国の特別天然記念物で、鹿児島県の奄美大島と徳之島にのみ生息するアマミノクロウサギ。2023年9月14日から、鹿児島市の平川動物公園で28年ぶりの常設展示が始まった。どんないきさつで展示されることになったのか。そして来園者に感じてほしいこととは。

28年ぶりの常設展示

平川動物公園でお披露目されたのはメスのテツコ。飼育スペースには透明なガラスにぶつからないよう黒いテープが貼られていて、時折、隙間から顔をのぞかせカメラをチラチラ。

お食事中のアマミノクロウサギ
お食事中のアマミノクロウサギ
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取材した公開初日の朝、テツコはエサの野草をおいしそうに食べていた。

2012年10月、テツコは奄美大島南部の瀬戸内町で道路に横たわっているところを保護された。交通事故で顎を骨折していて、定期的な治療が必要になり、2019年3月に平川動物公園にやってきた。

平川動物公園施設展示課の大沼美聡さんによると、テツコの骨折自体は治っているが、顎がゆがんだ状態でくっついているので、月に一度麻酔をかけて獣医師に歯をトリミングしてもらわないと生きていけないのだという。野生に戻るのは困難だ。

平川動物公園では、1980年からアマミノクロウサギ10匹の常設展示を行っていたが、1995年までに全て死んでしまった。2023年9月14日から始まった常設展示は実に28年ぶりだ。

黒い毛並みと短い耳や足が特徴のアマミノクロウサギ。ウサギの中でも原始的な形質を残しているといわれている。平川動物公園では一般的なウサギも飼育しているので「ぜひ比較してみてほしい」と大沼さんは話す。

展示通して考える“野生動物との関わり”

奄美がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産に登録され、希少な種を守る取り組みも活発になっているが、現地では交通事故で死ぬ個体が引き続き後を絶たない。

保護の必要性を説明したパネル
保護の必要性を説明したパネル

テツコの飼育スペースには、なぜアマミノクロウサギの保護が必要か説明するパネルがある。かつてハブを駆除するため奄美に持ち込まれたマングースに捕食されてしまったことや、交通事故に遭う実態などが記されている。

大沼さんはこれらの情報を通して「自分にできること、気をつけないといけないことを考えてほしい」と話す。

ウサギへの注意を呼びかける標識
ウサギへの注意を呼びかける標識

テツコにエサを与えるのは午前中で、その時間帯に見られる可能性が高いという。テツコの姿は、人間の生活と野生動物の関わりについて考える貴重な機会となりそうだ。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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