米から化粧品などの原料となる「エタノール」を作る際に捨てていた「米もろみ粕(かす)」を有効活用した、“ふんわり・しっとり”のせっけんが岩手・奥州市江刺で作られている。
廃棄物を減らし資源の循環を目指した、人にも地球にも優しいせっけん「奥州サボン」を紹介。
“ふんわり泡立ち”せっけんの原料は「お米」
奥州市江刺で作られている無添加の洗顔せっけん「奥州サボン」は、ふんわりとした泡立ち、しっとりとした使い心地のせっけんで、全国のセレクトショップなどで販売されている。

この「奥州サボン」を開発しているのは、東京に本社を置き、奥州市にラボがある「ファーメンステーション」。

ファーメンステーション 奥州ラボ・後藤真理子さん:
こちらのせっけん(奥州サボン)は、実はお米からできているんです。オーガニック米を原料にしたせっけんで保湿成分もすごいですし、洗った後のしっとり感が続くという声をもらっています
三宅絹紗アナウンサー:
すごくもちっとしていて、クリームとか保湿クリーム塗っていないのにしっとり感がすごく良いです。どうしてお米からせっけんを作ろうと思ったんですか

ファーメンステーション 奥州ラボ・及川拓郎さん:
ファーメンステーション奥州ラボでは、米を日本酒やどぶろくのように発酵させ蒸留することでエタノールを作っています。これは化粧品の原料だったり、手指の消毒などに使われる原料となっています。(米からエタノールを)作るときにカスが出る。それが「米もろみ粕」と呼んでいるが、それを使ったものがこのせっけんになります
生み出される“経済の循環”
米からエタノールを作るときにでる「米もろみ粕」。この副産物を使って奥州サボンが作られている。この原料である米にも資源を有効活用するポイントがある。
ファーメンステーション 奥州ラボ・及川拓郎さん:
未利用資源がテーマにあり、使われていない休耕田を活用しようという取り組みの中から始まったのがきっかけです
「休耕田」とは、米栽培を一時的に休止している田んぼのこと。この田んぼを利用しエタノール専用の米を栽培したいという思いと見事マッチしたのが、農事組合法人アグリ笹森の組合長・織田義信さんだ。織田さんも「この休耕田をなんとかしたい」と思っていた。

農事組合法人アグリ笹森 組合長・織田義信さん:
休耕田を復活させようと、私たちの農地でやってみようというのがきっかけです
エタノールの原料として栽培されているのは、化学肥料や農薬を使わないオーガニック米だ。

農事組合法人アグリ笹森 組合長・織田義信さん:
せっけんや化粧品ができるというのが本当なのかなという不安もあった。今後、環境保全型農業や有機農業などにも一役買えるかと思っています
奥州市の休耕田とファーメンステーションの技術がマッチし、製品だけではない経済の循環が生まれた。
使われる用途は多種多様
お米からエタノールを作るときに出る「米もろみ粕」は、せっけんのほかにも鶏の餌として利用されている。「米もろみ粕」を鶏の餌として利用しているのは、まっちゃん農園の松本崇さんだ。

まっちゃん農園・松本崇さん:
ニワトリは2023年のような暑い夏は粉っぽい餌が苦手。(米もろみ粕は)全体がしっとりしていて、匂いがすごく良い。ニワトリは匂いの良い餌が大好きなので、食いつきが良く卵もたくさん生まれています。(卵は)あっさりしているが、しっかりとした味がある感じ
三宅絹紗アナウンサー:
米もろみ粕の効果もありますか
まっちゃん農園・松本崇さん:
効果としてすごく大きいと思います
さらに、ニワトリのふんは肥料として使われている。農家民宿を営む及川久仁江さんは、この鶏ふんを使いヒマワリなどの農作物を育てている。

農家民宿まやごや・及川久仁江さん:
田畑の肥料は、まっちゃん農園の鶏ふんを使用している。その流れでヒマワリの肥料は鶏ふんだけで育てています

ヒマワリを育てるだけじゃなく、そこから、「ヒマワリ油」をつくっている。つくられた「ヒマワリ油」はケーキになったり、及川さんが営む民宿のお客さんに食べてもらったりしているそうだ。
三宅絹紗アナウンサー:
米からエタノールとせっけん、さらにヒマワリ油のような商品に生まれ変わるんですね。本当に多くの方が関わっているんですね

ファーメンステーション 奥州ラボ・後藤真理子さん:
奥州市でオーガニックの米が育てられているのは知られていないと思う。そこから奥州市内で(資源の)循環が行われていることも、たくさんの人に知ってもらいたい
ファーメンステーション 奥州ラボ・及川拓郎さん:
奥州市内で使われていない材料や原料などを使った商品を増やしていきたい
奥州市の米から始まった循環型経済。今後にも期待が高まる。
(岩手めんこいテレビ)