい求刑をしてほしい」と述べた。

次回公判は11月30日で、その次の1月15日には求刑が予定されている。

取材に応じる動物環境・福祉協会Eva 杉本彩理事長(9月22日 松本市)
取材に応じる動物環境・福祉協会Eva 杉本彩理事長(9月22日 松本市)

(長野放送)

長野放送
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