自民党の田村憲久政調会長代行と立憲民主党の小川淳也税調会長が24日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演。配偶者に扶養されるパート主婦らが、社会保険料を負担しないよう働く時間を抑える「年収の壁」の解決策を議論した。
自民党の田村氏は「今色々な知恵を出させてもらっているところ」としたうえで、社会保険料の納付義務が生じる、年収が130万円を超えた場合(従業員100人以下の企業)でも、連続2年までは扶養にとどまれるようにする案を検討していることを明かした。
一方、立憲民主党の小川氏は「年収の壁」について、「何万円か収入が増えて壁をクリアした人には、何十万円という補助が出て、それ以下の人には出ないという圧倒的な不公平の問題がある」と指摘。そのうえで、数十年かけて「第3号被保険者」をなくしていく「漸進的な改革」を進めていくべきだと強調した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
労働力不足に関するもう一つ課題として挙げられるのが、労働力を活用できていないのではないかという意味で、パート主婦などの「年収の壁」という問題がある。この問題を少し見ていきたい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
例えば、会社員の配偶者がパートなどで働いて、年収が106万円を超えると厚生年金に加入し保険料を支払う必要が出てくる。それによって手取りの収入が減ってしまうということで、この「壁」を越えないように、労働時間などを調整している人がいると言われている。手取り106万円以上にするためには、年収を125万円以上にする必要がある。この問題について岸田首相は、企業に助成金を出すことで、年収が106万円以上になっても手取りが減らないようにする取り組みを10月にも始めたいとしている。しかし、これはあくまでも“つなぎの対策”ということで、根本的な解決のために厚生労働省でも検討が始まった。これまで106万円の壁を越えると発生する社会保険料の負担というのを、一定の収入を超えるまで一律で免許する案などが(厚労省の議論で)出された。しかし、免除終了の金額以上になると保険料を支払うことになるので、それで収入が減るということ。つまり、新たに収入の壁ができてしまうなどの課題があると指摘されている。

松山キャスター:
「年収の壁」については、政府内で今様々な案が検討されているようだが、この年収の壁にぶち当たってしまった場合に、ある意味、その保険料の軽減措置によって補填しようという考えもあるようだが、現在の議論はどういうふうに見ているのか?

田村憲久(自民党政調会長代行):
医療保険だとかは比較的やりやすい。なぜかというと、今まで払っていない「第3号被保険者」(※会社員や公務員に扶養されるパート従業員らは「第3号被保険者」と呼ばれ、収入が一定額を下回る場合、保険料負担がない)の方々、扶養されている方々が、払ってないけれども、世帯主の保険のなかで医療が受けられるから。だから、それに対して逆転しない程度の保険料を取っていくことはできる。一方、年金の方は、当然、払った保険料に見合った年金をもらうわけですから、同じ所得なのに、保険料は免除されてもらえる金額も違ってくる、なんていうこと自体が果たしてどうなのか?という議論をしっかりやらないと、軽々にはこの制度変更っていうのは難しいと思うので、その間の“つなぎ”という意味で、これは苦肉の策なのだが、(今言ったような)逆転が起こらないように、このようなことを考えたのだと思う。ただ、何年やるかわからないが、次から次へとまた最低賃金が上がってくるので、(年収の壁にぶち当たる)新たな方々が出てくるので、例えば3年でやめても、そのあと同じようなことが起こるので、根本的な問題を解決しないことには、この問題は簡単に収まらない。

橋下徹(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
ここがまさに政治の力を発揮すべきところだ。退職金の課税に関する問題も、戦後高度成長時代に一つの会社で40年しっかり働いてもらうという前提で退職金制度ができた。今回のこの「年収の壁」制度も、戦後、男性というか、一人の世帯主が働いて、その当時で言うところの女性が家庭を守ると。専業主婦で家庭を守ると。こういう家族モデルをもとに、この「年収の壁」、いろんな年金制度ができ。これいつまでたっても、専業主婦の方にこれ、年金の保険料はもらわないということを前提としていて、じゃあどう改善策を考えるか。これはどこまで行ってもおかしい話で、これからの時代は専業主婦の方にもちゃんと保険料を払ってもらう。まず、それを大原則にしなきゃいけない。そうすると、各世帯において保険料が上がるじゃないか?と言われるが、そこで僕がずっと言っているが、子育て政策の時にも言った、N分N乗方式、これをやるべきではないかと。

