9月13日には福島県金山町で農作業中の90代男性が、14日には福島県檜枝岐村の山林で一人でキノコ採りをしていた茨城県の60代男性がクマに襲われる被害が発生。福島県内ではクマの目撃が相次いでいて、2023年8月末の時点で2022年一年間を大幅に上回っている。その背景には、記録的な暑さがあるという。

まさか本物が来るとは

福島県磐梯町では8月、住宅脇の倉庫にクマがガラスを破り侵入、荒らされる被害が発生した。

2023年8月 福島県磐梯町では倉庫がクマに荒らされる被害
2023年8月 福島県磐梯町では倉庫がクマに荒らされる被害
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被害に遭った男性は「朝1時過ぎに音がして来てみたら、窓が破られて。何だろうなとライト照らしたら、クマの目がギョロっという感じだった。クマの通り道だと聞いたことがあったが、まさか本物が来るとは思わなかった」と話す。

被害に遭った人「通り道だと聞いていたが、まさか本物が…」
被害に遭った人「通り道だと聞いていたが、まさか本物が…」

異例の特別警報発令

福島県内では、こうした人里近くでクマが目撃されるケースが後を絶たない。2019年は270件・2020年は328件・2021年は221件・2022年は373件と過去4年間はコロナ禍の外出自粛の影響もありばらつきがあるが、2023年は8月末の時点で453件とすでに2022年一年間に寄せられた目撃情報を大幅に上回っている。

福島県でのクマの目撃件数 2023年は8月末の時点で過去4年を上回る
福島県でのクマの目撃件数 2023年は8月末の時点で過去4年を上回る

福島県では9月1日から「ツキノワグマ出没特別警報」を発令した。この時期の発令は異例のことだ。

資料:福島県で目撃されたクマ
資料:福島県で目撃されたクマ

木の実の調査 福島県91カ所で実施

この日、福島県の担当者と鳥獣保護管理員が行っていたのは、クマのエサとなる木の実の調査。調査は県内91ヵ所で実施される。

対策にいかすため福島県と鳥獣保護管理員がクマのエサになる木の実を調査
対策にいかすため福島県と鳥獣保護管理員がクマのエサになる木の実を調査

鳥獣保護管理員の高橋久さんは、磐梯町や猪苗代町の山間部で毎年、木の実の調査を行っている。「ほとんど実をつけていない。大凶作ほどではないですけども、木によっては5個・10個という感じで豊作にはいかないですけど凶作」だと高橋さんはいう。

鳥獣保護管理員の高橋久さん「今年は凶作」
鳥獣保護管理員の高橋久さん「今年は凶作」

クマのエサの木の実は凶作

記録的な猛暑となった2023年は、雨が少なくクマのエサとなるブナやコナラが2022年の1割ほどしか実をつけていないという。このため、クマがエサを求めて人里へ向かってしまうという。

少雨でブナやコナラが2022年の1割ほどしか実をつけていない
少雨でブナやコナラが2022年の1割ほどしか実をつけていない

鳥獣保護管理員の高橋久さんは「やっぱり腹空かすと、どうしても里に出てきますよね。ここは山間ですけども、民家の台所というか小屋に入って保管しているコメを食べたり」と指摘する。

被害に遭った磐梯町の現場 エサを求め人里に近づいてしまう
被害に遭った磐梯町の現場 エサを求め人里に近づいてしまう

エサ場を数年覚えている

野生生物の生態に詳しい、福島大学の望月翔太准教授は、クマは一度エサにありつくと、数年に渡ってその場所を覚えているため、将来的な被害を防ぐためにも人間側の注意が大切だと指摘する。

福島大学の望月翔太准教授 クマは餌場を数年覚えている
福島大学の望月翔太准教授 クマは餌場を数年覚えている

「人里の方では、柿やクルミ・クリといった、すでに人が収穫しなくなった、放置された果樹がたくさんありますので、安定的なエサを求めるために、山の方からどんどん人里の方に降りてきてしまっているっていう現状がある」と望月准教授は話す。

収穫後の果樹が残された畑などは要注意
収穫後の果樹が残された畑などは要注意

福島県では、今回の調査結果をホームページに掲載するなどして、注意を呼び掛けることにしている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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