「異議なし」。議員たちの淡々とした声が響いた。2023年9月、金沢市議会で辞職勧告決議案が可決された。近年、辞職勧告が出されても議員が辞めないという事態が相次いでいる。辞職勧告にはどんな意義があるのか。
全会一致の辞職勧告決議
辞職勧告決議には法的拘束力はなく、辞職するかどうかは議員本人の判断に委ねられる。つまり、勧告を受けた側は必ずしも議員を辞めなければならないという訳ではないのだ。では、議会がわざわざ辞職勧告を行うことに、どんな意味があるのか。

金沢市議会の喜成清恵議員は2023年3月、酒気帯び運転で書類送検されたことを受け議員辞職した。翌4月に行われた統一地方選に無所属で立候補し、再選を果たしたものの、5月には罰金30万円の略式命令を受けた。そしてこの9月の市議会に提出された辞職勧告決議案は全会一致で可決された。実は喜成議員に対する辞職勧告決議案が可決されたのは6月の議会に続いてこれが2回目だ。

辞職勧告決議案の提案理由として自民党の麦田徹議員は「在任期間中に刑事処分を受けたということで、本市議会の名誉を著しく汚した」ことを挙げた。
勧告受けても辞職せず
2回目の辞職勧告を受けた喜成議員は「他の議員の方々にも、すごくご迷惑をおかけしているということは理解しました。ただ4月に当選し、私が背負わさせていただいている方々の思いとかを、この4年間の中で実現していかなければならないと思っておりますので、引き続き金沢市議会議員として活動させていただきたい」と話し、改めて辞職しない意向を示した。

これについて金沢市議会の最大会派、自民党の福田太郎会長は「ご本人がそう考えるのは法的には何とも言えませんが、金沢市議会議員である以上、自分のやられたことをしっかり重く反省して、それを市民にしっかりと伝えるためには、一度辞職をしてけじめをつけるべきだと思っています」と辞職を促した。

議会の意思表示として
政治学が専門の拓殖大学丹羽文生教授は、辞職勧告決議を出す意味は大きく2つあると指摘する。「1つ目は、辞職勧告決議というものは住民の代表である議員で構成された議会が『この人は議員として不適格である』という意思表示をするものであり、住民からノーを突きつけられたことにもなる」。議会からの意思表示であると同時に、間接的には住民からの意思表示でもあるということだ。

「2つ目は、刑事処分を受けた議員が責任を取らないという事実を市議会が放置するということになれば、これは市議会自身の責任も問われることになるわけですよ。従って、辞職勧告決議を出すという行為は、市政に対する信頼回復のために市議会が自らを律するという自浄作用的な効果もあるわけです」。
除名処分の対象は議会内での行動
石川県内で辞職勧告決議が出された例は他にもある。例えば金沢市議会の松村理治元議員は2020年、新型コロナの療養期間中にパチンコをしていたことから辞職勧告が出された。また野々市市議会の梅野智恵子議員は不適切な行動やSNSの不適切な投稿が重なったとして3度の辞職勧告が出されたが、2023年の市議選で再選を果たした。
ところでガーシー元参議院議員が2023年3月に参議院本会議で受けたのは除名処分だった。実は地方自治法でも、議会で一定数の賛成を得ることを条件として、除名という懲罰が規定されている。しかし除名処分の対象となるのは議会内での行動に限られ、飲酒運転をした喜成議員の場合には当てはまらない。丹羽教授は「辞職勧告が出たということを市民がしっかりと知っておいて、次の選挙でどのような判断を下すかが今後の大きなポイント」と話す。
金沢市議会の議員報酬は議長で月81万円、議員は月70万円、さらにボーナスに当たる期末手当なども支払われている。
(石川テレビ)