28年前に長崎・雲仙市小浜町の雲仙温泉街に、夢だった「おもちゃ博物館」を開いた男性。しかし、2021年に大雨が降り続いた影響で土砂崩れが発生し、博物館は閉館せざるを得なくなった。再び博物館を開き、多くの人々に喜んでもらえる場所にしたい…そんな思いを取材した。

20年以上にわたり集めたおもちゃ

雲仙市小浜町の雲仙温泉街に、1995年「雲仙おもちゃ博物館」がオープンした。

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昭和30年代から40年代のブリキのおもちゃやアイドルグッズなど、当時でもなかなか手に入らない貴重な品々が並ぶ。

博物館のオーナーは大正時代から続く雲仙の老舗土産物店の3代目酒井真二さん(当時42)だ。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん(当時42):
このロボットは光が出てくる。昭和30年代のロボットで動くかどうか。最近動かしてないのでわからない

オープンから3年後、テレビ長崎はおもちゃに対する熱い思いを持つ酒井さんを追ったドキュメンタリー番組を放送した。

酒井さんは20代後半から全国をまわり、約4,000種類にも及ぶおもちゃを集め、多くの人におもちゃを見て懐かしんでもらおうと、任されていた駄菓子屋の2階を改装して「おもちゃ博物館」を開いたのだ。

当時のおもちゃブームもあいまって博物館は大盛況。妻と共に3人の娘を育てながらほぼ休みなく働き続けてきた。オープン直後、酒井さんには「海の見える場所に、もっと大きな博物館を建てたい」という夢があった。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん(当時42):
夢をもっていれば頑張りがきくというか、それはあると思う

大雨の影響で博物館は閉館に…

2023年8月。雲仙温泉街を訪ねると、今も変わらず働いている酒井さんと出会えた。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん:
一番良い時に比べれば雲仙も私が小さい時は客は多かったが、その時と比べれば落ち着いているというか、なんとか生活していけるくらいはあるのでいいかなと思う

1階の駄菓子屋には現在も懐かしのおもちゃが並んでいた。しかし博物館があった2階にあがってみると、当時の光景は広がっていない。

2021年8月、降り続いた大雨の影響で、雲仙温泉のいたるところで土砂崩れが発生。住宅が押し流され3人が命を落とした。博物館の裏山も、一部が崩落した。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん:
万が一ここが崩れ土砂に埋まると金額ももちろん、物が貴重でもう集められないと思い、おもちゃを避難させた

博物館はすぐに閉館させた。今まで集めてきた4,000種類のおもちゃは、自宅や倉庫などいくつかの場所にわけて保管している。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん:
これ(セミ凧)は珍しい。珍しい物はとりあえずゴミ袋にパッパといれた状態。いろんな物が入っている。これはポインターという(ゼンマイで動く車の)人気があるおもちゃ。(ここにあるのは)もう簡単に手に入らない、マニアの手に入ってなかなか出てこないおもちゃたち

大好きだったおもちゃを保管し続けている現状は、「多くの人に見てもらいたい」「もっと広い場所に博物館をつくりたい」というオープン直後に抱いていた思いとかけ離れている。

再び「夢を叶える」場所にしたい

しかしすべてを失ったわけではない。

雲仙おもちゃ博物館・酒井真二さん:
出来れば博物館を同じ場所で再開させたいという夢がある。みなさんが笑顔で雲仙にこういうところがあったと喜んでもらえるのが一番

酒井さんは今、博物館の再開に向けて展示方法などを考えている。
かつてのように多くの人で賑わい、大人や子どもたちの夢を叶える場所にしたい、新しい目標を掲げ、酒井さんは少しずつ歩みを進めている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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