約20年前から徐々に衰退している養蚕業。県内に約1万軒あった農家は3軒にまで減った。そんな中、茨城・日立市から最上町へ移住した夫婦が、養蚕農家でカイコの飼育を学んでいる。突如現れた後継者に農家は期待を寄せている。
年収は10分の1…衰退する養蚕業
山形・最上町でカイコを育てている下山菊夫さん(79)が養蚕農家を始めたのは50年前。当時は絹の需要が多く「もうかる」仕事だった。
この記事の画像(9枚)しかし、価格が安い海外産に押され、養蚕業は約20年前から徐々に衰退。下山さんが養蚕を始めたころ、山形県内に約1万軒あった農家は3軒にまで減り、最上町では下山さんだけになった。
下山さんは「この施設があるからこそ養蚕がやれる。やれる範囲でやっていきたい」と話す。
最盛期に1,000万円近くあった年収は現在10分の1に。経費もかかるため利益は出ないそうだが、施設を守りたいとの思いで続けている。
夫婦で移住し養蚕に挑戦
そんな中、今橋知幸さん(44)と理砂さん(36)夫妻が現れた。茨城・日立市に住んでいた2人は、2023年2月、最上町にやってきた。
今橋知幸さん:
最上町に1回踏み入れた時、大雪が降っていて、「ここに住んでみたい」と思い、住むことになった
今橋さん夫婦は、最上町で養蚕に挑戦。元々キノコ栽培をしたいと考えていたそうだが、知幸さんは「養蚕という貴重なことに携われるなら…と思って、やってみようという気持ちだけですね」と意気込みを語った。
養蚕農家・下山菊夫さん:
「養蚕なんてやっては駄目だ」と言ったんだけれど、「どうしてもやりたい」と、その熱意に打たれて。本当にそういう気持ちがあるならば、「私の知っている範囲をあなたたちに教えましょう」と
「本当に夢のよう」伝統は次の世代へ
下山さんの指導を仰ぐのは3回目。
桑の葉からカイコをはがし、繭を作る前の作業を行った。
跡継ぎになるための「修行」の日々が続く。
今橋理砂さん:
下山さんの跡を夫婦でやりたいというのは「今までいない」と聞いたので、だからこそ夫婦で養蚕をやりたい
今橋知幸さん:
下山さんはとても尊敬している方なので、そういう方にほめてもらうというか、あてにしてもらえることがうれしいですね
下山さんは「自分は想像もしていないことだったから、後継者の話は本当に夢のようだった。最上町の、山形県の模範を示してもらいたい」と期待を込めた。
最上町に唯一残る養蚕農家に現れた“救世主”。伝統産業が次の世代へと託されようとしている。
(さくらんぼテレビ)