松山キャスター:
(N分N乗法式は)子供が多い世帯ほど減税措置を受けられるような制度。

橋下徹氏:
ただ、これは子育て政策の話だけじゃなく、世帯収入は専業主婦と、男性が働いているのだったら世帯収入は2人で分けると。ちゃんと主婦にも収入があるとみなして、そこで保険料も課していく。そうすると、この世帯、今まであの男性が税率30%なのか何%がなんかかかっていたとしても、奥さんと2人で収入を分けると税率も下がるから、世帯の負担はそんなに変わらない。実際に変わらないかどうかは、これからの制度設計だが、専業主婦にも収入は当然ある、ということをみなした上で、ちゃんと徴収するという。これからの時代はそういうふうにしていかないと。新聞報道でも見たが、専業主婦の家事労働をGDP換算すると、100兆円以上の価値があるということなので、しっかり専業主婦にも収入があることを前提に保険料をちゃんともらうっていうことをしていかなきゃいけないのではないか?

田村憲久氏:
以前も話したが、高所得者の方が有利になってしまうっていう問題点をどう解決するかというのがある。ただ、そうは言っても、やはりあの皆さん一定程度(の収入)になった時には保険料を払ってもらうっていうのはその通りで、だからこそ今、可処分所得を減らす(選択肢)っていうことは、なかなかできない。なぜかというと、まだ完全に日本は経済が戻っていないから。物価はアメリカと同じだが、アメリカはやっぱり賃金が4.8%ぐらい、5%ぐらい伸びている。一方、日本は実質賃金がマイナスという状況なので、まだそこまで「買う力」がないので、さらに可処分所得が減るということになると、せっかくデフレをなんとか乗り切ろうとしているところに、やっぱり、ちょっとマイナスになってしまうので、だから、なんとか(マイナスに)逆転しないような形で対応できないかということで、今色々な知恵を出させてもらっているところ。

小川淳也(立憲民主党税調会長):
最近、本当に橋下氏と意見がよく合うなと思っているが、やっぱりこれは「新しい壁」を作ってイタチごっこになるという問題と、何万円か収入が増えて年収の壁をクリアすると、何十万円という補助が出る、それ以下の人には出ないのに・・・、という圧倒的な不公平の問題など、非常に課題が多いと思っている。それで、橋下氏が指摘したことは筋が通っていて、例えば、第3号被保険者が700万人ぐらいいると思うが、これをいきなり1万6,000円の年金保険料を、来月、来年から支払ってと求めるのは無茶だと思う。ここで大事なのは、「漸進的な改革」というか、例えば、年間に300円、500円からお願いしたいと。月々300円、500円からお願いしたいと。これ30年、40年かけると、この問題は解決し第3号被保険者はいなくなる。それから、例えば、退職金の控除だって既得権が発生している方がたくさん世の中にいる。例えば、(退職金の)40万円の控除を年間1万円ずつ減らさせていただきたい、40年後にはこれはなくなります、というような、漸進的な改革を進めること。そういうことを全くやらずに来たのがこの失われた30年だ。あまりにも急進的な改革は非常に副作用が強い。しかし、理想をちゃんと掲げた上で、何十年かけてでも徐々に進んでいくというような政治の知恵と力量。これが非常に求められているというふうにこの問題を通しても感じている。

松山キャスター:
この「年収の壁」の問題では、106万円とは別に、100人以下の事業体で働くパートなどの従業員などでは、130万円の壁というのもある。これについては今、政府が当面、一時的な増収ということであれば、1年、2年までは扶養を外さずそのまま認めるという案をあす(9月25日)にも岸田首相が示すのではないかという見通しもあるが、これについてはどう考えるか。

田村憲久氏:
これは今、社会保険の適用拡大をしているので、106万円、週20時間というところまでに広がっていけば、この問題はなくなる。で、それまでの間、この130万っていうのは、多分30時間働いている人は、間違いなく130万円を最低賃金で超えてしまう。だから、健康保険に入れるが、問題は、30時間働いていない人は、国民健康保険だとか国民年金になっちゃう。そこをどう考えるかというので、とりあえず運用で適用しないようにと。それを130万円になって、被扶養者から外すということを適用しないように、というのを2年間ぐらいやろうかと。その間に、いろんな検討しようということで今回、あすですかね、(岸田首相が)発表されるのだというふうに思う。

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