かつて津波に飲まれた地域では、「地元を忘れない」ための新たな街づくりも始まっている。福島県双葉町、震災と原発事故前は海水浴場があった町民にとってかけがえのない海を臨む場所に、2026年6月、ホテルがオープンする。
■復興を象徴するエリアに誕生
町の復興を確認してもらう上で、拠点となる双葉郡最大級のホテル「FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA」。
建設されたのは、隣には「東日本大震災・原子力災害伝承館」があり、企業の進出も進む町が「働く拠点」として整備している中野地区。さらに海側には、復興祈念公園が2026年4月の開園を待っている。
福島第一原発からは、山を隔てて約4キロ。まさに復興を象徴するエリアとなる。
■自然と記憶の再生を目指す
広い庭園は、双葉町の里山をイメージして作られているという。また、双葉町の土が使われていて、町の土で福島に自生していた植物を育てることで、自然が息を吹き返していく姿を表現していく。
双葉に久しぶりに帰って来た人にとっては、懐かしさを感じられるかもしれない。ただの景観づくりではなく、地元の絶滅危惧植物をホテルの庭で保全していく、一つのチャレンジでもあるということで、自然の営みと前に進む復興の姿が重なっているようにも感じる。
さらにライブラリーもある。「記憶をつなぐ、過去から未来への架け橋」という思いが込められていて、震災・復興に限らず、福島の風土や文化などに関する書籍、約2000冊が置かれる予定。震災の影響で、双葉図書館は使えなくなっているため、ホテルの利用者だけでなく、地域の人たちにも開放されるという。
さらにカンファレンスルームは、会議や研修・宴会など様々な目的で利用できるという。
■ホテルの役割
総支配人の練生川裕一さんは「双葉町や浜通りには、ファミリーでお越しいただけるような宿泊施設がまだ多くない。心と体を整える“リトリート”というテーマを持ったホテルを建設することにした」と話す。その言葉の通り、双葉の海が見える屋上にはスパやサウナまで兼ね備えている。
双葉郡最大級のホテル建設には、地域から寄せられていたニーズもあったという。「大規模な会議を開催できるように、400平米を超えるようなカンファレンス機能も合わせて用意しています。そんなニーズがこの地を訪れるきっかけの1つになったらいい」と練生川さんはいう。
■新たな交流拠点として
この場所は、東京電力・福島第一原発から約4キロしか離れていない。福島のいまを知る拠点・未来を考える拠点、そして住民の帰還に向けて、国費で除染などが行われる「特定帰還居住区域」も双葉町では拡大されている。帰還に向けた準備にも利用されるかもしれない。
練生川さんは「日常から少し離れて、ゆっくりと自分を見つめ直していただくような時間を大切にしていただきたい。スパやライブラリー、ビオトープやレストランなども含め、再生・再開・再訪というコンセプトを元にご用意しています。双葉町の皆様にとっても気軽に立ち寄れるような場所、笑顔が溢れる場所にしたい」と話した。
双葉に帰る人もいれば、帰らない人もいる。戻ってきた時に故郷の景色を眺めながら、再び過ごせる場所がある。町民と町を繋ぎ合わせる、そして、記憶を受け継ぐ存在になっていく。